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パリ最新情報「EVが“止まらずに”充電できる!フランス、高速道路で『走行充電』テスト開始へ」 Posted on 2025/03/26 Design Stories  

 
フランスは、電気自動車の普及に特別な力を入れている国だ。現在では首都パリだけでも、路上に約2,000カ所の充電ステーションが設置されている。だが、2025年からは、その取り組みがさらに一歩先へ進むことになる。5月から世界ではじめて、高速道路で「走行しながら充電できる」システムの路上テストが始まるのだ。

走行しながら充電ができれば、電気自動車の乗り心地は飛躍的に向上するかもしれない。フランスではそのテストが実際の高速道路でスタートするのだが、気になる仕組みはこうなっている。まず、高速道路の路面下には「送電コイル」が埋め込まれており、これが電磁波を発生させるのだという。スマートフォンの“ワイヤレス充電”と同じ原理だ。対応する電気自動車には、この電磁波を受け取り、電気に変換する「レシーバーコイル」が搭載されていて、走行しながらバッテリーを充電することができる。
 

パリ最新情報「EVが“止まらずに”充電できる!フランス、高速道路で『走行充電』テスト開始へ」

https://x.com/pascaltebibel/status/1904184246094155798?s=51
※実際の整備作業の様子。フランスの高速道路インフラ管理会社「Vinci autoroutes」公式Xより



 
さらに、同システムには電気自動車のバッテリーを小型・軽量化し、充電のための停車を不要にするという目的もある。これにより、将来的には走行距離を延ばすことや、充電時間を短縮することが可能に。もちろん、車両購入時のコスト・維持費の削減にもつながっていく。

実験の舞台となる高速道路は、パリ近郊、エソンヌ県・アンジェヴィリエ近辺にある「A10」高速道路、1.5キロの区間。「A10」はパリとボルドーを結ぶ、フランスでも屈指の主要高速道路だ。今回の送電コイルは、2024年11月から2025年3月17日にかけてA10の路面下、右車線のアスファルト約10センチ下のところに設置された。そして稼働後の路上テストでは、自家用車だけでなく、トラックや大型バスにも電気エネルギーが供給される予定。実際の交通環境下での大規模な実験により、システムの実用性が本格的に検証されることになる。
 



パリ最新情報「EVが“止まらずに”充電できる!フランス、高速道路で『走行充電』テスト開始へ」

 
2024年、EUは2040年までに温室効果ガス排出量を90%削減するという目標を採択した。 実際にフランスの人々も電気自動車に関心が高く、2024年時点での普及率は25%に達している。また、今回の実験には、高速道路の脱炭素化をすすめる目的もあるというが、最大の狙いは「トラックのEV化」だそうだ。事実、高速道路におけるCO2排出量の約45%は大型トラックによるものとされている。このシステムが実用化されれば、EVトラックの導入が加速し、CO2排出量の大幅削減にもつながるだろう。

こうした「走行充電」は、すでにドイツ、イタリア、スウェーデンなど、ヨーロッパ各国で多くの実験が行われている。しかし実際の高速道路を使用した走行テストは、世界でもはじめての試みだ。もし効果が認められれば、2030年までに5,000kmへと拡張する計画もあるという。
 

パリ最新情報「EVが“止まらずに”充電できる!フランス、高速道路で『走行充電』テスト開始へ」



 
このように、フランスでは企業・個人を問わず、大気汚染対策が大きな関心事となっている。ときに斬新で、ときに大胆な環境対策を打ち出してきたフランスだが、今回の「走行充電」もそのうちの一つ。まずは5月からの試みがどこまで実用化されるのか、実験の結果にぜひ注目したい。(コ)
 

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