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パリ最新情報「カジュアルに味わうフランスの名物、フードコンセプトがパリで広がる」 Posted on 2025/03/18 Design Stories  

 
ここ最近、パリで少しずつ増えている新しいタイプの飲食店がある。「フードコンセプト(Le food concept)」と呼ばれる、ちょっとユニークなカフェ・レストランだ。特徴は、なんといっても一つの料理にとことんこだわっていること。たとえば、マドレーヌならマドレーヌだけ。クスクスならクスクスだけ。ブリオッシュならブリオッシュだけ。と、こうしてメニューを一つに絞って、その料理をとことん追求した専門店が、パリでじわじわと増えているのだ。
 

パリ最新情報「カジュアルに味わうフランスの名物、フードコンセプトがパリで広がる」

※パリ9区にあるマドレーヌ専門のお店



 
トレンドの背景には、日本や韓国で人気のストリートグルメ文化の影響もあるそう。一方でパリでは、ストリートフードの気軽さとファストフードのスピード感、そしてレストランのクオリティが合わさったものが人気を博している。
 

パリ最新情報「カジュアルに味わうフランスの名物、フードコンセプトがパリで広がる」

※モンマルトルにあるコルドンブルーのコンセプトフード店「アモネ(Amone)」

 
フードコンセプトの火付け役は、モンマルトルにある「コルドンブルー」の専門店だった。コルドンブルーとは、薄切り肉(主にチキン)にとろけるチーズとハムを包んで揚げた、ボリューム満点のカツレツのこと。フランスでは家庭料理として親しまれているほか、肉屋のお惣菜コーナーにも並ぶ定番メニューになっている。
 

パリ最新情報「カジュアルに味わうフランスの名物、フードコンセプトがパリで広がる」

パリ最新情報「カジュアルに味わうフランスの名物、フードコンセプトがパリで広がる」



 
こちらはフランスのおばあちゃんが昔こしらえてくれたような、手作り感あふれるコルドンブルーをその場で提供している。メニューは本当にコルドンブルーのみ(味は4種類)で、サイドメニューもポテトとデザート、それぞれ1種類だけだった。イートインとテイクアウトはどちらでもOK。さらに、店のコンセプトが一目で伝わるようにデザインされていて、ミニマルなところも特徴的だった。
 

パリ最新情報「カジュアルに味わうフランスの名物、フードコンセプトがパリで広がる」



 
「選択肢は少ないけれど、一つの味に特化していて、店が小さくモダン」というスタイルは、まさに今のパリのトレンドを象徴しているかもしれない。ル・ファスト・カジュアル(Le Fast-Casual)とも呼ばれるこのジャンルは、やはりファストフードの手軽さと、伝統的なレストランの味をうまく組み合わせた新しい食のかたち。ほかにも、ラクレット専門店やピスタチオ専門店など、フードコンセプトの店をたくさん見かけるようになった。
 

パリ最新情報「カジュアルに味わうフランスの名物、フードコンセプトがパリで広がる」

※パリ8区にあるピスタチオ専門店



 
そんな中、こうした単一メニューに特化したお店を眺めていると、今のパリの人々がどんな食べ物を求めているのか、ふと見えてくる気がする。韓国料理や日本料理は、それぞれの国のソフトパワーによって、驚くほどの速さでパリの飲食シーンに溶け込んでいった。そして今、同じように広がりを見せているのが、フランスの伝統食をカジュアルにアレンジしたこれら専門店の料理だ。
 

パリ最新情報「カジュアルに味わうフランスの名物、フードコンセプトがパリで広がる」

※ピスタチオがたっぷり入ったクロワッサン

 
コルドンブルーやマドレーヌ、クロワッサン、そしてテイクアウト用のラクレットなど、フランスの人々にとって馴染み深い食べ物が、どんどんカジュアルに、どんどんアレンジされて、まったく新しい「お持ち帰り」スタイルへと変化している。しかし印象的なのは、店内でちょっとしたお喋りも楽しめるようにと、小さなテーブル席がいくつか設置されていること。お友達と手軽にフランスの伝統食を楽しみたい場合はこうしたお店を、逆にゆっくり、じっくりと料理を味わいたい時には昔ながらのビストロを。今のパリではこうして、昔ながらの味の選択肢が一段と増えた。(オ)
 

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