PANORAMA STORIES
目覚まし時計はもう不要。猫のリズムで始まるフランスの朝 Posted on 2025/02/16 ルイヤール 聖子 ライター パリ
猫と暮らし始めてから、スマートフォンのアラームより早く目が覚めるようになりました。
フランスで引き取った黒猫ウンベルトは、毎朝決まって明け方にわたしを起こしに来ます。そのやり方がまた実に巧妙で、毎日あの手この手を繰り出し、なんとしてでも飼い主を目覚めさせようとするのです。
例えば、クローゼットの中で「カサカサ」と音を立てるのもその一つ。ウンベルトは早朝になると、洋服の入ったビニール袋をわざといじって音をたてます。飼い主が反応するまで続けるので、「カサカサ」が「ビリビリ(洋服を引掻く音)」に変わることも……!
ちなみに、フランスでは日本ほどクローゼット付きの家が多くありません。ない場合は、チェストやキャビネットを購入し、厚手の布カーテンで覆うスタイルがよく取られています。わたしたちもこの方法を採用しているのですが、どうやらフランスの猫たちはこうした空間が大好きな様子。ベッドの近くにあるクローゼットに入り込み、寝たり、かくれんぼを楽しんだりするのだそうです。
※こうしたクローゼットを使う家庭は結構多いです。しかし猫飼いさん宅のカーテンはボロボロに
それでも無視を続けていると、今度はクローゼットからわたしの体をめがけて大ジャンプ。明け方の5時や6時にこれをされたら、さすがにびっくりして飛び起きてしまいます。
さらに、お腹が空いているときには、自動給餌器にセットした陶器のお皿をひっくり返して大きな音をたてることも。それでも飼い主が二度寝しようものなら、今度はトイレの砂をがむしゃらにかき散らし、あたり一面を砂だらけにしてしまいます。
※自動給餌器にセットしたお皿をわざとひっくり返されます
そんなこんなで、今ではスマートフォンのアラームよりも早く起きるようになりました。目覚めたら、まずは人間より先に猫のご飯タイム。これでウンベルトも満足だろうと思っていたのですが、彼にはまだまだ続きが残っていました。ソファでぼんやりしているわたしの膝に、喉をゴロゴロ鳴らしながらちょこんと乗ってきたのです。
重いまぶたを上下させながら、ウンベルトのほっぺたをそっと撫でます。まんざらでもない顔をして、顎を天井に向けるウンベルト。そのまま撫で続けていると、まるで「もういたずらしないよ。眠くなってきちゃった」とでも言うように、毛布の上にゴロン。きっと、一人ぼっちで起きているのが嫌で仕方がないのでしょう。
猫と暮らしているフランスの友人からは、「ボレ(雨戸)を完全に閉め切って真っ暗にすると、猫が起こしに来なくなるよ」とアドバイスをもらったこともありました。しかし、ウンベルトの体内時計はアラーム並みに正確です。結局、ゆっくり寝るのは諦めて、彼のほっぺたを撫でることが新しい朝の日課になってしまいました。
※フランスの家のボレ
猫って、あざと賢いなあ……。そう思いつつも、実はそんな朝が結構好きだったりします。毎日寝不足ではあるものの、朝日の傾き加減で季節の移り変わりを感じるようになったのは、猫と暮らし始めてからの変化かもしれません。
とくに最近は、ボレを開けるとすでに外が明るくなっています。フランスの冬の終わりを肌で感じられる、嬉しいひとときです。
飼い主が起きたあと、安心して眠りにつく黒猫ウンベルト。そして飼い主の手や腕、足のどこかにそっと手を添えて眠るのも、彼の可愛い癖です。眠いけれど、そんな瞬間で始まる朝も幸せだとしみじみ感じています。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
▷記事一覧2018年渡仏。パリのディープな情報を発信。
猫と香りとアルザスの白ワインが好き。