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パリ最新情報「名店の食器がずらり!パリで開かれた『シェフの蚤の市』」 Posted on 2025/02/11 Design Stories
蚤の市が盛んなパリで、興味深いイベントが開催された。
パリの名だたるカフェやブラッスリー、ホテルのレストランで実際に使われていた食器を、手頃な価格で販売するイベント「ラ・ヴェセル・デ・シェフ(La Vaisselle des Chefs)」だ。
※パリ5区で開催された「ラ・ヴェセル・デ・シェフ」
「ラ・ヴェセル・デ・シェフ」は、2月8日・9日の週末にパリで初めて開催された。出品したのは、名門ホテル「ル・ムーリス」や「ル・プラザ・アテネ」、そして老舗カフェ「レ・ドゥ・マゴ」や「ラデュレ」など。会場には、皿やワイングラス、カトラリー、テーブルクロスのほか、カフェテーブルや籐の椅子まで、約1万点ものレアアイテムがずらりと並び、たくさんのコレクターが集まった。
※パリの老舗カフェ「レ・ドゥ・マゴ」
2008年にリヨンで始まったこのイベントは、これまでもボルドーやアルザス地方といった美食の街で開催され、大好評だったという。パリでの開催は今年が初めてだが、今後はコート・ダジュールやリールなど、フランス各地へと広がる予定になっている。
「ラ・ヴェセル・デ・シェフ」には二つの目的がある。一つは、フランスの伝統を守りつつ、食器を再利用することでサステナビリティに貢献すること。そしてもう一つは、売上金の一部を「ケータリング・サービスの職業訓練校」へ寄付することだ。こうした職業訓練校には、料理人を志しながらも経済的に厳しい状況にある若者たちが通うことが少なくない。
※カフェ「レ・ドゥ・マゴ」からもたくさんのアイテムが
実際に足を運んでみると、食器類だけでなく、ワインクーラーや水差しなど、本当に多くのアイテムが並んでいた。値段はだいたい6ユーロ(約930円)からと手頃で、中にはカフェのテラス席で見かける“テーブル&椅子のセット”を抱えて持ち帰る人の姿もあった。
特に人だかりができていたのは、「テーブルクロス」のコーナー。パンを直接テーブルに置く文化のあるフランスでは、テーブルクロスが欠かせないアイテムなのかもしれない。同じ柄のものを1枚ではなく、2枚、3枚とまとめて購入する人が多かったのも印象的だった。
というのも、出品しているのは席数の多いカフェやレストラン。蚤の市のような雰囲気がありつつも、同じアイテムが豊富に揃っているのが「ラ・ヴェセル・デ・シェフ」の魅力なのだろうと感じた。
ただ、見ていると、ある疑問が湧いてくる。「こうしたレストランでは、どのようなタイミングで食器を入れ替えているのだろう?」ということだ。
今回のイベントに協力し、ホテル『ル・ムーリス』内のレストラン『ル・ダリ』で料理長を務めるクレマンティーヌ・ブション氏はこう語る。
「例えば、あるモデルのお皿が6枚あって、そのうち1枚が欠けてしまったら、全体を統一するためにすべてを入れ替えなければなりません。また、時にはレストランの雰囲気を一新するため、デザインそのものを変更することもあります」
さらにブション氏によれば、食器は料理の一部として非常に重要な役割を担っているという。お客が最初に目にするものだからこそ、質感や形、色にこだわって選ぶのだそう。そんな『ル・ムーリス』は今回、保管していた900枚もの食器を提供し、売上のすべてを職業訓練校に寄付している。
※配膳に使用するアンティークの棚も100ユーロで販売されていた
※カウンター席でよく見る椅子
個人や小さな団体が蚤の市に出店するのは、フランスでは昔からおなじみの風景。しかし、有名なレストランやカフェがそこに加わるとなると、また違った意味や魅力が生まれるのかもしれない。
使い込まれた食器に新しい命を吹き込みながら、未来の料理人たちを応援する――そんな温かな想いが詰まった「ラ・ヴェセル・デ・シェフ」。今回の初開催をきっかけに、この動きがさらに広がっていくことを期待したい。(ち)