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パリ最新情報「パリの未来は自分たちで決める。『16歳からの住民投票』がパリでスタート」 Posted on 2025/02/08 Design Stories
パリ市には、街をより良くするため、地元の人々が参加する「住民投票」という制度がある。テーマは毎回異なるが、目的はパリ市長の一存ではなく、市民の多数決でイエスかノーを決めること。これまでに2回実施されており、2023年4月にはレンタルキックボードの存続が、2024年2月にはSUV車の駐車料金の値上げがテーマとなった。
そして2025年からは、なんと16歳〜18歳の若者もこの住民投票に参加できるようになるという。
「民主主義の活性化には若者の参加が不可欠」と発表したパリ市。選挙とは仕組みが異なるものの、大人だけでなく、16歳から18歳のパリ市民にも参加する権利を与えたのは、大きな改革と言えるかもしれない。
さて2025年3月に行われる住民投票のテーマは、パリ市が拡大を目指している緑化計画について。投票の主旨はシンプルで、日常生活に関わる重要な施策について市民の意見を募り、その賛否を問うというもの。なお、緑化計画のどの部分について問われるかは、後日パリ市から正式に発表される予定だ。
確かに現在のパリ市では、驚くべきスピードで緑化が進んでいる。これは現パリ市長が掲げる施策「呼吸するパリ(Paris Respire)」の一環で、学校や公園、公道の周囲では植樹が次々と行われている。最近ではパリ市庁舎前に80本の木が植えられたし、復活を遂げたノートルダム大聖堂の周りにも、近い将来、緑あふれる庭園が誕生すると発表された。
ただ緑化のテーマは、キックボードや駐車料金の件よりも「賛否両論の意見が激しくない」と言われている。パリ市は、まず対立の少ないこのテーマを通じて若者の参加を促し、これまで投票率が低迷していた過去2回の住民投票を上回る結果を目指したいということだ。
では、選挙人名簿に登録されていない16〜18歳の若者たちは、どのようにして投票に参加できるのだろう? パリ市によると、2007年3月23日から2009年3月22日の間に生まれ、パリに住み、フランス国籍またはEU国籍を持っていれば誰でも投票が可能。また投票は、パリ全20区に設置された218の投票所で行われる。
こうして多少の制限はあるものの、フランスの若者たちは、これまでもデモなどを通じてその強い意志を示してきた。今回の投票も、自分たちの声を市政に届ける新たな機会となるのではないだろうか。
一方で、現地の人々からはさまざまな意見が聞かれた。中には「若者の意見は大切だが、それよりも経済や生活に関する差し迫った問題を優先すべきでは?」といった率直な意見や、「結局、投票に行くのはごく一部の若者だけなのでは?」といった冷静な見方も。
「若者の参加は良いことだ」と肯定的な意見が続くなかで、行政と市民の温度差を指摘する声も依然として多かった。
とはいえパリの若者には一つの特徴がある。環境問題への関心が高いことだ。これはパリだけでなくヨーロッパの若者に共通していることかもしれないが、進む都市部の温暖化現象に、強い懸念を示す若者は決して少なくない。
3月の住民投票に向けて、どれほどの若者が参加するかはまだ分からない。しかし今回は、16歳から18歳の等身大の声がしっかりと反映されることを願いたい。(大)