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パリ最新情報「2月2日はクレープの日!クレープの本場、フランスではどう食べる?」 Posted on 2025/02/01 Design Stories
フランスでは、毎年2月2日にクレープを焼いて食べる習慣がある。この時期になると、スーパーにはクレープの特設コーナーが登場し、いろいろな場所でクレープ祭りが開かれる。普段はクレープを置いていないパン屋でも一番目立つところにクレープが並ぶことがあり、思わず手に取らずにはいられない。
こうして街中がクレープムード一色に……というのは少し大袈裟かもしれないが、フランスの人々がクレープをこよなく愛しているのは疑いようのない事実だ。
※「シャンドラー(Chandeleur)」と呼ばれるクレープの日
では、なぜ2月2日なのだろう? この日はフランスで「シャンドラー(Chandeleur)」と呼ばれるキリスト教の祝祭日。昔、クリスマスから40日後の2月2日、母マリアが幼いイエスを神殿に連れて行き、お清めの儀式を受けたとされる。その際、人々はロウソクを灯し、一晩中見守っていたという。
5世紀になると、当時の教皇ゲラシウス1世がこの伝統を受け継ぎ、2月2日にロウソクを持って街を行進する「シャンドラー」を考案した。そして、行進を終えた農民たちは、前年に余った小麦粉でクレープを焼いていたそうだ。
金色で丸いクレープは、光や太陽、そして希望の象徴。寒く暗い冬の終わりを告げ、春の訪れを感じさせる。そんなクレープをロウソクの灯りのもとで味わうのが、シャンドラーの習わしとなった。
※パン屋でもクレープが期間限定で登場!
とはいえ、現在のフランスではシャンドラーはキリスト教の行事というより、家族や友人とクレープを楽しく焼いて食べる日。クレープが嫌いだという人を見かけることがないほど、フランス人にとって身近な存在になっている。しかし、その食べ方が驚くほどシンプルであることはご存じだろうか。
※デパートの食品館に設けられたクレープコーナー
写真を見ると、フランスのクレープコーナーには「パット・ア・タルティネ(pâtes à tartiner、塗るもの)」と呼ばれる小瓶がたくさん置かれているのが分かる。中にはチョコクリームやマロンクリーム、フルーツ・スプレッドなどが入っているのだが、フランスの人々はその中からたった一つだけを選んでクレープに塗る。
※チョコレートソース「ヌテラ」を塗ったパン屋のクレープ
フランスのクレープはこのように、いたってシンプルだ。華やかなデコレーションはせず、ジャムやチョコレートソースをさっと塗るか、砂糖をふりかけるだけ。中でも砂糖のクレープは、フランス人からもっとも愛される定番のフレーバーになっている。
しかし味は一種類でも、クレープ自体にはこだわりがあるという。理想の色は黄金色で、ほどよい厚みと、もちもちとした食感が特徴。日本の薄くてしなやかなクレープとは異なり、しっかりとした噛みごたえがフランス流のクレープなのだ。
※シャンドラーの日、フランスのマルシェではクレープを無料で配ることも!味はヌテラ、砂糖、フランボワーズジャムの3つから選ぶことができた(写真は2024年のもの)
さらに、クレープは毎年のように「フランス人が好きなデザートNo.1」に選ばれている。手軽に作れて経済的でもあるクレープは、単なるスイーツではなく、もはやフランスの暮らしに根付いた文化そのものと言えるかもしれない。
日本の「お雑煮」のように、地域色が豊かなところも面白い。たとえば、北フランスでは生地にビールを加えることがあるし、一方ではラム酒を入れる地域もある。クレープの本場ブルターニュ地方では、食べる直前に塩バターをひとつまみ加えるのが伝統的なスタイルだという。
※クレームブリュレでおなじみの、カラメリゼをクレープに加える人も
※シナモンシュガーのアイデアもある
もちろんフランス流のクレープは、ひとり一枚では終わらない。二枚、三枚とおかわりするのが当たり前で、とくにシャンドラーの日には、「昼からクレープを何十枚も焼く!」という家庭もある。まずはハムやチーズをのせた“しょっぱい”クレープを楽しみ、食後には甘いクレープをデザートに。こうして、一日中クレープを満喫するのがフランス流「シャンドラー」なのだった。(セ)