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パリ最新情報「パリのメトロに新駅オープン!ますます便利になる『グラン・パリ』をレポート」 Posted on 2025/01/20 Design Stories
1月18日、パリの北部と南部をつなぐメトロ14番線に、新しい駅がオープンした。パリの地下鉄駅といえば古いイメージがあるが、郊外周辺では「グラン・パリ計画」と呼ばれる都市開発が進められており、現地の人々から大きな注目を集めている。
※開業したばかりのメトロ14番線、ヴィルジュイフ=ギュスターヴ=ルシ駅
メトロ14番線は、パリでもっとも新しい路線で、北部のサン・ドニ・プレイエル駅と南郊外のオルリー空港駅を結ぶ、無人運転の地下鉄だ。もともとはパリ中心部の7駅だけを走っていたこの路線も、長い年月をかけて少しずつ延長されてきた。
とくに近年は、オリンピック開催に向けて新駅が次々とオープンし、現在では21の駅を持つまでに成長している。その14番線でいちばん新しい駅が、先日開業したヴィルジュイフ=ギュスターヴ=ルシ駅だ。
※自然光を取り入れたデザインは、現在のパリの駅でも最新のもの
14番線が整備されたことで、北部にある「クリニャンクールの蚤の市」や、フランス国内線およびヨーロッパ線の乗り入れに必要なオルリー空港へのアクセスが、ぐっと便利になった。無人運転なので、ストライキの影響を受けることもない。
ではなぜ、今のタイミングで新しい駅が誕生しているのだろうか。
簡潔に言えば、これはパリの拡張を目指す「グラン・パリ計画」に基づいている。この計画では、全20区で構成されているパリが郊外まで広がり、現在の約8倍の面積が「グラン・パリ」と呼ばれる新しい首都圏になるという。
目的は、これまでパリに一極集中していたパワーバランスを分散させ、より強く、調和のとれた首都圏を作ること。さらに、パリの人口集中を避けることで、将来の温暖化や公害問題の解消にもつながるとされている。
※既存のパリメトロ「パストゥール駅」の例
※今回新しくオープンしたヴィルジュイフ=ギュスターヴ=ルシ駅の外観。新旧でかなり雰囲気が異なるパリの駅
そんなグラン・パリ計画の中でも、もっとも注目されているのが新交通網「グラン・パリ・エクスプレス」だ。グラン・パリ・エクスプレスでは、これまでパリ圏内だけを走っていたメトロが郊外のいたるところに延長される(一部はまったく新しい路線)。
メトロ14番線もその一つであるが、無人運転に加え、バリアフリーが完備されていること、車椅子やベビーカーが楽々通れる改札が新しく設置されていることがとても印象的だった。日本では当たり前のように見られる光景も、今までのパリでは本当に少なく、リニューアルが急務だったのだ。
※ピカピカに明るい新駅
※改札口が広くスムーズになり、ストレスが軽減された!
このたび新しくオープンしたヴィルジュイフ=ギュスターヴ=ルシ駅は、地元住民からも好評だそうだ。メトロに乗るためには長いエスカレーターを3度も乗り継ぐ必要があるものの、「通勤や通学、通院がとても便利になった」と多くの乗客から喜ばれている。もちろん、パリ市民や観光客がオルリー空港を利用する際にも、アクセスが格段に便利になった。
※深さは地下37m、大江戸線の新宿駅とほぼ同じ
※空港へ直結するメトロだけに、USBコンセントが完備されている14番線
新しくなったのは駅だけではないようだ。グラン・パリ・エクスプレスの沿線では、駅周辺の開発も合わせて進められている。
たとえば、今回開業したヴィルジュイフ=ギュスターヴ=ルシ駅の駅前では、新しいマンションやショッピングセンターの建設が進められており、緑地帯の整備も急ピッチで進行している。同じく、パリ五輪の選手村があった北郊外のサン=ドニ地域では、エコ都市を意識したリノベーション工事が早くもスタートした。これらの開発は、パリ郊外を活性化させる新たな街づくりの一環だという。
こうした郊外に、中心部のような「パリらしさ」はない。しかし、パリ中心部ではさまざまな規制により新たな開発が難しい一方で、郊外は住みやすさや交通の利便性が際立っている。2026年夏にはパリ南部を横断するメトロ15番線も開通する予定なので、郊外の利便性はさらに向上し、人々の動きも一層活発になるだろう。
将来的に約720万人が暮らすとされるグラン・パリ計画。歴史的なパリの風景とは異なるが、ここには現代のパリ市民が求める「最新設備」がたくさん詰まっている。(チ)