JINSEI STORIES
フランスごはん日記「空港で飛行機に搭乗する直前に胃にかきこんだ熱々オニオングラタンスープ」 Posted on 2024/12/19 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、仕事でフランスを離れることになり、空港へと向かった。
三四郎はドッグトレーナーのジュリアさんが預かってくれる。そこだと、いつもの仲間たちがいるので、彼も寂しくないのだ。
なんやかんや、と年末まで、忙しい父ちゃんなのだった。
ということで、三四郎をジュリアのところに預けてから、その足で、空港へ。
クリスマス前だからか、それほど混雑はしていない。
何も食べずに出たので、お腹がすいた。
空港にあるレストラン(ビストロかな)に飛び込んで、メニューを眺めると、オニオングラタンスープがあった。
食欲がないとはいえないが、メイン料理をがっつりと食べるわけにもいかないので、ちょうどいい。
チーズとパンと玉ねぎがたっぷりと入っている。
見た目はヘビーだけれど、玉ねぎとスープだけ飲んでもいいし、足りなければ味の染みたバゲットを齧ってもいい。
まさに「食べるスープの王様」、オニオングラタンスープなのである。
オニオングラタンスープといえば、フランスを代表する汁物で、18世紀(一説には17世紀)頃に、爆発的な人気を博した、(もちろん、現在までずっとな)スープである。
玉ねぎを炒めて、それも、じっくりゆっくりと炒め、カラメリゼし、白ワインをいっぱいくわえて、煮込みんだもので、店にもよるけれど、バゲットとたっぷりのグリュイエールチーズで蓋をされているような感じ(写真、参照)。
ぼくがフランスで暮らしだした頃(行き来しはじめた頃)、だいたい、ユーロが登場した時期だったが、西暦2000年直後くらいだったかな、その頃、カフェ・ドゥ・マゴとか、カフェ・フロールとかに行くと、白い壺のようなものにパイ生地でドーム状の蓋をされたものが、出てきた。
その、パイの蓋をたたき割ると、中にオニオンスープがびっしりと入っていた。
その迫力だるや、まるで、王冠のようであった。
スプーンで、そのパイ生地ドームをたたき割り、それを中のスープに浸すと、まもなく、スープになじんでお麩のようにふやけるのだ、それを食べるのだけれど、美味い!
実に、美味いのである。
フランスでも、もともとは早朝から働く労働者さんとか、マルシェの人たちとが、市場を出す前の寒い時に、これを飲んで身体を温めていたのだとか・・・。
実際、冬のマルシェで、このスープを飲んでいる人を見かけたことがある。ドラム缶に火をくべ、鍋をかけて、ぐつぐつ・・・。最近は見なくなった。
その後、貴族のあいだにもこのスープが広まった。ようは、フランスの王様や庶民みんなに愛されたスープだった、ということがわかる。今も!!!
冬の寒い時期には欠かせない汁物である。
※買ったばかりのヨージ・ヤマモトさんのコート、はじめて着たのに、すでに、油絵具が数か所についていた。でも、まぁ、いい色だから、このままにしておくか。あはは。
今回は、日本ではなく、周辺国への仕事旅なので、シャルルドゴール空港ではなく、南部にあるオルリー空港を利用。
結構、使いやすい空港で、便利である。
中には、フードコートしかないが、コントロール入る前なら、レストランもある。
しかし、混んでいないのに、荷物検査を通過するのには時間がかかる。
しかも、機内に入るのに、1時間ほどかかった。(みんな荷物を預けないので、逆に、座るまでが大変なのである。パリを経由される近隣国へおでかけの皆さん、ご注意ください)
少しのあいだ、仕事をこなしながら、友人や知人にあって、心と身体をやすめてから、ノルマンディに戻ることにしたい。
冬は寒いね。風邪などひかないように!
※ これ、なんだかわかる? これは、消火器が入っているケース。美観を損なわないための工夫なのだ。こういうところがおしゃれですね。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
どこへ向かうかは、クイズじゃないですが、食べ物とか、壁に書かれた文字とか、空気感とかで、あててみてほしい。欧州圏内の旅なのだけれど、美しい町です。お楽しみに!