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パリ最新情報「『発祥の地』ル・ボンマルシェからお届け。キュートでパリらしいX’masウィンドウ」 Posted on 2024/12/16 Design Stories
パリの冬。しっとりとした雰囲気の中で、ひときわ目を引く光景がある。老舗デパート、ル・ボンマルシェのクリスマスディスプレイだ。華やかなウィンドウの向こうに広がるのは、誰もが引き込まれる物語の世界。今年もまた、可愛らしい舞台が訪れる人々の心をあたためている。
パリ名物であるデパートのクリスマスディスプレイは、1909年、このル・ボンマルシェから始まった。初登場で主役を務めたのは、「機械仕掛けのクマさん」や「北極のエスキモー」。ミニチュア劇場のようなディスプレイが大きな話題を呼ぶと、その後、他の店舗にも次々と広がっていった。 以来パリのデパートは、毎年独自のテーマを設定し、それに沿ったイメージでクリスマスディスプレイを作り上げている。
「オーナメント工場」や「ジンジャークッキー」など、たくさんのテーマを披露してきたル・ボンマルシェ。今年2024年のテーマは、ズバリ「パリのクリスマス」だ。
夜空に輝く星のもと、エッフェル塔やパリのアパルトマン、煙突、噴水などが色とりどりの生き物たちによって命を吹き込まれるという、詩的で可愛らしいデザインになっている。
※パリを見守るようにそびえ立つエッフェル塔。その足元ではグリーンのうさぎがかくれんぼ
たとえば、コンコルド広場にインスピレーションを得たという噴水では、ぬいぐるみのタコやロブスターが水中バレエを披露。ユーモアと愛らしさにあふれるこの演出には、子どもたちも目を輝かせ、夢中になって見入っていた。そして彼らの横には、カメラを構えた笑顔の親たちが。
「もしかしたら、この中の誰かが、かつて同じ場所で、子どもの頃に同じディスプレイを眺めていたのかもしれない」。そんな想像が自然と湧いてくるようなひとときに、こちらの口元も思わず緩んでしまった。
※街灯は1900年代のものをイメージ。フラミンゴが「暖を取る場所」としてデザインされた
長い歴史を持つル・ボン・マルシェのクリスマスディスプレイには、単なる装飾を超えた、特別なものがある。パリジャンたちにとって、それは忘れられない小さな思い出なのだろう。
実はそんな思い出を提供する、プロの作り手たちがいるそうだ。彼らは約30年にわたって、ル・ボンマルシェのクリスマスディスプレイを作り続けているのだという。
イメージディレクターを務めるフレデリック・ボデネスさんは、ウィンドウのデザインについてこう語っている。
「毎年加えるのは、優しさ、詩的なもの、そしてユーモアです。ウィンドウディスプレイは、子ども向けと大人向けの二重の物語を提供しなければなりません。たまにやりすぎてしまうこともありますが、もっとも評価の厳しいお客さまである、子どもたちの表情を見届けるまでが私たちの仕事です」
11月8日からスタートしたクリスマスディスプレイも、こうして多くの人々に見守られながら、気づけば一ヵ月以上が過ぎていた。街はますますクリスマスムードに染まり、来週からはフランス全土で本格的なクリスマス休暇が始まる。
一方でル・ボンマルシェは今、一年でいちばん賑わう季節を迎えている。実際に訪れてみると、ファッション館も隣接する食品館も、クリスマスの準備に訪れる人々であふれ、華やかな雰囲気に包まれていた。
※ル・ボン・マルシェのクリスマスケーキもパリをイメージ
2024年はパリオリンピックやノートルダム大聖堂の再開など、パリという街が例年以上に注目を集めた一年だった。ル・ボン・マルシェのテーマ「パリのクリスマス」も、そんな特別な一年にちなんだものなのかもしれない。
さらにエディット・ピアフの曲が流れるBGMの演出も相まって、辺りはしっとりとした雰囲気に。今年もまた、ル・ボンマルシェは誰かにとって忘れられない思い出を刻んだに違いない。(ち)