JINSEI STORIES

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」 Posted on 2024/11/29 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、長い人生には、めんどくさいことをどうしてもやらないとならないとならない、日、というものがある。
フランス人はそういう時に必ず、「セラヴィ(それが人生だ)」と言って、さらっと長そうとする。なかなか流れないこともあるが、がんばっている。
まず、三四郎を散歩に連れていき、ピッピとポッポをさせ、友だちのユズ(豆しば)とちょこっと遊ばせ、昼は行きつけのイタリアンで、この時期(12月)から出始める「プンタレッラ」を食べ、それから、車にのって、日本大使館に行き、昨日撮影したロバート秋山さんのヘアスタイルを真似た写真を係官さんに手渡し、そのあと、歯医者に行った。
要は、パスポートが切れるので、新しい10年ものを申請し、そのあと、そろそろダメになるかな、と思っていた銀歯の交換に行ったのだが、そしたら、
「あ、辻さん、これよりももっとやばいのがある」
とレミー先生に指摘されてしまう。
「銀歯なんかほっといてもいいけれど、この上の歯はほっとくと顔が大変なことになりますよ」
というのだ。
確かに、その歯は、ちょっとぐらぐらしていたので、気になっていた。
「えええ、なんですか?」
「レントゲン撮りましょう」
ということで、結果をどきどきしながら待っていると、
「歯根破折(しこんはせつ)でした」
と先生が戻って来るなり、大きな声で、大々的に、言うのだった。
「歯根破折? なんですか、それ」
レントゲンの写真を見せてもらうと、
歯の根っこが、真っ二つに裂けているじゃああーりませんか、しかも、中が黒い。
「根っこが見事に二つに割れているんですよ。で、中が黒いのは、膿んでいるからで、すぐに手術になります。最終的にインプラント」
「えええ、インプラント?」
「ブリッジという手もありますが、どうされます?」
「ブリッジはちょっと、時代遅れだから。インプラントですかね」
ちょうど、保険に入ったばかりだったので、それに、歯は大事だからね、人前に出ることもあるし・・・。芸能人は歯が命、あはは。☜なんでやねん。

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」



フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」



ということで、長いこと控室で待ったというのに、5分で、今日は終了となった。
次のランデブーで、手術なのだ、そうだ。
歯を全部取って、掃除をし、糸で縫い、骨が再生されるのを数か月待ち、そこにインプラントをぶち込む、という算段だそうで、それも、骨が出来てから、インプラントやるのに、4か月くらいかかるのだそうだ。マジですか・・・長期戦じゃないか。
「ノルマンディなんですよね。来年は」
「じゃあ、その時期にピンポイントで帰ってきてください。歯は、大事です。顔がこんなに腫れちゃうから、やらないとダメです」
びっくりするくらい腫れた顔のジェスチャーをしてみせるレミー先生であった。そんな~、自撮りできなくなるじゃーん。えへへ。
でも、およよ。
前回もレミー先生のところで、15年くらい前に、インプラントをやった。
今度で、2本目になる。
今まで失った歯がその一本だけだったので、なんか、力が抜けてしまった。寄る年波には勝てない、ということか。きっと、老化で、破砕したのであろう。
いやだね、年寄りは・・・。
あー、やだやだ。頑張っても、骨が裂けるんだから、がんばりようがない。
そのためにインプラントがあるんだから、しょうがないか。
「すみません。でも、辻さん、それがベストかな、と」
レミー先生のインプラントは
15年経っているのに、問題が起きたことは一度もない。
インプラントの技術もきっと進歩していることだろうし、こうやって、早く発見できてよかったのかもしれない。
早期発見というやつだ。
でも、とほほ。

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」

※ フランスの歯医者さん、治療中にくちゅくちゅをする水の台がない。どうするのか、は、次回、説明いたします。なかなか、これも慣れるのに時間がかかりました。

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」

※ 衝撃で落ち込む筆者の自撮り。あはは。



昨日まで、日本にいて、すき焼きだ、軽井沢だ、銀座のヤマハホールでライブだ、と騒いでいたのに、今日は、いきなり歯根破折と診断され、インプラント確定人間になってしまった、哀れな父ちゃんなのであーる・ぬーぼー。
インプラント、高いからねー、でも、しょうがないか・・・。
生きているあいだだけしか、かっこつけることもできないしなー。
ということで、こういう日も人生にはあるのです。
みなさん、長い人生ですから、思わぬこともおきます。
先週、受けた人間ドックの結果も気になって来た、父ちゃんでありました。
でも、あはは。
つづく。

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」

今日も読んでくれてありがとうございます。
それでも人生は続く、とフランス人はいいことを言います。それでも生きている限り、人生は進むのです。何が待ち受けているのか、わかりませんが、治すべき場所は治し、改めるべきことは改め、さらに素晴らしい人生を謳歌していきたいと思います。明日は、前進の日、としましょう。えいえいおー。
久しぶりに、一緒に叫びますか? いいですね、じゃあ、せーの、
「熱血~」

フランスごはん日記「人生には嫌でもどうしても通過しないとならないことがある。やっちゃおう、そういう時には!」

次のツジビル・ラジオ生放送は12月5日、パリからになります。父ちゃんが優しく楽しく寄り添うおしゃべりをおとどけいたします。人生のあいまに、頬を緩めてくださいまし。詳しくは下のTSUJIVILLEのバナーをクリックしてみてくださいねー。

TSUJI VILLE
自分流×帝京大学