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パリ最新情報「ノートルダム大聖堂、入場無料を継続へ! 仏文化大臣の『有料案』を覆して] Posted on 2024/11/16 Design Stories
2019年の火災事故から5年8か月という長い歳月を経て、パリのノートルダム大聖堂は12月7日にいよいよ落成式を迎える。現在では内部の微調整が行われているといい、落成式に向けた準備も万端だという。
しかし去る10月には、フランスのラシダ・ダティ文化大臣による「入場料5ユーロ」の案をめぐって、国内で激しい議論が巻き起こっていた。
ダティ文化大臣は、「パリのノートルダム大聖堂を有料化することで、年間7,500万ユーロ(約123億円)の収益が見込める」と主張。その資金を、フランス各地にある何千もの教会の“修繕費用”として再分配するとした。
ところがノートルダム大聖堂を管轄するパリ教区は、これに断固として反対。「わたしたちは、信条や経済的な余裕の有無にかかわらず、すべての人を無条件で迎えなければならない」としながら、「訪れる人々から徴収するという方法ではなく、ほかの方法を模索することができる」と強調した。
最終的には、ローラン・ウルリッヒ・パリ大司教によって「入場料は無料のまま」と発表されたが、この決定には「すべての人に開かれたノートルダムであってほしい」という、寄付者の願いも大きく反映された。※再建への寄付金は国内外から約8億ユーロ(約1,200億円)以上が集まった。
ただし、火災前とは異なり、再開後のノートルダム大聖堂では“予約システム”が新しく導入されることになっている。予約は大聖堂の公式ホームページ上で、12月初旬から開始される予定だ(訪問日の数日前から予約可能)。
今後、予約なしの場合はかなりの待ち時間が予想されるため、ノートルダム大聖堂を訪問する際にはオンライン予約を強くおすすめしたい。
2019年の火災事故にはじまり、パンデミックやパリ五輪を経て、非常に濃密な5年間を過ごしてきたノートルダム大聖堂。
しかし、最後の1年では尖塔に十字架や風見鶏、シンボルである鐘が次々と戻り、そのたびに大きなニュースとしてフランス国内外に伝えられた。
11月8日朝には鐘の試験運転も行われ、2019年4月の火災以来はじめて、その音色がパリの街に響きわたった。
大聖堂は長らく“鉄の骨組み”に囲まれていたが、雨の日も風の日も、どんなときも人々のあたたかな眼差しに見守られていたと思う。
13世紀の完成から約800年、これほど愛され、守られてきた建築物もノートルダム大聖堂が唯一だ。今回の復活を通して、大聖堂と人々との絆がより深まったのではないだろうか。
※パリ五輪の陸上競技で使用された「勝利の鐘」もノートルダム大聖堂に設置された
https://x.com/europe1/status/1854617111793987615?s=12
そんなノートルダム大聖堂では、3週間後の12月7日に大規模な再開セレモニーが予定されている。セレモニーはマクロン大統領をはじめ、関係者や招待客のみで開かれるというが、一般公開は翌8日から年間を通して行われる予定だ。
ダティ文化大臣の提案により、一時は「ノートルダム大聖堂もついに有料化か?」と思われた今回の議論。しかし入場無料が維持されたことで、これまで以上に多くの人々に喜びをもたらした。
最後に、パリ大司教のローラン・ウルリッヒ氏のコメントをここでご紹介したい。「今後、年間1,500万人と予想される観光客を、この丸天井の下に迎え入れたい。彼らを寛大に迎え入れ、そこで見られる美しさを一緒に分かち合いたいのです」(オ)