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絶対に食べて欲しい! 春を感じる4つのフレッシュ・シェーブルチーズ Posted on 2017/03/29 久田 早苗 チーズ熟成士 パリ

やっと、巷に春がやって来ました!
緑は膨らみ、花が咲き始め、いつもの見慣れた景色が色づいて来ましたね。
今月はどのフロマージュ(チーズ)を取り上げましょう?

春は全てのチーズの季節と言っても大袈裟ではないのです。
 

絶対に食べて欲しい! 春を感じる4つのフレッシュ・シェーブルチーズ

大地に緑の草が生えてくると動物達がそれを食べるから、そして、それはお乳の源になるから、餌が乾草から生の草に代わるから・・・

あ〜〜、今年もチーズの始まりなんだって、毎年3月になるとワクワクと想いを巡らすのです。
特に仕込んで直ぐ食べられる山羊乳の小さなチーズ達は、私の心をウキウキさせてくれます。
南の方から徐々に製造が始まり、店頭にもそろそろ今年初製造のシェーブル(山羊チーズ)が届いています!
 

絶対に食べて欲しい! 春を感じる4つのフレッシュ・シェーブルチーズ

山羊さんは秋に子供を作り、春にかわいい赤ちゃんを1匹から2匹、誕生させます。

子山羊は特にかわいいです。身体がクニャっとしていて柔らかく、これは子猫に通じるところがありますね。
子供が生まれてすぐのミルクは濃厚で、いろんな要素を含んでいます。
でも、それはやはり、子山羊さんに譲ってあげましょう。
お母さんから濃厚な栄養をもらって健康に育ってくれるように。
そして翌年はお母さんになって良い子を産んで、良いミルクを出して貰いましょう。
 

絶対に食べて欲しい! 春を感じる4つのフレッシュ・シェーブルチーズ

自然はそういう仕組みになっていて、横取りのミルクで作ったものは細菌が邪魔して良いチーズが作れないのです。

必要なものを子山羊に与えた後、チーズ作りが始まります。
日本ではなかなかシェーブル(山羊チーズ)の美味しさが伝わらないのですが、パリのお客様は大好きで、好みの熟成度で購入されます。
 

絶対に食べて欲しい! 春を感じる4つのフレッシュ・シェーブルチーズ

日本人のあるチーズ製造家が、一生に一種類のチーズしか選べないとしたら、自分は山羊のフレッシュを選ぶだろう、と言っていました。

山羊のフレッシュはチーズとしてはまだまだ未熟。
でも、育ち上がっていないため、組織がミルクに近い味、すなわち甘くて、程よい酸味を醸しているのです。
シーズン開幕だから、皆さんにもぜひフレッシュの爽やかな美味しさを味わって欲しいです。

今、私がお勧めするのは、ややクリーミィーなロカマドールペラルドン、しっとり感のあるポワトウセルシェールセルといった山羊のフロマージュです。
 



<チーズ 豆知識>

シェーブルと呼ばれるものは山羊乳を使って一般的にラクティック(酸凝固)製法で作られる比較的小さな形状のチーズを指します。
山羊のミルクを使ってもプレジュール(凝乳酵素)製法で作られるチーズは別の呼び方で区別されています。
 

絶対に食べて欲しい! 春を感じる4つのフレッシュ・シェーブルチーズ

ロカマドール Rocamadour
ミディ・ピレネー産
平たい円形の35g程の一番小さなチーズ。
製造後1週間がお勧め。柔らかくクリーミィーです。

ペラルドン Pélardon
ラングドック産
南フランスの逞しい土地で育った山羊のミルクから作られる。
微かなハーブの香りがします。60g程の平たい円形。
作りたては、酸味を感じる爽やかさ、熟してくるに従いクリーミィーに。そして、個性のでてくるチーズです。

シャビシュー・デュ・ポワトゥ Chabichou du Poitou
ポワトゥー・シャラント産
この地方唯一のAOPです。棒栓形 高さ6cm 150g 程度の形状。
ネットリとした濃厚な味が楽しめます。

セル・シュール・シェール Selles Sur Cher
ロワール産
シェーブルチーズの中で一番初めにAOPになった皆さんがよく食べているチーズです。灰まぶしの穏やかな風味、柔らかくも硬くもなるチーズで熟成によってさまざまな味が楽しめます。直径9cm 高さ3cm 150g程の形状。
 

絶対に食べて欲しい! 春を感じる4つのフレッシュ・シェーブルチーズ

 



Posted by 久田 早苗

久田 早苗

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Sanae Hisada
チーズ熟成士 株式会社 久田 取締役 副社長。1985年、東京立川市にチーズ専門小売店「チーズ王国」1号店を開店。2004年にはパリ16区に「Fromagerie HISADA」、2010年にはパリ1区に熟成チーズの販売とチーズカフェを併設したSalon du Fromage HISADAをオープンする。2008年、日本人で初めてのチーズ熟成士最高位の称号「Maitre Fromager」を受勲。2013年にはフランス共和国農事功労賞シュヴァリエ勲位、2015 年にはフランス共和国農事功労賞オフィシエ勲位を綬章。