PANORAMA STORIES
黒猫との出会いは保護施設。フランスで猫と暮らすしあわせ Posted on 2024/11/05 ルイヤール 聖子 ライター パリ
フランスで黒猫と暮らし始めて、半年が経ちました。
わたしは日本でも猫と一緒に育ったため、大の猫好き人間です。ただ、ペットショップなどで購入した経験は一度もありません。
捨て猫、もしくは迷い猫とずっと一緒に暮らしていましたので、フランスでも猫を飼うときは、絶対に保護施設から引き取ろうと考えていました。
フランスの保護施設では、猫を迎え入れるための審査がとても厳しかったのを覚えています。猫を飼った経験の有無はもちろん、「現在の家の間取り」や、「その子は何歳で亡くなったか?」「猫と一緒にいられる時間は毎日どれくらいか?」などと聞かれました。
ここまでは日本でも同じだと思うのですが、フランスの保護施設がとくに厳しいのは、「脱走防止への取り組み」と、「バカンス時の預け先」に関してです。
※黒猫ウンベルトとの出会いは保護施設でした
保護施設で一目惚れし、その場でなついてくれた黒猫ちゃんを迎え入れたいと、わたしたち夫婦は対策を十分に考え、メールでも電話でも必死に説明しました。
しかし、保護施設の方はなかなか首を縦に振りません。自宅訪問まで行われたものの、即答とはならず、2カ月近くも「尋問」のようなやり取りが続いてしまいました。
※後から聞いたところによると、地域で猫の脱走が多いため“疑心暗鬼”になっていたとのことです。
ところがフランス人の夫は、ここで「抗議」のメールを入れることに。
「ここまで対策して、顔も合わせたのになぜ信用してもらえないのか。誠実ではない飼い主が存在するのは知っています。しかし、ウンベルト(猫)が脱走して悲しいのはあなた方ではなく私たちの方です」
内容はこのように、ダイレクトなものでした。納得いかないことに対して声をあげるのは非常にフランスらしいですし、「声をあげること」で事態が動くのも、とてもフランスらしいと思いました。
※こうしてウンベルトがやってきました
一度声をあげたからといって、気まずくならないのもまたフランスらしいと思います。
保護施設の方とはその後もやり取りを続け、定期的にウンベルトの近況をお伝えしています。
とくにウンベルトは小さいころの感染症が原因で、片目に支障が残ってしまい、一生病院に通い続けなくてはなりません。ですがありがたいことに、通院費用と病院までの送り迎え(車)は、保護施設側が譲渡後もすべて負担してくれるとのことです。
※フランスの猫用ウェットフード。チキンやビーフ、七面鳥の味と、味のラインナップにもフランスらしさを感じます。しかし日本に比べると、お魚のバリエーションは少なめです
そんなフランスの保護施設では、定年退職後のマダムたちが活躍している模様。
彼女たちは日本の猫事情にも興味津々で、招き猫や猫をモチーフにした日本の絵本が大好きと言っていました。
また、「日本では、猫の鍵しっぽは“幸運を引っかける”という言い伝えがある」と話したこともあります。これには猫好きのフランス人も「最高!」と大喜びでした。
※猫がパソコンの前で寝るのはフランスも日本も同じ?!
現在のウンベルトは病院に通いながらですが、よく食べよく寝て、元気に家のなかを走りまわっています。
もとは野良猫出身で、おなかを空かせてウロウロしていたところを、近所の庭で保護されたという黒猫ウンベルト。彼には「これからは空腹も、寒さもさみしさも感じなくて大丈夫。一生ここでぬくぬくしていてね」と話しかけています。
フランスでは今年から、ペットショップでの犬猫販売が法律で禁止されました。そのため、ワンちゃんや猫ちゃんの引き取り先は保護施設か、ブリーダーさんがメインです。
わたしたちも地域から不幸な猫ちゃんがいなくなるよう、できるだけ保護施設に協力したいと思っています。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
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猫と香りとアルザスの白ワインが好き。