JINSEI STORIES

フランスごはん日記「何も作る気力がしない日はフランス惣菜ですませるパリジャンなぼくちん」 Posted on 2024/10/25 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、とある人に、辻さんの行動は日記で筒抜けですね、と言われた。
何気ない、打ち合わせの席でのやり取りの中のひとことだったが、そうか、バレバレなのか、と思った。
マネージャーが、打ち合わせのあと、「日記なのでしょうがないけれど、あまり全部を書かない方がいいでしょう」とやんわり言った。
行動がバレバレなので、悪意のある人にそこをつつかれるかもしれないので、気を付けてください、とのことだった。
ま、そうだな、と思ったが、日記だものな~、と悩んだ。
長谷っちにも、先生がいろいろとその通りに書いちゃうから、弁明をしないとならない場合もあるんです。
「そんなことある?」
「先日、締め切りを過ぎてます、と原稿の催促があり、先生は今、ほんの少し調子が悪く、申し訳ありません、と返したら、その担当者さんから、先生は昨日、野本さんとがんがん飲んでましたよね、という返事が来たんですよ。野本さんと、事務所で酒盛り! と、書かれてました。あの、先生、ぼくら、どうしたらいいですかね」
どひゃあ、そんなこともあったかなァ~。
「すまんすまん。で、なんて、返事したの?」
「先生の日記は、わざと一日、二日、ずらしている場合があります。じゃないと、こういう問題が起きるじゃないすか、と戻しておきました。自分の日常行動をそのまま発信するバカはいませんよね」
「あはは。そうだよねー」
スタッフ、一同、心配しているようなので、気を付けよう。落ち込んだ父ちゃん作家であった。やれやれ・・・。

フランスごはん日記「何も作る気力がしない日はフランス惣菜ですませるパリジャンなぼくちん」



ともかく、叱られたので、やる気が出なくなり、笑、行きつけのお惣菜屋さんに行き、パテとか、レンズ豆のサラダとか、ハムのパイ包みとか、お菓子とか、パンとか、買い漁った。
フランスのお惣菜屋さんって、当たり外れがあるが、父ちゃんは美味しいところを知っているので、そこまで歩き、2,3日分の総菜を買い込んだのだった。
それを抱えて、アトリエに行き、キャンバスに向かった。
絵を描きながら、ハムのパイ包みを齧った。
やれやれ、今日は筆も進まない。
冷蔵庫からビールを取り出し、エッフェル塔を見上げながら、飲んだ。
日記エッセイの場合、さすがに小説のようにでたらめを書くことも難しいのだ。
東京で仕事をしているのに、パリにいるようなことは、なかなか書けない。目撃者も出てくるし・・・。
厳密にいえば、できないわけじゃないが、高等テクニックを要する。
ぼくみたいな初老の作家でも、待ち伏せにあうこともあるので、もう長いこと、サイン会など、危険が生じる可能性のあるイベントはやってない。たぶん、20年くらい、サイン会、やってないよね?
一度、日本で、グラスを叩きつけられ、指が切れたことがあった。警察には通報をしたのだけれど、そういうこともあるので、みんな、用心している。
長谷っちが言うように、一日、ずらして日記にするという手はある。
コロナに罹った時も、(オランピア劇場ライブのひと月前だったが)、みなさんを心配させてはいけないと思い、ごまかした。あはは、ごめんなさい。
でも、コロナに罹りました、頑張るよ、とはライブ前にさすがに、言えないよね?
日記を書くのは、難しい、のだ。実は・・・。
修行みたいな感じで、毎日、書いている。ふふふ。
絵のことも、どういう絵を描いているか、あまり具体的に言わない方がいいですよ、とフランスの画廊の人にくぎを刺された。ま、そうだろうね。

フランスごはん日記「何も作る気力がしない日はフランス惣菜ですませるパリジャンなぼくちん」

フランスごはん日記「何も作る気力がしない日はフランス惣菜ですませるパリジャンなぼくちん」

フランスごはん日記「何も作る気力がしない日はフランス惣菜ですませるパリジャンなぼくちん」



ま、ふてくされてもしょうがない。
心配ご無用なのだ。
なぜなら、ぼくは日記文学の専門家だから。笑。
文学じゃないでしょうが、日記ブログというのかな、のスペシャリスト。
NG項目が多ければ多いほど、燃えるタイプなのであーる。あはは。
この日記は、時間軸通りに書く必要もない。
ぼくというパリに住んでいる変なおやじを通して、この世界の多様性を描く、日記文学ブログなのだから、・・・。
どういう方法であろうとも、ぼくの日常のある側面を書くことは可能なのである。
ハムのパイ包みを齧りながら、それをビールで胃に流しこみ、再び、絵に向かった。
実はここのところ、ちょっと、絵がスランプというか、やや停滞している。
人生というのは、時給制じゃない。
人生というのは、年俸制でもない。
人生というものは、生涯制なのだ。
ぼくは、そういう仕事をしていきたい。
だから、スランプの時こそ、まさに、チャンス到来、次へ向かうための、稼ぎ時!!!
真実がこの日記には眠っています。
熱血は、つづく。

フランスごはん日記「何も作る気力がしない日はフランス惣菜ですませるパリジャンなぼくちん」



今日も読んでくれてありがとうございます。
ぼくは、ぼくという職業を持っています。なので、この日記は、ぼくという変なおじさん表現者の歴史的な解明本になるというわけです。ええと、100年後とかにまだ世界があったらですが、日本のHITONARI TSUJIは2024年の10月25日に、ハムのパイ包みをパリで齧りながら、日記文学について書く語りき、とかね・・・。え? あはは。
ということで、25日、今日の日本時間22時から、一時間、生放送ラジオをやります。サブスクですね。ご視聴ご希望の皆さま、下のTSUJIVILLEのバナーをクリックしてみてください。めるしー。

TSUJI VILLE
自分流×帝京大学