JINSEI STORIES

フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」 Posted on 2024/10/07 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ぼくの仲間たちが、誕生日のお祝いに、美味しいごはんをご馳走してくれたのだった。
連れていかれたのは、七区にある、日本人シェフ、中谷氏の、レストラン「NAKATANI」であった。
数ある星付きレストランの中にあって、地味ながら、確かな手ごたえと熟練のうまさを教えてもらえる、小さなレストラン。
彼のあだ名が「トト」さん、なのである。
物静かで弁えた奥さんと、かわいいお子さんがいる。
だから、トト、さん。お父さんなのである。
中谷シェフは、二つ星の有名な女性シェフ、エレーヌ・ダローズさんのもとで働き、独立をした。
その系統を感じるが、もっとシンプルで、しかし、奥行きがある。
このうるさい、おやじの父ちゃんが、
「すいません。偉そうなこと言って、あなた、天才です」
と頭を下げるほど、美味しかった。
ただ、デリーシャス、という感じじゃなない。
目立たないおいしさなのである。
努力が、きちんと料理の中ににじんでいる。
ぼくは、口が悪いから、はっきりとまずいものはまずいと言う人間だが、食べたあと、恐れ入りました、と思わず言ってしまった。
気取ったものじゃないが、彼が着実にパリで、掴んだ実力が、肉や魚に出ている。
一つ星だけれど、高いだけの三ツ星に行くくらいなら、ここが最高である。
ぼくだって、年に、2,3回しか、それでも高いからいけないけれど、4席だけのカウンターがあり、左端のカウンターで、いつも、一人で、中谷氏を揶揄いながら、食べている。
でも、軽口をたたいた後、ぼくはノックアウトされてしまう。

フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」



フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」

※ 手長エビのなんだか、だけれど、理解を超えていた。

フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」



フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」

※ これは何か、とか、説明をしても、なかなか分かってもらえないと思うのだが、これは、つぶ貝である。これが、つぶ貝か、と思うが、ぼくが食べたこれまでのつぶ貝の概念を根底から覆された。

フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」

※ こちら、鮟鱇!!!

フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」

そして、トトさんは、馬肉のステーキを作ってくださったが、彼はつねに生産者と直接話し合い、最上のものを提供してくださるのだ。あまりに柔らかく、そして、肉感、はんぱなかった。その対極の味わいを醸しだす、力業が凄いね。あまり、褒めたくないが、しょうがない。事実なので。悔しい。

フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」

※ デザートはいらない、と言ったら、昔、日本で食べたカプリコのような、めっちゃ軽い苺のチョコレートが出てきた。極上のカプリコやんか!!!



フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
個展期間中だから、そして、誕生日あとなので、自炊が出来ず、皆さんに、ご馳走になっています。今日は至福の時間を頂きました。食いしん坊で、よかったです。明日から、ダイエット、やりますね。11月のライブに向かって・・・。謎。

フランスごはん日記「パリのミシュラン星付きレストランでは、ここが好き。無口なこの男の仕事ぶり!」

自分流×帝京大学