JINSEI STORIES
フランスごはん日記「あのね、65歳になったよ。誕生日、おめでとう、自分。ありがと、一人で生きる飯!」 Posted on 2024/10/04 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ハッピバースデイ・トゥーミ~♪
ついに、65歳になった。
もう、高齢者決定である。四捨五入すると70歳なのだ。
友だちの女医さん、目黒の深野先生に、人間ドック知らないか、相談をした。
「ええええ、辻さん、65歳なんですか? ひゃあ」
と驚かれた。そうなのよー、あちし、気が付いたら、高齢者になっていたの。
あはは。
しかも、今のところ、犬と暮らす独身男で、未来が、寂しいのよー。
ということで、いろいろな仕事を、減らしている。残り時間が少ないので、やらないとならない創作に集中するために、ボルドーワイン大使は終わったし、ダンチューの連載も終えて、音楽興行世界からも引退をし、映画製作もとりやめ、パリ事務所も年内で移転をし、規模を小さくしようと計画中・・・。
父ちゃんは、田舎に工房を構え、隠居生活に入ろうかな、と・・・。
熱血はどうした、と自分を鼓舞しているが、まあ、これ以上、あくせくしても、しょうがないしね。
時々、ラジオツジビル向けの月三回の生放送とか年1,2回のイベントやりながら、あとは、田舎で、絵を描き、長編小説に向かう、日々に突入かな、と思っている。
個展が今日からスタートするので、ここに、かけている。笑。
ダメでも、身の丈にあった生き方を選択し、ま、攻め続けるけれど、無理はしない、人間関係も選んで減らし、作った作品は世界各地の画廊に送って、農地を耕し、種をまいて、半自給自足生活をしつつ、本当に美味しいごはんを食べて、愛犬と戯れ、ノルマンディの砂浜で、想像の翼を広げて、過ごすのが、目下の夢である。
いつも、笑顔を大切に!
昨夜は、焼きうどんにした。いろいろな具を入れて、冷凍うどんの焼きうどん、だが、日本で買った天かすが、効いた!!! うまい。最高であーる・ぱちーの。
早く、白髪が増えて、ロマンスグレーにならないか、わくわくしているのだけれど、まだ、髪の毛は、黒々としていて、染めてもない。黒ぶちのまる眼鏡をかけて、藤田嗣治先生のような感じになって、レオナルド辻、を名乗り、カフェで、油を売りつづけたい。
視力が落ちてきたが、まだ、メガネを必要とはしない。文庫は読みにくいが、まだ、メガネ無しで、読めるので、それは助かる。
あちこち、ぼろは出ているが、味覚、聴覚、視覚、ともに、問題はない。頭は、飲みすぎると、記憶が薄れるけれど、認知症の感じはない。
でも、スタッフさんが、
「先生、頼みますから、次回の帰国時、人間ドックに入ってください。脳ドックもお願いします」
と言われる。
そういう心配をしてくださるスタッフさんがいるのは、ありがたい。
父ちゃん、と言ってきたが、そろそろ、じいちゃん、に変更手続きをしないとならないかな、と思っているが、何歳から、人は、自分をじじいと思うのか、である。
見た目からだと、まだ、ぼくの場合、父ちゃんで、しばらくいけそうだ。
65歳だが、とくに、誕生日会というものは用意されていない。
4日も、誕生日だが、朝、画廊に顔出したら、午後から、ノルマンディとブルターニュに行き、不動産屋に頼んでいたアトリエを視察しないとならない。
何も、誕生日じゃなくてもいいんだけれど、そういう予定を入れないと、とくに、祝ってくれる人もいないので、スケジュールを入れてしまった。
あはは。そういう65歳のおやじである。
死ぬときは、何を食べたいですか、とよく聞かれる。ぼくは「握り飯」と決めている。できれば、塩握りがいいね。
でも、65歳なのに、この程度のステーキはペロッと食べてしまう。65歳の一人飯。最高である。ぼくは、昔から、「世界で一番セクシーなおじいさんになりたい」と公言してきた。あはは。あほか?
でも、普段は、寡黙な創作者なのだ。
残りの時間がどれくらいあるか、わからないが、生きている間に、3000枚の絵と、大長編小説を10作品程度、残したい。生きていることを、創作にささげる。それが、今日の、ぼくの皆さんにお伝えしたい、65歳の男の「決意」である。
実は、鍋やスープ好き。
息子に愛されているから、それでいい。
愛犬と生きることがこんなに素晴らしいことだということを教えてもらえた。
犬と生きる、とは、自分と向き合うということなのだ。
犬を育てながら自分を知る。
子供を育てながら己を知る。
犬は、友だち、家族、そして、人生の道しるべ、なのである。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
さて、個展がスタートしました。新しいドラマが生まれています。次の日記を、お愉しみに。それから、5日、日本時間の22時から、生放送のラジオでーす。下のTSUJIVILLEのバナーをクリックしてみてくださいね。めるしー。