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自分流塾「だれの人生だよ、おれの人生じゃん」 Posted on 2024/09/16 辻 仁成 作家 パリ
生きていると、実際、いろいろと言われるものです。
しかも、長く生きれば生きるほど、言われることが増えてきますね。
なんにも悪いことをしていないのに、生きているだけで老害みたいに言われることもあって、踏んだり蹴ったり、な扱いを受けることもあります。
ぼくの、少し若い友人たちが、人生の円熟期に入り、下からは突き上げられるは、上からはもっとなんとかしろ、と圧力がかかってくるのだそうで、しょっちゅう、悩みを持ちかけられます。
かなり、大変なのだそうで、
「だれの人生だよ、おれの人生じゃん」
と一言、メッセージをおくったら、
「ああ、ヒットしました」
と返事が届きました。
みなさんはご存じですね、ぼくがずっと言い続けている言葉です。母から受け継いだ言葉でもあります。
そこなんです。
この与えられた一生は、まちがいなく、あなた自身、ぼく自身のものです。
何を遠慮する、我慢する、気を遣う、必要がありますか?
人として、まちがいをおかさなければ、自分の思う通りに生きればいいんです。
でも、世の中というのは、それを許しません、がんがん、責任を押し付けてくる。
そこで、自分の人生なのに、思い通りにならないじゃないか、と落ち込む。
いいや、そうじゃない。そんなに難しいことではありません。
いい方法があるんですよ。
まわりを変えようとしても、そうはいかないのが世の常というものだから、逆に、簡単なのは、自分をちょっと変えること。自分の生きる基軸を動かす。
ぼくの古い歌に、
「自分が変われば世界が変わる」
という歌詞があります。
周りを変えようとしても、相手にも、自分勝手があるわけで、そうはいきません。
だったら、いいよ、自分が変わるのです。
自分の生き方、考え方、接し方、世界との向き合い方をちょっと変化させることからはじめてみる。
ま、今までより、気を使わない生き方にするだけでも、楽になります。
いい人でいようとか、思うことが逆に、自分を苦しくさせますからね、別に、嫌な人と思われてもいいじゃないですか、それで、自由になる方がだんぜん、よろしい。
このような変なおじさんのぼくも、若い頃は「みんなに愛されたい」と思って生きていました。
ジェントルランドというECHOES時代の曲のサビのフレーズは、
「愛されたいと願っている、ぼくらは歯車にもまれて」
でした。笑。
愛されたかったんだなァ、と思うと、自分の歴史を垣間見るようで、つい、微笑みが浮かんでしまいます。
辻はいいやつだな、と言われたかったのでしょうね。
今は、敵ばかりです。
やな奴と思っている人が周囲にたくさんいます。
やな奴だけれど、付き合ってくれる人も多いですよ。
逆にはっきりとものをいい、好きなことをして生きているぼくだからこそ、若い人たちが、どうやったら、辻さんみたいに楽しそうに生きられるのか、と訊いてきます。
若いといっても、45歳とか、55歳ですけれどね、笑。
だから、まず、言います。
「だれの人生だよ、おれの人生じゃん」
って、・・・。
あはは。
堅苦しいことは抜きにしましょう。
周囲を気にするのもやめちゃいましょう。
なんなら、無理して笑顔をこしらえなくてもいいです。
何より、それ以上、無理をすることも、我慢をすることも、やめましょうよ。
あなたの人生なんだから、もう、いいでしょう、苦しむ必要はありません。
ひとつ、アドバイスというか、その、なんでもいいから、のめり込めるものというか、生き甲斐というか、持ったらいいですよね。
人間って、好きなことには、全勢力を傾けられるものです。
それがあるとないでは、ちょっと違ってくる。
自分のペースで出来る何かを、持つと、笑顔がもっと生まれます。
自分を変えるための、何か、を見つけて、自分を変える。ほら、簡単でしょ?
きっと、その時、あれほど嫌だった世界がちょっと変化をしているはずですから。
posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。