某月某日、まだ、体調は戻らない。
なのに、パリでの初個展まで、あと三週間となった。
小直しやったり、同時に、来年の日本での個展の絵なんかも描いており、狭い部屋なのに、マジで、足の踏み場がない状態なのである。
炎症のせいかな、眩暈がして、イーゼルに足があたってしまい、そのイーゼルが倒れて、画布を手で押さえようとしたのだけれど、別の絵に足が躓いてしまい、もうすっかり、おじいさんみたいになって、その勢いで、立てかけてあった乾燥中の絵まで巻き込んで、そこら中にある絵が全部、倒れてしまった～、おおおおお、なんてこったい！
「うわ～」
大変なことになった。
日記のアップが遅れたのは、渾身作が２作も、部分的に絵の具が剥がれてしまった、ために、修復に時間をとられてしまったのだった。
しかも、腕が痛いので、泣きそうになった。
神様はおらん、と真剣に思った父ちゃんだったが、修復している間、前よりも、よくなるように頑張ったので、今は、死にかけておーる・ばっく。
ま、元通りにはならなかったが、いちど、ここまでにして、寝ることにした。
とにかく、事を急いじゃだめだ、と自分に言い聞かせて、油絵具で汚れた服は、洗濯機に放り込んで、ふて寝をした、父ちゃんであった。
ふて寝をしながら、考えたことがある。
それは、来年のこと、未来のこと・・・。
ちょっと、仕事を減らそうと思った。働きすぎなのだ。だから、身体が炎症っちゃう！
仕事とは思っていないが、やりすぎなのだ。頑張りすぎている。

引退公演が終わった後、真剣に考えてきたことでもある。
これから先のことだが、少し仕事を整理しようと思いはじめている。
音楽興行の引退が引き金になり、他の仕事も少し縮小していくのはどうか、と。
お金持ちや、ナンバーワンを目指す年齢でもないし、ここから慌てたところで何も結果は出ない、と気が付いたのである。
何をやめる、と明言するのはよくないが、ちょっとずつ、整理をして、大事な創作に集中をしていくのがいいのじゃないか、と思うようになった。
仕事は前よりも選んでやっていく。
派手な仕事は減らす。ワイン大使も今年いっぱい。
やめていくものは、大胆にやめていき、新しくはじめたものに注力していく。
この日記は少し形を変えて、続けていく予定だけれど、もしかすると、アップしていくペースが落ちるかもしれない。
ＳＮＳを見る時間、減らそう。あはは。
小さく生きる、それがいい。
細く長く生きる、それがいいだろう。
「最近、辻仁成、どうしているの？」
「知らない。消えたね。年なんじゃねーの？」
それがいい。
過去の人になる、それがいい。
隠居である。おおお、その境地についに辿り着いたか！

具体的なことは決めてないが、今度の個展で納得できたら、パリを拠点に、好きな絵を描いて、フランス各地でほそぼそ個展をやっていく。
絵は、映画や小説のように訳す必要がないので、言語の障壁がなくなるから、ぼくには都合がいい。
お金を稼ごうとすると、人を抱えたり、大変になるので、自分一人でやっていけるように、事務所も小さくしていくことを考えてもいいかもしれない。
今度、長谷っちと、ちょっと飲んで話すことにした。
こんなふうに、早ければ、来年には、小さい人生に移行しようかな、と思っている。
世界は、戦争だ、気候変動だ、なんだかんだ、とわけがわからなくなっている。
ＳＮＳは不穏な投稿ばかりで、読んでいて気が滅入る。
雑念の届かない世界に行き、残りの人生を浄化させて暮らしていくのがいいだろう。
音楽の割合がぐんと減ったので、そろそろ、長編小説に向かうのも悪くない。
一つの仕事を、１０年単位で、やっていくくらいの速度感、いいね。
もっとも、いろいろと思いつく人間だから、そう簡単ではないとは思うが、それでも、「小さく生きる」という選択肢は、今の自分にあっている。
畑で自家栽培したもので、美味しい料理をすればいいしね。
そうだ、釣りをして、新鮮な魚をとって、暮らせばいい。
それがいい。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
小さく生きる計画は、不幸なことじゃないんです。逆に、派手に大きく生きることばかりが脚光を浴びているこの世界にあって、自分の身の丈にあった小さな創作の場を持つことが大事だな、と気が付きました。まだまだ、長い人生ですからね、笑顔で生きていくよ。

さて、そんな小さな父ちゃんがＤＪをつとめるラジオですが、次は、９月１４日の２２時から、生放送になります。父ちゃんの熱血なしゃべり倒しをお愉しみください。ご希望の皆さんは、下のＴＳＵＪＩＶＩＬＬＥ（ツジビル）のバナーをクリックね。めるしー。
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