JINSEI STORIES
滞仏自分流日記「自分の悪口が聞こえてきた時に、父ちゃんがやる反撃の仕方」 Posted on 2024/09/11 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、今日、たまたま、人づてにぼくの悪口を言っている奴がいることが判明したので、一瞬、不機嫌になった。
「辻さん、あいつ、また、そこかしこで、辻さんの悪口言ってますよ。別に告げ口したいわけじゃないんですけれど、そこに辻さんの知り合いもいたので、一応、報告しておきます」
とある知り合いとのライン電話の最中に、別の知り合いがぼくのいないところで悪口っぽいことを、言って、笑いをとっていた、と、教えてくれたのだった。
「言っときますが、私は同調していませんよ。でも、あいつら、気を付けた方がいいです」
ぼくも人間だから、聞きながら、頭にきたし、当然だし、電話をきった後、しばらく、ふざけやがって、とむかついたものだった。
でも、10分だけ、腹を立たせるだけ立たせておこうと、まず、決めて、あの野郎、くそったれが、と心の中で毒づくことにした。
でも、10分と決めたので、10分、ちょうどになったら、
「はい、腹立つの、おしまい」
と言って、再び、絵の仕事に戻った懸命な父ちゃんであった。
じゃあ、どうやって、父ちゃんは、腹立つ自分の気持ちをおさえ、気分を変えたのか、教えてさしあげよう。
あはは。
まず、悪口がなぜ、生まれるのか、というと、そいつらにとってぼくが邪魔な存在だから、言われるわけで、要は、おまえは気に食わない、ということに他ならない。
たぶん、そいつらは、人生がうまく言ってないのだ。それは100%間違いない。
そもそも、人生がうまく言ってる人間は悪口など、言わない。
父ちゃんが悪口を一切言わないのは、人生がうまく言っている証拠だからである。
なので、悪口、陰口を言う人間は、申し訳ないが、人生の脱落者ということになる。
メディアとか眺めてみればわかる通り、普通の人に対して悪口ばっかり言ってる有名人って、ほら、ダメでしょ?
SNSとか読んでいても、何が面白くて、人の批判しかしないのか、ということをちょっと考えればわかる。
自分こそが、自分の理想に手が届かないものだから、かたっぱしから人を馬鹿にするのだ。
そもそも、「あいつはバカだ」とか「頭が悪い」とか、こういうことを他人に言っている時点で、育ちが悪い、ということを公言していることになる、ことを、頭がいい人間はよく知っているから、人前で「あいつはバカ」などとは決して言わない。
ま、こっそり、思うだけ・・・。笑。
だいたい、バカだな~、と思う人にぼくは基本かかわらない。
こういう人間とは心が通じ合うこともないだろう、と冷めた気持ちで、離れる。
そもそも、他人をそこまで批判したい気持ちが抑えられないなら、もっと、センスのいい批判の仕方があるだろうに、「バカ」で終わらせるのは、低次元、過ぎる。
つまり、そういう人間の批判は、こちらがそれで頭にくるに値しない、というレベルだ。
悪口や批判が好きな人間の井戸端会議くらい、つまらない界隈はない。
でしょ?
まず、これで、ほぼほぼ、不愉快は消え去る。
次に、
ぼくのことを「バカにする」奴らに、言葉で反論をするのは、もったいない。
時間も、人生も、そんなことで浪費する暇はないのである。
なので、ぼくは、10分、怒った後、
「時間損したな」
と呟き、気分を入れ替えて、再び、カンバスに向かうのだ。
やつらは、ぼくが絵を描いたり、いろいろとやるから、批判をしているのだから、そいつらをもっと不愉快にさせる唯一の反転攻勢は、自分の道をがんがん、突き進むことに、つきるのである。
これは、ものすごい反撃の一手になる。
他人に批判をされると、その怒りを利用して、ぼくは、逆に、もっと頑張ってやろうと思うものだ。単純? そうそう、単純で結構。
ぐうの音が出ないくらい、ものすごい作品を生み出せばいいじゃないか。
今日は、腹立たしい10分のあと、大きな作品が出来上がった。
阿修羅になったような感じだった。
不愉快になって、悶々とするだけ、時間の無駄だから、ぼくは真っ白なカンバスにがんがん、油絵具を叩きつけてやったのだ。
そしたら、とんでもない作品が出来上がってしまった。阿修羅の図、と名付けよう!
つまり、批判好きな連中をもっと引き離してやったわけだ。
そうなるとむしろ、感謝さえしたくなる。
「君たちが、ぼくのことをうじうじと批判してくれたおかげで、ぼくはさらなる達成感を得ることが出来たよ。ありがとね。バイバイ」
みたいな、皮肉も口から飛び出した。
この絵は、来年の夏の個展の目玉になるかもしれない。
人生を逆手にとる。
それが前進するうえで、大事なことなのである。
人に何か言われるのは、自分が頑張っている証拠だから、気にするな。
むしろ、もっともっと頑張って、さらにさらに高い場所を目指せ。
父ちゃんが言いたいことは、そういうことである。
※ ついに、腕を支えないと、肘まで痛みが拡大して、筆も持てなくなった、父ちゃん。これ、ほんとうに、腱鞘炎なんだろうか??? でも、阿修羅になって、燃え尽きる覚悟なのであーる。秋の個展、がんばるぞー。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
いや、それにしても、頑張ると、腱鞘炎が痛む~。「先生、もうやめましょうよ」と弟子の長谷っちが言った。「君、この姿を写真にとっておいてくれ。阿修羅に化身したぼくを」!
はい、そんな阿修羅父ちゃんの次の個展は、フランス、パリ、マレ地区で、10月4日から開催されます。
※ おおおおお、これは、阿修羅じゃ、怖い~。髪の毛、なんとかしろや。
さて、今度のラジオは、9月14日の日本時間22時からになります。父ちゃんのマシンガントーク、炸裂しますよー。和やかな時間をお過ごしください。
ラジオの申し込みは、こちらのツジビルバナーから、どうぞ!!! 毎年、イベントなどもやってます。
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