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パリ最新情報「オリンピックで物議を醸すセーヌ川の水質、競技は開催されるのか」 Posted on 2024/07/25 Design Stories  

 
パリ五輪時、セーヌ川では、トライアスロンのスイム(7月30日)と、マラソンスイミング競技(8月8日、9日)が開催される予定だ。
しかし水質を危ぶむ声は、五輪開催2日前となった今でもまだ消えていない。
浄化が進んでいるとはいえ、水質は天候で大きく左右されることから、「不安が残る」「大きな懸念事項」と自国からも他国からも指摘されている。
 

パリ最新情報「オリンピックで物議を醸すセーヌ川の水質、競技は開催されるのか」

※セーヌ川、アレクサンドル3世橋から。

 
こうした批判を和らげようと、フランスのスポーツ大臣は7月13日に、パリのアンヌ・イダルゴ市長は7月17日に、自らセーヌ川に飛び込んだ。
その後の体調などは報告されていないが、19日にはイル・ド・フランス県(パリ首都圏)から、「オリンピック会場となるアレクサンドル3世橋付近の水質分析結果は、7月10日から16日の7日間のうち、6日間が健康基準内だった」と発表があった。
 



 
それではフランス側ではない、NGOサーフライダー・ファウンデーション・ヨーロッパ(以下サーフライダー)の発表はどうなのか。
サーフライダーは、2週間ごとにセーヌ川の水質を独自に分析している。サンプルはアルマ橋下と、実際の競技会場であるアレクサンドル3世橋下から採取されたものだ。

結果は、7月4日の大腸菌が910で、腸球菌が305だった。もっとも最近の7月15日では大腸菌が920、腸球菌が38というデータが出ている。
※7月23日、WE DEMAINより。国際トライアスロン連盟の基準では、水100mlあたりのCFU(大腸菌コロニー形成単位)のうち、1000以下での開催が適切だとされている(淡水)。

つまり開催には「ぎりぎり」適していることになるが、その水質は決して褒められたものではない。また雨の有無や、セーヌ川の場所によっても水質は変わるという。

天候の影響は非常に大きいと言わざるを得ない。とくに今年4月〜6月上旬には記録的な雨が降り、セーヌ川の水質が悪化の一途をたどった。
 

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※雨で増水したセーヌ川、ノートルダム大聖堂付近。24年4月撮影。サーフライダーの発表では、4月24日の大腸菌がもっとも多く、6350だった。



 
先日、「セーヌ川の水質は道頓堀よりもよくない」という報道があった。
これは24年5月の分析結果だったが、確かに、5月15日のアレクサンドル3世橋下では3450の大腸菌が検出されている。対し23年2月の道頓堀川の大腸菌は、100mlあたり540であった。しかしながら検査時期、雨の有無によっては、両河川とも数値が大きく変わる。
 

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※24年6月上旬のセーヌ川(イエナ橋)。この後水質が改善されはじめる。



 
7月23日には、フランスのアメリー・ウデア=カステラ/スポーツ大臣がセーヌ川の水質について見解を述べている。
大臣は、「現段階では水質には安心しているが、連続的な雨に見舞われた場合には、腸球菌と大腸菌が適切なレベルに戻るまで、48時間待たなければならない」とし、「IOCや関係する国際連盟と連絡を取りながら、不測の事態に備えた日程を計画している」と語った。

では48時間前の天気予報はどうなのだろう。
トライアスロン競技(30日)開催前、7月28日の天気予報は「晴れ」と出ている。翌日の29日、30日当日も同様だ。しかし26日午後、27日は一時的な雨の予報が出ていることと、パリの天気が変わりやすいことから、リスクはまだ残っていると言えるかもしれない。

「不測の事態に備えた」プランも発表されている。
セーヌ川についてはプランBとCがあって、プランBでは、競技を数日延期するか、トライアスロンのスイムパートがキャンセルされる。
そしてプランCは、マラソンスイミング競技をセーヌ=エ=マルヌ県のヴェール=シュル=マルヌ(パリ東部)に移すというものだ。

上記から、セーヌ川で競技が開催されるかどうかの判断は、まさに直前に行われることになりそうだ。(コ)
 

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