PANORAMA STORIES
q.b.レシピのないレシピ帳〜イスキア島名物!ジンガラ〜 Posted on 2024/07/19 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア
旅の大きな醍醐味のひとつに、行く先々で頂く郷土料理がありますよね。
ここイスキア島にも魚介や野菜料理はもちろんの事、名高いイスキア風ウサギの煮込みなどがあり、世界中からその味を求めて多くの観光客が押し寄せます。
このシリーズでもカンパーニア州の郷土料理を中心に沢山のレシピをお届けしてきました。実際に作って下さった読者の方々のSNSの投稿を見る度に、本当にうれしく感じます。しかし、食べた事の無い料理、しかもイタリア料理の中でもマイナーなレシピを再現するのは決して容易な事ではないですよね。今回はイスキアを代表するファストフードである、ジンガラと言うパニーノをご紹介しますので、ぜひ気軽に作ってみて下さい。
まずは簡単にジンガラについて。このパニーノ(パンに好みの具材を挟んだ物)は1977年、イスキアポンテと言う地区にある軽食屋La Virgolaラ・ヴィルゴラで誕生したとされています。このパニーノは瞬く間に評判となり島中に広がりました。ジンガラとはジプシーという意味ですが、特に深い理由はないようで、このパニーノの雰囲気に合ったインパクトのある名前という事でつけられたようです。今の時期は海に持っていくお弁当としても重宝されますし、1年を通して様々な場面で食べられています。
いつもは我が家の小さなキッチンでしている料理の撮影ですが、今日は友人のジュゼッペが経営する、海辺の軽食屋の厨房にお邪魔してきました。ここのジンガラはジュゼッペがこだわりを持って作っていて、とても美味しいと評判です。彼が作り方を丁寧に教えてくれたので皆さんも一緒にマスターしましょう。
~ジンガラ~
材料(1人前)
◎田舎パン 2切れ ◎モッツァレラ又はフィオールディラッテ 3切れ程
◎パルマ産又はサンダニエーレの生ハム 3枚程 ◎サラダ用トマト 3、4切れ程
◎アイスバーグ、又はロメインレタス 1枚 ◎マヨネーズ q.b.(適量)
※オリジナルのジンガラはラ・ヴィルゴラの近くにあるボッチャという店のパンが使われます。いわゆる田舎パンで、外はガリガリに固く、中はもっちりとした食べごたえのパンです。日本だとパン屋さんのカンパーニュなどが比較的近いと思います。
モッツァレラは決して高級なものを使う必要は無く、牛乳から作られるフィオールディラッテを好む人もいます。フィオールディラッテの方がより締まっていて水分が少ないからです。
作り方
⓵田舎パンを薄く長めにカットし、片面ずつにマヨネーズをうっすら塗ります。
②マヨネーズの上にモッツァレラ又はフィオールディラッテを並べ、さらに生ハム、トマト、レタスの順に重ねます。モッツァレラを使う時は、切ってから少しザルなどにあげて水切りをしておきます。
この順序にすることで熱が加わった時にモッツァレラは程良く溶け、生ハムからは適度な塩分が染み出て全体が馴染む、というジュゼッペのこだわりです。
③もう1枚のパンを被せ、手で軽く押して全体を馴染ませます。温めておいた電動式又は直火のグリルでモッツァレラを乗せた側を下にして焼き始めます。日本の家庭ではあまり馴染みのない器具かと思いますが、トースターでも大丈夫だと思います。
途中でひっくり返し、両面がこんがりきつね色になったら出来上がりです!
半分に切り、お皿に盛りましょう。
最近ではピザ生地のパンやフォカッチャなどを使ったジンガラも多く見かけるようになりました。ジュゼッペのお店では毎日ボッチャからパンを仕入れ、トマトとフィオールディラッテはソレント産、生ハムはパルマと素材も厳選しています。
今回お邪魔したSole e Saleの店内と目の前に広がるチターラ海岸(島内最大の温泉公園があることでも有名)。夕陽を見ながら食べるジンガラは格別!
冷えたビールやコーラ、アイスティー、又はイタリア風にアペロルスプリッツと共に召し上がって下さい。うだるような暑さの中でも、ふっとイスキア島からの風がそよいで来るかもしれませんよ。それではまた次回、普段着の食卓でお会いしましょう!
Sole e Sale -Via Giovanni Mazzella 320 Forio d’Ischia
Posted by 八重樫 圭輔
八重樫 圭輔
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シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。