JINSEI STORIES
滞仏日記「熱血辻ゼミ、今日も生徒たちと向き合い文学を熱く語った!」 Posted on 2024/07/11 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、今日はゼミのオンライン授業があった。
月に一度、ゼミ生は5人だが、毎回、熱血先生として、頑張っておーる。
教えているのは、クリエイティブライティング、つまり、小説の創作コースということになる。小説のゼミって、何を教えるの? と思う方も多いだろう。
そもそも、小説って教えることができんの、とか、・・・ま、その通りなのだ。
もうすぐエッセイ教室が控えているが、エッセイの方が「こうやって書いたらいいよ」とか、字数が少ないからリライトもしやすく、ある程度、深いところまで導くことが出来る。
それに対して、小説の書き方、というのは、あるようで、ないに等しい。
ジャズの即興演奏(インプロヴィゼーション)も、実は、でたらめを弾いているわけじゃなく、様々なスケール(音階)があり、その範囲の中で、(時々、それを超えたりするのもかっこよかったり、あとはセンス次第なのだけれど)、演奏者が自分のスタイルを形にしていくも瞬間芸術なのであーる。ふぁろめおー。
ジミヘンは天才だ、というのはその通りだけれど、ジミヘンも既存のスケールを駆使して、アドリブをこなしている。
ただ、これが小説とやや似ているところだけれど、いくつかのスケールをどうやってセンスをよく、音楽の中に持ち込むか、こそが演奏者の才能ということになる。
なので、途中で、音階を飛び越えても、着地が元のスケールだったりすると、すげー、ウルトラCじゃん、みたいなことになったりする。
小説というのは、「何を書いてもいい」おきて破りの世界なのだが、もちろん、日本語や、文体や、文法も時と場合によっては弄っている作家もいたりして、判読できないのに、すごいという作家も、稀にだが、いる。
しかし、ジャズの即興演奏と同じように、大きな意味で宇宙の中にある言語運動・・・。
なので、そういうことを学生たちに90分も話すのだけれど、これが、宇宙遊泳くらいに、難しい・・・。
今日はS君が書いた小説の合評になったのだけれど、学生たち、手厳しくて、なかなか愉快であった。
S君は打たれ強い子で、ぼくは大いに期待している。
彼の最初の創作が「死にゆく人のバス」みたいな作品だったが、どこへ向かっているんだ、このバス、と思わされる才気を感じたのに対し、ここ最近は、小説とはこういうものだというイメージにとらわれすぎて、他の生徒たちに、ぼこぼこにされていた。
うん、でも、めげない感じがS君の持ち味なので、次回作、先生は期待しているよ。
※ モリーユ茸のマカロニ、作って食べたよー。
12日にエッセイ教室があるので、ゼミのオンライン授業のあと、今度は父ちゃん風のエッセイの書き方を教えるために整理やっていたのだが、おおおお、昨日が料理雑誌dancyuの巻頭エッセイの締め切り日だったんじゃねー? みたいな、・・・。
で、ぼくの場合、エッセイなどは、編集者さんにリマインドを頼んでいる。締め切り日の前日にリマインドしてください、という具合だ。(植野さんの場合、リマインドが早すぎて、忘れてしまった)
小説家は、朝、起きたら、だいたい午前中に依頼エッセイをやっつける、人が昔は多かった。先輩作家の方々も、昼飯前にやる、と言っていた。
残りの時間を小説に費やすため、午前中に生活費を稼ぐという寸法・・・。
そういう時代でした。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
12日、発売になるアートブック(画集+小説集)の中に収められた「動かぬ時の扉」は久しぶりの小説ということになります。
画集とのセットなので、絵から受けるインスピレーションと文学が融合するようなかなり奇妙な作品、ノートルダム寺院の火災からヒントを得て、書き出しました・・・、あはは、自分で説明するのが難しいですな。それくらい、小説にもいろいろな顔がある、ということです。
さて、12日、そのエッセイ教室がありますぞ。課題を出さないでも、覗くだけで、おお、なるほど、と笑えるような父ちゃん先生による気まぐれ文章教室です。文章書くのがお好きな皆さん、どうぞどうぞ!!!
7月12日に、お気軽にご参加ください。
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https://tunagate.com/community/xWZVvgZD/circle/92861/events/329479