PANORAMA STORIES

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター Posted on 2024/06/26 ルイヤール 聖子 ライター パリ

 
今から100年以上も前のこと。パリの街は、芸術的で素敵なポスターであふれていました。
その多くは、デパート、ショップ、レストラン、劇場・・・といった場所の宣伝や、選挙ポスター、新商品の広告です。
ほとんどがイラストで描かれていて、担当したアーティストたちは現代にも通じる素晴らしい作品を残してくれました。
 

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター

※当時のポスターは芸術的価値が高く、美術館や図書館で大切に保管されています。こちらはモンマルトル美術館。



 
1920年代のパリでは、第一次大戦後の好景気によりイラストポスターが全盛期を迎えました。しかし当時はPCも何もなかった時代です。ポスターデザインは画家による手書きのイラストで、印刷はリトグラフを用いながら手間をかけて行っていました。

人々の情報源はもちろん、ポスターです。
それだけの人が目にする広告なので、担当した画家(当時はイラストレーターを兼ねることも)にとっては名誉なことだったのでしょう。1920年代には「広告芸術」という一つのジャンルにもなっていました。
 

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター

※1924年、パリのミュージカルの宣伝ポスター。

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター

※同じく1924年、選挙のポスター。女性の選挙権を求める内容。



 
今の方が技術が優れてるとはいえ、当時の斬新なアイデアとレイアウトにはいつも見入ってしまいます。
そんな素敵なイラストは、デパートのカタログやノベルティにも使用されました。たとえば写真の扇子は、パリにかつてあったデパート「ルーブル」が顧客用にプレゼントしたものです。
こんなに可愛いデザインなら、今でも欲しい! と思う人が多いのではないでしょうか。
 

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター

※パリのデパート「ルーブル」の扇子。右上のミニ冊子はカレンダー、右下は香りつきのカード。



 
さて1924年といえば、前回のパリ・オリンピックがあった年。そのポスターもまた、イラストで描かれたということです。
当時はオリンピックの勢いに乗って、パリのカフェやデパートの広告が「スポーツ仕様」になりました。2024年のパリでもほぼ同じことが起こっていますが、100年前のポスターと今回のポスターでは、これほどまでに違うのだなと感心しています。
 

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター

※1924年パリ五輪のポスター。

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター

※2024年パリ五輪のポスター。Paris 2024 公式Instagramより



 
パリ市はこうした広告を、芸術作品として大切に扱っています。原本は美術館や図書館に、複製したものはトートバッグやポストカードとしてキオスクで販売されています。またカフェのお化粧室に、ヴィンテージポスターとして飾られていることもありますね。

今回ご紹介したポスターの多くは、現在もパリのフォルネイ図書館(Bibliotheque Forney)で展示されています。
ヴィンテージポスターをたくさん所蔵するフォルネイ図書館は、パリの隠れた名所。
オリンピックイヤーの今年は文化イベントとして、1924年に焦点を絞ったエクスポジションが開催されていました。入場料が無料というのもパリならではです。※24年9月28日まで。
 

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター

※フォルネイ図書館。



 
2024年のパリでも、いたるところで広告を見かけます。100年前と比べてイラストのポスターは減っていますが、「凝っている」という点においては今も昔も共通していると思います。
しかし、一世紀前の建物が今も輝くパリでは、当時のヴィンテージポスターが貼られていても違和感なく過ごせてしまいそうです。過去をリスペクトしているパリ市の姿勢も素敵だなと思いました。
 

今も素敵で可愛い、フランスのヴィンテージポスター

※現在のパリ、映画館。

自分流×帝京大学



Posted by ルイヤール 聖子

ルイヤール 聖子

▷記事一覧

2018年渡仏。パリのディープな情報を発信。
猫と香りとアルザスの白ワインが好き。