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パリ最新情報「1世紀ぶりのオリンピック、パリ市民はどこへ? 意見が分かれる現在のパリ」 Posted on 2024/06/09 Design Stories
フランス史上最大のスポーツイベントまであと一ヵ月半。
ちょうど100年ぶりとなるパリ2024大会は、パリの中心部をはじめ、パリ郊外、フランス地方都市、海外県(タヒチ)を舞台とした大規模なものになる。
当然、パリも大会のリズムに合わせて呼吸することになるのだが、そのテンポはパリ市民の日常生活に影響を与えないわけではない。
今夏、パリには約1510万人の観光客が訪れると予想されている。例年、夏のパリを訪れる観光客数は800万人強だというから、ほぼ倍の人数だ。
一方でパリの街は今、オリンピック仕様に大変身を遂げている。しかしそれに伴う規制もかなり厳しくなっているため、パリ市民の習慣が根本から変わりつつある。
100年ぶりの五輪、しかも居住地での開催。これを直に観たいと思ったパリ市民は当時、少なくなかった。
ところが調査会社イプソスの発表によれば、パリに住むほぼ2人に1人(47%)が「オリンピックを理由に」パリを離れるのだという。※2024年3月の調査。
これには、オリンピックの有無に関わらず離れる(バカンスに出かける)人々は含まれていないので、すべてを合わせればさらに多くのパリ市民が不在になる、ということになる。
理由はさまざまだが、やはり、パリ市民のいちばんのネックは交通問題だと言えるかもしれない。というのもオリンピック期間中は、公共交通機関の値段がパリ周辺で2倍になるためだ。
パリ市は開催前、早めのチャージを呼びかけているが、うっかり買い忘れた人・緊急時・旅行者にとっては痛い出費になってしまう。※期間中、地下鉄の切符は一枚2,15ユーロが4,3ユーロ(約726円)に。
車移動も同様で、パリの中心部では今すでに、規制に伴う大渋滞が発生している。そのためフランス政府は、オリンピック期間中は「宅配を控えるように」と勧告。現在では宅配以外にも、スーパーマーケットへの食品搬入の遅れなどが予想されている。
上記の内容が、オリンピック期間中に市民がパリを離れる主な理由だった。
しかしもちろん、街に残るというパリジャン・パリジェンヌも多数いる。そうした中には「住んでいる街でオリンピックが開催されることは滅多にない。大変だとは分かっていても、ぜひ観たい」、「仕事のために残るしかないと思う」など、やはりさまざまな理由があった。
なお調査では、滞在派の23%がテレワークに切り替えるとしており、34%は「これまでの習慣を変えるつもりはない」と答えたという。
そんな中、パリ郊外では新たな旅行トレンドが生まれている。
オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、パリから車で1時間〜3時間の「田舎」、緑豊かな場所でTV観戦を楽しむという新しいトレンドだ。これはAirbnbが実施した、フランス旅行のトレンドに関する調査、2024年度版で明らかになったものである。
人気の場所としては、ヴェルサイユ市、シュレンヌ市(パリ西郊外)といった首都近辺から、ナント方面、リヨン方面にある小さな街まで。今年は海でも山でもない、緑豊かな場所へのリクエストが著しく増加しているという。
大会期間中、パリでは市民の数が例年より少なくなるかもしれない。
しかし残らざるを得ない人々に向けて、「もっと歩く、ルートを変える、外出を減らすなど、習慣を変えるチャンスでもある」と呼びかけるメディアも増えてきた。
そんなパリ市民の本格的な移動が始まるのは7月、第二週目からだと言われている。(コ)