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さむらいの志 Posted on 2017/03/05 岡崎 慎司 プロサッカー選手 スペイン・カルタヘナ

どうして世間は海外に出て戦う選手に厳しくて、優しいのか?
同じことが選手側にも言える。わざわざ大変な思いをして海外までやって来て、半年や1年程度の短い在籍期間で、なぜ日本に帰ってしまうのだろう?

家族の問題や事情があるなら仕方ないことだが、せっかく海外でプレーする機会を手にいれておきながら、成果を出すこともなく、あっさりと帰国してしまうのはなぜなんだろう?

ちょっと試合に出れないことが続いたくらいで、或いは、監督との相性とかが取り沙汰されたからって、俺には関係ない。その程度のことで日本に戻る気にはなれない。戻ればいいじゃないか、と世間に誘惑される。
世間はどうしてもっと応援してくれないのだろう?

クラブだってそうだ。出て行った者に、何でそんな優しくするのか? 成功するまで帰ってくるな、と叱咤激励するべきじゃないか。プロサッカー界において、海外で戦うことは日本代表で戦うことと同じくらい大事なこと。
日本代表が勝つことも日本のイメージをあげるが、でも、一人一人が海外で評価されることも同じ効果がある。
例えば俺の場合だけど、しがみついてでもヨーロッパにいなきゃいけないんじゃないのか、と自分に毎日言い聞かせている。たかが1年や2年、海外経験したからといって、本当の海外の厳しさが分かった、とか、トップリーグを経験した、などと言い切れるだろうか?

もちろんそれは選手にとって財産かもしれない。でも、観光と旅の違いのようなものを感じる。
罵倒されても、無視されても、しがみついて這い上がらないと意味がない。短期間の海外経験が日本に何をもたらすというのだろう? 諦めて帰った選手から影響を受けるレベルとは何か・・・。
 

さむらいの志

俺は誰かの生き方を否定したいわけでもなく、自分の生き方を肯定したいわけでもない。
でも、ベンチを温めチャンスを待っている間であろうと、選手は戦っているのだ。
ピッチに立てないならば日本に帰る選択肢もあるよ、などと簡単に言わないでほしい。ここでの優しさは選手をダメにする。日本から出て海外で勝負するなら、とことんやるべきだと思う。それこそ海外の選手達に日本人が舐められないためにも。やらなければ真の経験にはならないし、観光サッカーで終わってしまう。

だからこそ世間には言いたい。
日本のサッカーはヨーロッパの人達からまだまだリスペクトされてないし、結局発展途上なのだ。海外に出る以上、安定なんかないと考えるべきだ。ずっと試合に出続けられるわけはないし、苦しむことも含めて海外の厳しさなんだと思う。日本ではいまだに外国人の助っ人をリスペクトする傾向がある。でも、こういう感情はヨーロッパにはない。自分がチームにフィットするまで使い続けてくれるチームなんかどこを探してもない。
使えるか? 使えないか? まずはそこから始まる。

海外で成果が出せない、試合に出れない、結果が出せない、から選手は孤独になり、このまま消えてしまうのじゃないか、と不安に陥る。すると、日本にいればスターでいられる、という思いが頭を過る。多分日本にいれば優勝できるかもしれない、と考えてしまう。自分を評価し、求めてくれるチームでやりたいと思い直すようになるのだろう。でも海外で一度でも評価を得たり、周りから求められれば、何かが変わる。
もしそれを感じたら、出場機会が少ない程度で日本に戻る選択肢など出ない気がする。認められた時に辛さや悔しさは吹き飛ぶんだ。そして、さらに戦うエネルギーになる。
 

さむらいの志

もちろん日本代表が勝つことは大事だし、そのためにいつもベストの状態を維持するのも必要だろう。アジア予選は特に絶対突破しなきゃいけない。
でもそれと同時に海外に出た選手はその一人一人が日本代表でもあるわけで、一人一人の選手を通して海外は日本を評価してくる。海外で日本人が舐められないためにも、踏ん張ってさらに評価されるよう徹底的にしがみつかなければならないのだ。そういう宿命と責任が俺にも、海外組にはあると思っている。

最近テレビでも「日本はどうしたら世界に勝てるか」という議題で討論してたり、記事なんかも見かけるけど、それはただの理想や夢のレベルでの話でしかないと感じることが多い。

じゃあ、現実、どうやって日本人から世界トップレベルで通用する選手が出てくるのだろう?
魔法じゃあるまいし、パッと出てくるわけがない。世界で揉まれて叩かれ苦しんで、少ないチャンスであろうと最大限自分をアピールし、しかもそれを何回も何回も繰り返し、必死で取りに行かなければならないのだ。
他国にいる時、俺たちは日本のメディアの発言とか、ファンの厳しさやクラブの優しさやいろいろな誘惑や批判とも戦わないとならない。
 

さむらいの志

ただ、最近の批判や報道には我慢が出来ない。
これは選手から言うべきじゃないってわかってる。でも俺らにも選手としての責任がある。日本人として海外でやれることを証明しなきゃいけないんだ。俺らは目の前の試合に全力で取り組まなきゃいけない。
報道する方には、目先じゃなく将来を考えてもらいたいんだ。これからも海外でやりたいと思う選手を生み出すために。そして、その選手達に覚悟を持って海外に来てもらうためにも。

世界のシーンで日本人が価値を高めれば、当然世界は日本人のリーグに注目するだろう。そのためには海外に出た選手一人一人がまずはピッチにしがみついて、力尽きるまで、全力で戦い続けるべきだ。
世の中のイメージに振り回されて、かっこばかりつけて、結局選手が覚悟を持てなくなってるようじゃ、日本のサッカー界そのものが浮上することが出来ない。
それこそ、日本人らしさで言うなら ”侍精神” や ”サムライ” という言葉が俺は必要なんじゃないかと思う。
負けちゃいけないんだ。このままじゃ世界との差がもっと開いてしまう。

ここで自分が伝えたいことは自分が今まで言えずに内に溜まってたもの。言えたのは自分にそれなりの覚悟が生まれたから。俺はこれからも海外でしがみついてでも貪欲に上を目指したい。
それが自分のサムライの志だから。
 

Posted by 岡崎 慎司

岡崎 慎司

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Shinji Okazaki
プロサッカー選手。1986年4月16日、兵庫県宝塚市生まれ。滝川第二高校を経て2005年、Jリーグ清水エスパルスに入団。チームの中心選手として活躍する。2011年ドイツ・ブンデスリーガのVfBシュツットガルトへ移籍。2013年マインツでプレー後、2015年イングランド・プレミアリーグのレスター・シティに移籍。レスターがプレミアリーグ初優勝。現在はFC CARTAGENA、カルタヘナ活躍中。ポジションはFW。