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London Music Life「夏を待ちわびるミュージック・ファンたち – 音楽フェスの楽しみ方」 Posted on 2024/03/24 鈴木 みか 会社員 ロンドン
先日も職場の同僚から「ヘイ、ミカ、今年の夏はどのフェスに行くの?」と声をかけられた。
音楽好きの間では、夏にどのライブに行くかはお決まりの話題で、飲み会などでも、今年はどのチケットを取ったか、去年はどのライブに行ったかの話で盛り上がる。
夏休みの家族旅行を兼ねて、フェスに参加する家族も多く、小さな子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、3世代での参加も珍しくない。
子供が好きなアーティストの出るフェスを選ぶのも当然の流れで、「うちの娘はビリー・アイリッシュが好きだから行ったんだけど、若い観客が多くて圧倒されちゃった。でも、とってもよかったわ!」と、音楽で家族のつながりが深まる話を聞くのも楽しい。
また、高齢の人たちが、元気に参加して踊っている姿を見ると、音楽を楽しむのに年齢は関係なく、こんな風に歳をとりたいと思ったりする。
イギリスで一番大きなフェスティバルはグラストンベリー。
大規模なフェスティバルでは、様々なサイズのステージに加えて、移動遊園地のような乗り物や子供も参加できるディスコもある。
ロンドンから3時間ちょっとで行けるワイト島のフェスティバルは、グラストンベリーより規模は小さいが、ポップやロックが中心で、フェス初心者にもおすすめだ。
特定のテーマに絞られた音楽フェスもたくさんある。
ハード・ロック、メタル好きならレスター州のダウンロード。
ジャズならブライトンの近くのラブ・スプリーム。
フォークならケンブリッジ、といった感じで、それぞれの雰囲気をさらに楽しめる。
そしてフェスティバルの基本はキャンプだ。
イギリス人は子供の頃からキャンプ慣れしていて、ライブに加えてキャンプ自体も楽しみの一部となっている。
キャンプ場には仮設のスーパーマーケットもあり、ホテルのようにきれいなキャンプ設備で過ごせるグランピングのオプションもある。
フェスのチケット代は決して安くはなく、若者が自費で参加するにはハードルが高い。
費用を節約する裏技のひとつは、ボランティア枠での参加だ。
シフト制でキャンプ場の清掃や見回り、入口でのチケットチェックなどをする代わりに、シフト以外の時間はコンサートを無料で見られるというものだ。
無線などを使ったコミュニケーション等もあり、英語は必須だが、音楽好きな若者には、ぴったりのボランティアだろう。
キャンプはハードルが高いという人には、日帰りでフェス気分が味わえる野外コンサートもおすすめだ。
ロンドンのど真ん中にあるハイドパークをはじめ、郊外にあるハンプトンコート宮殿やキューガーデンなど、王室の保有地も音楽フェスティバル尽くしになる。
6~7月は著名なミュージシャンのコンサートが毎週末続くので、どれを本命にするのか、難しい選択となる。
しかし、そんな夏フェスも明るい話ばかりではない。
経費の高騰により、運営が困難になっているという現実もある。
グロスター州で毎年行われていたニブリー・フェスティバルは、毎年5000人規模の観客を集め、地元の活性化にも貢献してきたが、今年が最後の開催となると発表した。
ライブハウスと同様に、ここでも中小規模の音楽事業は困難に直面している。
フェスは、子供たちを含めて家族で生の音楽を楽しめる場であり、大規模なライブが地方で開催される機会でもある。
メジャーヒットしていないアーティストにとっても、たくさんの音楽ファンに聴いてもらえる絶好の場だ。
そんなイベントが少しずつ消えていくことに、寂しさを感じる。
さて、辻仁成さんの夏のワールドツアーの日程も発表になった。
近くにお住いの方はもちろんのこと、夏の旅の目的地に音楽イベントを組み込むのもおすすめだ。
迷っている暇はない、夏に向けて準備を始めよう!
辻仁成さんのワールドツアーの記事はこちら↓
Posted by 鈴木 みか
鈴木 みか
▷記事一覧会社員、元サウンドエンジニア。2017年よりロンドン在住。ライブ音楽が大好きで、インディペンデントミュージシャンやイベントのサポートもしている。