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自分流塾「ここで一度立ち止まり、もう一度、自分らしく生きるを考察する」 Posted on 2024/03/22 辻 仁成 作家 パリ
自分らしさというものは、その時代、その都度、その時々によって変化するものだ。
だから、時に一度立ち止まり、軌道修正のために、歩いてきた道を確認し、また、歩いていく道を見渡すことが大事となる。
自分らしさ、というものも、年齢によって、生き方によって、少しずつ変化している。
何が今の自分にもっともふさわしいのか、を時々、見つめなおすことは悪くない。
俺の自分らしさとは何か。
私の自分らしさとは何?
自分らしい、というものは、千差万別だから、正解はない。
これだ、と自分で決定できるものこそが、自分らしさ、であろう。
逆を言えば、自分で決定できずに、みんなと同じ流れにただ従うだけだったりすれば、それは、自分がない、ということになる。
自分らしく生きるというのは、実に勇気のいることだと思うし、孤独なことだと思うし、当然、不安も付きまとう。
でも、自分らしさを持った人間は強い、ということだけは言えるだろう。
一生は一度しかないが、自分らしく生きなければ、それは羊の群れの最後の一頭に過ぎないし、ネズミの大群の最後尾の一匹ということだろう。
列も群も集団もないが、孤高に、気高く一人で行進をする勇気がある者は、自分らしさを生きていると思っていいだろう。
自分が決定できる確固たる生き様が、自分らしさ、なのである。
孤独であることを恥じることはない。
我が道を行くことこそ、自分らしさの原点なのだ。
自分がある、というが、これは何を意味するのか?
どのような環境になり、どのような流行のさなかであろうと、どのような集団の中にいても、自分の考えに、ブレがないことだ。
孤高ということである。
ふらふらと意見を変えず、どんな時代になろうと、我が道をぶれずに突き進んでいくことは、簡単ではない。
けれども、何かが流行るたびに、飛び乗っていくのでは、自分が無さすぎる。
ファッションならまだしも、生き方をファッションのようにしてはならない。
自分の生きる方法を自覚できた時、この「ブレない」孤高が手に入る。
そういう自分があれば、失敗というものは消えてなくなる。
失敗というのは、自分がなくて、つまり、信念がなくて、勝ち馬に乗ろうとする行動の顛末、なのである。
自分に強い信念があれば、失敗という単純な結論には到達しないはずだ。
信念があれば、小さな失敗はすべて教訓となり、人生を導く杖となる。
逆を言えば、自分がしっかりとありさえすれば、どのような逆風の中でも、船はブレずに進み続けることができるというものであろう。
自分で決定する力が、自分らしさの、根本にある、ということだ。
自分らしさ、は、自分を信じて、自分で決定すること。
周囲を気にしないということに他ならない。
我が道を行け。
posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。