JINSEI STORIES
滞仏日記「フレンチビストロの極意を学びにきた御須シェフが、パリで大いにビビる!」 Posted on 2024/03/14 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、今日、パリに、ギャラリーTの総料理長をつとめる御簾(みす)さんが到着した。
つい、一週間前、じゃあ、パリでね、と言い合って別れたばっかりだったが、無事に、この男、パリにたどり着いたようなのであーる。
「御簾君、ぼくがパリにいるんだからさ、怖くないし、ちゃんと面倒みてあげるからさー、ビストロの極意を学びに、おいでよー」
もともと、和食の料理人だが、ホテルの総料理長なので、フレンチをもっと学びたい、という向学心があった。そこで、ぼくが先の日本滞在中、その向学心をじゃじゃっと炊きつけたのであーる。
「やっぱさー、男なら、本場フレンチ学ばないと! 世界を知らないとー!」
さらに、社長でもあるしまちゃんと話し合い、彼を留学させることにしむけたのは、はい、他ではありません、この、ぼくです。
「つじちゃん、それはいいアイデアだねー」
となり、店を一週間休んで御簾君、パリにやってきたのだった。あはは。
しかし、御簾君、一人旅ははじめてのようで、ホテルにチェックインできるか、不安。そもそも、パリまでたどり着けるのか、その辺が、かなり、不安なようであった。
「大丈夫だよ、ぼくが住んでるんだからさー、サポートばっちりするからさー」
と言っておいたが、ぼくは忙しいので、ライブも控えているし、何もしないことに、え?
だって、そもそも、男なら、そのくらい一人で、乗り越えないと、女子高生だって、一人で留学できるんだから、40代の男なんだから、大丈夫でしょ。
自分でばんばんできないのなら、フレンチ・ビストロの極意など、ゲットできるわけもないじゃないか~、御簾君、熱血だよー。
ふふふ、鬼コーチは高みの見物なのである。がんばれ、御簾~。
御簾君は、ちなみに、このような甘いマスクの優男なのである。じゃじゃーん。ううう、元アイドルか、線が細い~、大丈夫か、総料理長!!!!
※ 赤い線で囲まれているのが、御簾シェフだ!!! ギタージャンボリーの打ち上げで・・・。
そこで、この日記でもおなじみの前田しんシェフ(リオン駅前のビストロ、『Aux 2 Saveurs(オ・ドゥ・サヴール)』のオーナーシェフ)に、相談をした。
「これこれこういう男がさ、しん君の料理技術を学びたがっているんだけれど、パリに来たら、ちょっと飯一緒に食いに行ったり、あるいは、時間あるときに、何か料理を教えてやってもらえないかなァ、方法は任せるからさー」
と打診したら、いいっすよー、とぶっきらぼうに帰ってきた。
ということで、御簾君は、しん君先生にビストロの極意を学ぶ。
ところで、まえしんの成功は、北海道で暴走族ではないが、やや不良になりかけていた時代があって、心配したお父様が、このままじゃいかん、とこの男を無理やり、スイスのレストランに修行に出したのが、はじまり・・・。
しかし、そこでフレンチに開眼、その後、パリのシェ・ミッシェルなど名だたるフレンチ・ビストロで修行を繰り返し、今や、連日、満席、しかも、99%はフランス人、という名ビストロのオーナーシェフになったのだった。ぱちぱち。
いわば、たたき上げで、彼の両腕には入れ墨かと思うようなフライパンによる火傷の傷が数百とついている。こわ~。
元・暴走青年だから、にらまれると、まじ、怖い。
ビビる。本当は、近づきたくないけれど、彼がぼくを慕うので、仕方なく、付き合っているのだ。あはは。
この間も、一緒に串揚げ屋に行ったので、あのさ、ちょっといつもの怖い顔して、とせがんだら、この顔をして、周辺のお客さんを震えあがらせた。
まじ、やばい料理人なのであった。
御簾君も、怒らせると怖い、と矢吹ソムリエが言っていたが、どうだろう、怒った顔を見たことがないので、わからない。
まえしんは、めっちゃ、怖いよー。
※ こ、こわい。まえしん、怖いぞー。御簾君、大丈夫だろうか・・・。ってか、この額の傷、なに??? フライパンの火傷? なんで、そこ火傷するの? それとも、乱闘でもされましたか、まえしんさんよ。こわ。(実際は、低姿勢の優しいお父さんですよ、ご安心ください。あはは)
ということで、ぼくに何ができるか、わからないが、御簾君はしん君から、フレンチ・ビストロの極意を学ぶ。要は、家庭教師みたいな、そういうことである。
御簾君、ここで、本場のフレンチの空気感を掴んで帰れれば、たぶん、自分のお店(ココノマ)になにがしかの光を持ち帰ることができるはずだが、しかし、短期で何を掴めるであろう。
ふふふ、ここは、高みの見物でいいのだ。
この機会を無駄にするならば、そこまでの男・・・。
さあ、さあ、御簾シェフよ、たたきあげまえしんシェフから何を掴んで帰れるであろう。
見ものじゃなのー。
昨今の、日本人は、海外に出ない。
パリにいるのは、韓国や中国の若者ばかりだ。
御簾よ、君はもう、若くない。
しかし、日本をもっとおいしくさせてくれ、父ちゃんは見守っている。見守っているだけだけれど、この日記が楽しくなるような愉快な成長を、期待しているのだ。
これでいいのだ。
がんばれ。
大丈夫かなぁ、、、笑
人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
うちの母さんですが、下血もあり、輸血もありで、まだしばらくは入院ということになりました。でも、心強い医師団がつきっきりで検査をしてくれているとのこと、弟が、「兄貴、安心をしていいよ」と言っておりますので、祈りながら、様子をみております。ご心配おかけして、すいません。母の復活を祈りながら・・・。
父ちゃんの今後の・スケジュール
●小説「十年後の恋」集英社文庫版、重版!
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟
https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator
●6月28日、ボルドー・ライブ、予定。(詳細待って)
●6月30日、パリ・ライブ決定(まもなく、チケット発売します!!!)
●7月3日、リヨンでライブ。(こちらもまもなく、チケット発売開始!)
●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●7月後半から8月前半にかけて、日本ツアー、まもなく発表!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(詳細、待って)
https://www.instagram.com/japan.stories?igsh=MTA2dWFjODdsZnNrZA%3D%3D&utm_source=qr
新しいデザインストーリーズのインスタも再始動!
https://www.instagram.com/designstories_paris?igsh=cHlpdGFvdWkyYmdj&utm_source=qr
お知らせ、以上です。