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退屈日記「一人が好き、恋愛がめんどうくさい、そういう今の父ちゃんの恋愛観」 Posted on 2024/02/24 辻 仁成 作家 パリ

退屈日記「一人が好き、恋愛がめんどうくさい、そういう今の父ちゃんの恋愛観」

某月某日、「辻さんはどんなタイプの女性がお好きですか」
こういう単刀直入な質問をうけた。
「どんな」
考えたこともなかった。
「気が合えば」
「どうやったら、辻さんと気が合いますか?」
「フィーリングですか」
「どういう?」
「うーむ」
恋多き男だったことは認めたい。
でも、最近、気が付いたことだけれど、誰かとずっと何かをし続けるの、得意じゃないタイプかもしれない。笑。
もちろん、素敵な人だよね、と思う人は世の中にはいらっしゃるが、恋心というものはもう、離婚から10年、消え失せている。あはは。
相当に、きつかったので、さすがに、恋愛はもういいかな、と思って、少なくともこの10年は、静かに生きてきた。
体調も戻り、子供も自立し、やっと自分の時間ができるようになったので、素敵なマダムと食事くらいするようにはなったが、何もかもを壊して飛び降りるような恋愛には、手も足も出ない。
そもそも、誰かを守るとか、無理。守って! わたしを!!!

退屈日記「一人が好き、恋愛がめんどうくさい、そういう今の父ちゃんの恋愛観」



退屈日記「一人が好き、恋愛がめんどうくさい、そういう今の父ちゃんの恋愛観」

想像はするけれど、恋愛期間のすばらしさは一瞬、そのあとの面倒くさい時間の方が圧倒的に長いことがだんだんわかっちゃったので、一人でいることの幸せ を今はかみしめ、もっと言えば、独身を満喫している。
それに、ぼくは作家だから、空想の中で、恋愛をすることは可能なのである。
小説「十年後の恋」は、最初、舞台は東京と葉山で書いていたのだけれど、ここのところの恋愛不足のせいで、臨場感がわかず、編集者の川崎さんと、じゃあ、いっそ、舞台を生活地であるパリにうつしましょう、ということになり、書き上げ。
しかも、主人公が女性だから、男目線ではない、作品になっている。
むしろ、そっちの目線の方が、今は、書きやすい、ということで、父ちゃんはお母ちゃん化しているのだ。
主婦の気持ちで、離婚から十年経った人の、恋愛再突入って、どんな感じ、こんなことする? とか思いながら、原稿用紙にむかっていたのだった。
でも、書いていながら、自分はこういう恋焦がれるようなこと、いつか、できるのだろうか、とか考えては苦笑してもいた。

退屈日記「一人が好き、恋愛がめんどうくさい、そういう今の父ちゃんの恋愛観」



退屈日記「一人が好き、恋愛がめんどうくさい、そういう今の父ちゃんの恋愛観」

ぼくは男性よりも、圧倒的に女性の友だちが多い。若い人もけっこういるが、お子さんがもう高校生とか大学生というマダムの友だちが多い。
けれど、これが、フランス人のママ友とか、恋愛の対象に、考えて貰ったことがないくらい、あまり男性としてみられていないのであーる。あはは。
仲が良すぎて、相談にのることはあるけれど、向こうも恋愛には疲れていて、いやよねー、もうそういうギトギトした男って、みたいな話になる。
ある意味、ぼくはやつれたのだろう。
若い頃って、ギラギラしていた。たぶん、動物の雄の匂いがぷんぷんしていたのじゃないか、と思うのだけれど、今は、仙人みたいになって、抜けて、悟りの境地に達しつつある。
もはや、観音菩薩か、と思うことさえある。
でも、誤解されないでほしい。幸せになりたい、と思わないことはないのだ。
その幸せとは何か、ということだ。
その幸せはなんだろう、と考えるのがここ最近のぼくのテーマかもしれない。
小説「十年後の恋」は離婚のあと、10年間、育児に翻弄されてきた人、恋愛をとうに放棄してしまった人が、不思議な男性と出会い、思いもよらず次第に惹かれていく、という物語。
そこに、自分の気持ちを重ね、こうなるかなァ、それともこうなるだろうか、と悩みながら書いた、ので、今のぼくの気持ちはだいたい、そこにおさまっている。
それでも、人は恋をするだろうか、したならば、どういう恋になるのか。
この作品の最後の2行の中に、ぼくの中に残っている恋愛観をこめてみた。
読んだ方は、苦笑されるかもしれないが、先日、とある読者の人に、とくに最後が好きでした、宝物にします、と言われ、ほっとした。
それでよかったんだ、と思えたからだ。
幸の薄い人と良く言われるけれど、今のぼくは、皆さんが想像するほど、そこまで不幸せではないんじゃないか。
子供が大学生になって、母親の仕事は終わったので、そろそろ、もうちょっと男を取り戻そうと思っているところである。
どんな、男?
ええと、、、
やれやれ。

退屈日記「一人が好き、恋愛がめんどうくさい、そういう今の父ちゃんの恋愛観」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ま、独身貴族とはよく言ったものですね。自分の時間がたくさんあって、寂しい時もありますが、楽しいです。この生活が壊れないなら、誰かとお付き合いしてもいいけれど、このペースがだれかによって、我慢とか、破壊とか、強要とか要求されるなら、望まないでしょうね。あはは。

伊勢丹アートギャラリーの個展ですが、気を付けてほしいのは、初日の28日は抽選で決まった方しか入れないので、正式には、29日の朝10時から、3月5日の午後6時まで、ご自由にご来場いただけます。「辻個展、29日から、3月5日まで」とメモをよろしくお願いいたします。混乱を避けるため、との画廊の判断ですので、ご理解ください。

●小説「十年後の恋」集英社文庫版、重版!
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月28日、ボルドー・ライブ、予定。(詳細待って)
●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ。(詳細、お待ちー)

https://www.instagram.com/japan.stories?igsh=MTA2dWFjODdsZnNrZA%3D%3D&utm_source=qr
新しいデザインストーリーズのインスタも再始動! スタッフみんなで、パリの今を配信中!
https://www.instagram.com/designstories_paris?igsh=cHlpdGFvdWkyYmdj&utm_source=qr
・それから、ぼくのなりすましが、ファイスブックで暗躍していて、問題が起きている、というので、皆さん、フェイスブック、ぼくのなりすましには、近づかないように、友だち申請とかしないでくださいね。要注意です。
以上です。

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