JINSEI STORIES
退屈日記「古き良きパリを愛犬とあるく静かな日常の中で」 Posted on 2024/02/21 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ぼくは古き良きパリが好きだ。
皆さんは、パリというとどういうイメージをお持ちであろうか。
ノートルダム寺院、モンマルトル、セーヌ川、エッフェル塔、たしかに、どこも、パリを代表する観光地ではあるが、もっと、ささやかな、素晴らしい路地やパッサージュの中にこそ、本当のパリがあって、そこには、たいてい地元民に愛されるカフェやレストランがあり、静かな、あまりに静かな時間が流れている。
ぼくは創作に疲れると、そういう場所に行き、カフェのテラス席の一隅に陣取り、エスプレッソをいただく。
このエスプレッソもお店によって、全部、濃度や酸味が違っていて、その日の気分で、ぼくは行く店を選んでいる。
しかし、観光地はどこも観光客でいっぱいで、そういうところを避けるように、ぼくは棲息しているのだ。
なかなか、この日記にも登場しない、ぼくが好きなパリの絵ハガキのような空間を、今日は少しだけ、ご紹介しよう。
時間は、私たちのものである。
ぼくは愛犬と二人で、誰にも邪魔されないで、生きている。
もちろん、仕事関係の人と、こういう静かな場所のカフェで待ち合わせ、打ち合わせをすることもあるが、普通は、三四郎と一緒だ。
パリの街角は犬にやさしい。
それに、犬連れの人たちが似合う場所でもある。
一人で、コーヒーを飲んでいる人も多い。
ショーウインドー越しに、家具とか、古い楽器とか、本をただ眺めるだけの人生。
でも、それで十分だったりする、たまに、目にとまったものを買う。
そういう穏やかな人生が必要なのだ。
ぎすぎすして、生きてもしょうがない。
ぼくにも悩みはあるが、パッサージュを流れる静かな時間の中にいると、そんなことは、もう、どうでもよくなる。
心の洗濯が終わったならば、カンバスや原稿用紙に向かう。
そして、疲れたら、三四郎と一緒に、ふらりと外に出る。
ちょっとにぎやかなカフェのカウンターに行き、エスプレッソ!
この、古き良きパリは、秘密にしていたい。
時間は、自分のものなのだ。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ぼくのアトリエには、長年、この古き良きパリを描き続けてきたたくさんの絵があります。でも、個展のために描いた作品ではないので、これらの展示などは考えていません。ぼくの死後まで、隠しておきます。あはは。写真も好きですが、やはり、好きな風景はカンバスに刻み込むのが、最高ですよね。
お知らせでーす。
伊勢丹アートギャラリーの個展ですが、気を付けてほしいのは、初日の28日は抽選で決まった方しか入れないので、正式には、29日の朝10時から、3月5日の午後6時まで、ご自由にご来場いただけます。「辻個展、29日から、3月5日まで」とメモをよろしくお願いいたします。混乱を避けるため、との画廊の判断ですので、ご理解ください。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版、重版!
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟
https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator
●6月28日、ボルドー・ライブ、予定。(詳細待って)
●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ。(詳細待って)
https://www.instagram.com/japan.stories?igsh=MTA2dWFjODdsZnNrZA%3D%3D&utm_source=qr
新しいデザインストーリーズのインスタも再始動! スタッフみんなで、パリの今を配信中!
https://www.instagram.com/designstories_paris?igsh=cHlpdGFvdWkyYmdj&utm_source=qr
・それから、ぼくのなりすましが、ファイスブックで暗躍していて、問題が起きている、というので、皆さん、フェイスブック、ぼくのなりすましには、近づかないように、友だち申請とかしないでくださいね。要注意です。
以上です。