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愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」 Posted on 2024/02/10 ウエマツチヱ プロダクトデザイナー フランス・パリ

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

 
ここ数日、郵便局に在庫確認をしていた切手がある。
何度か足を運ぶものの買えずにいたので、職場の同僚達に聞くと「あの切手、すごく人気だよね。集めてる人もいるし、私もこの切手で手紙が届いたら取っておきたくなっちゃうわ」という。
そして今日、ついに手に入れたのがこのハート型の切手「タンブル・クール・ランコム(Timbre cœur Lancôme)」だ。
 

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※「人生は美しい!(La vie est belle !)」と書かれた、タンブル・クール・ランコム



 
フランスの郵便局、ラ・ポストは20年以上前から、バレンタインの季節になると、ハート型の切手コレクション「クール・グリッフェ(cœurs griffés)」を販売している。
直訳すると「傷ついた心」なのだが、「グリッフェ」という単語には「ブランド名入り」という意味もあるので、そちらが正しいような気がする。というのも、毎年、フレンチブランドとのコラボレーションだからだ。
過去にはシャネル、ジバンシー、ランバン、エルメス、バカラ、ゲラン、アニエス・ベーと日本でもおなじみの、錚々たる一流どころが名を連ねる。
 

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※wikitimbres.fr より

 
今年は25回目で、パリの高級コスメティックブランド、ランコムがデザインした。
ブランドアイコンであるバラを、モダンに図案化し、微かに立体感がついている。
バラはランコムにとって、ロゴやパッケージのデザインにとどまらず、香水やスキンケアシリーズの香料にも使われるアイコニックな存在だ。
 

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※ピンクは20gまで送れる1.29€、薄紫は100gまで送れる2.58€



 
記念切手は一般販売の2024年1月22日より前、1月19日にパリにある、ラ・ポスト直営の切手専門店「ル・カレ・ダンクル(Le Carré D’Encre)」で先行発売された。
ランコムの香料に使われているバラは、南仏のグラースで栽培されている縁もあり、グラースの郵便局でも同時に販売を開始した。
切手にとって縁がある土地と、パリを繋ぐという趣向は、郵便というシステムならではのもので心躍る。
 

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※人気の切手の発売日には長蛇の列ができる、ル・カレ・ダンクル

 
「ル・カレ・ダンクル」では、切手に合わせた記念の消印も用意されており、記念切手の発売日に押してもらえる。
発売日以降6ヶ月間は捺印可能だが、日付が印字されてしまうので、そのまま投函できるのは当日のみ。
でも、専用の窓付き封筒を使えば、それ以降でも送付可能という気遣い。
 

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※タンブル・クール・ランコムに合わせた消印

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※記念の消印を期日以降に送るための封筒



 
さて、前述の同僚達との会話の続き。
「そんなにハートの切手を探して、誰にお手紙を送りたいの〜?」と意味深に聞かれたので「ル・フェール=パート・ド・ネッサンスを送るため!(le faire-part de naissance)」というと「それとっても素敵!!!」と嬉しい反応。「ル・フェール=パート・ド・ネッサンス」とは、出産報告のカードのことで、私はフランスの文化だと感じている。
始まりは1781年、貴族で作家のゴーティエ・ド・ラ・パイロニー(Gauthier de la Payronie)が息子の誕生をカードで知らせたことがきっかけだった。
この慣習は、子供の出生を知らせる斬新な方法として、すぐに貴族たちの間で広まり、19世紀末には一般化し、あらゆる階層の家庭で行われるようになった。
最近では、専門業者に依頼して印刷する人が多く、結婚式の招待状も「ル・フェール=パート」と呼ばれる。
 

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※息子のル・フェール=パート・ド・ネッサンス

 
我が家も息子の誕生報告用にインターネットで注文したものが、2週間程度で素敵に出来上がってきた。
カード以外にも封筒や、封筒を閉じるシールも追加で注文と、こだわってしまった。
宛名も印刷にしたので、せっかくだから切手も素敵なものを、と探してみつけたのが、コレ! 「人生は美しい!(La vie est belle !)」という文字がシートに綴られた「タンブル・キュー・ランコム」は出産報告用の切手として完璧ではないだろうか。
自画自賛。
 

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※カードのもう片面は、娘と息子のツーショット



 
ついでに切手を貼る位置もキチンと調べ直した。
以前、日本の感覚で左上に切手を貼って郵便局の窓口に出したところ、注意されてしまったのだ。
細かい位置の規定をみつけたので、日本語に意訳してみた。
旅先のパリから日本へ、ちょっとお便りはいかが?
 

愛すべきフランス・デザイン「入手困難!? フランスで密かな人気のバレンタイン限定切手」

※laposte.fr「Guide pratique courrier」より意訳

自分流×帝京大学



Posted by ウエマツチヱ

ウエマツチヱ

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tchie uematsu
フランスで企業デザイナーとして働きながら、パリ生まれだけど純日本人の娘を子育て中。 本当は日本にいるんじゃないかと疑われるぐらい、日本のワイドショーネタをつかむのが速い。