JINSEI STORIES
家族だんらん日記「身体をあたためるフランスの冬の代表料理、タルティフレット」 Posted on 2023/12/17 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、息子の好物である「タルティフレット」を作った。
特別なレシピはない。フランスにおける、肉じゃがのようなものだ。
話すべきことを話したあとは、食うだけ、である。
寒くなってきた12月のフランスで、これほど(一般的に)人々に愛され、食されている料理はほかにないだろう。☜ 笑。あるけれど、言い切ってみた。そのくらいおすすめ。
「身体をあたためる料理」として、1980年代ごろから、もてはやされるようになったが、実際は17世紀の終わりごろにはすでにあった、らしい。笑。
実際、18世紀になってすぐに出版された料理本で、詳しく書かれている。かなり歴史のある、アルプス地方の郷土料理なのである。
材料はいたってシンプルなもので、玉ねぎ、ルブロションチーズ、じゃがいも、ベーコンだけ。(地域によっては白ワインを加えたり、カリフラワーを使用することもある)
父ちゃんの「タルティフレット」はもう何度かこの日記でもご紹介したと思うので、詳しいレシピは過去記事に譲るとして、要は、ジャガイモをゆで、玉ねぎとベーコンをフライパンで炒め、耐熱皿にまずじゃがいもを敷き詰め、そこに炒めた玉ねぎとベーコンを載せ、さらに薄くカットしたルブロションチーズをのせて、オーブンで仕上げるだけ、まァ、ある種のグラタンなのであーる。
※グラタン皿がでかすぎて、二人分だと、すかすかー。笑。このサイズをミルフィーユみたいに敷き詰めるなら6人分くらいはできるお皿であーる。そこで、そのかっこ悪さを隠すために、チーズで、カヴァーした!!! 正解。
ルブロション・チーズは日本だと一般的ではないが、フランスだと、とくに冬の時期は、まるい姿で、店頭に積み上げられている。それほど、売れるチーズ、というか、この料理のために、存在しているような、チーズ。
日本でこれをやる場合、代用として、カマンベールチーズでも、とくに問題はない。ブリーチーズでもやってる人がいるし、ま、でも、カマンベールかな。
二人用のタルティフレットを作りたかったが、小さなオーブン皿はノルマンディのアパルトマンに持っていったので、事務所サイズの大きなものしかなかった。
というのは、これは、パーティなど、数人で食べるのに適した料理なので、4人以上で食べる耐熱皿が実際にはちょうどいいのだ。
いくら大食いの息子でも、残すのはよくないので、大きな皿で少量つくり、小皿に、載せてだすことにした。
つまり、二人で食べるには、「タルティフレット」は適さない料理ということができる。
「タルティフレット、友達が来たら、よくやるんだ」
「そうなんだ」
「男4人だと、あっという間に、なくなるよ」
「そうだろうね」
「パパは最近、食べなくなったね」
「ま、もう、年だからね」
「でも、ライブもあるし、パワーつけなきゃ」
「スターだから、太れないからね」
「え?」
あはは
あはは
「ライブは?」
息子に聞いてみた。
「やるよ、1月のあたまに」
500人規模のライブハウスでやるのだという。あっという間に売り切れなのだそうだ。うらやましい。
「すごいね。見に行きたいな」
「・・・・」
返事なし。
あはは
あはは
ということで、今日は、ずいぶんと話が弾んだ2023年暮れの辻家であった。
来週、クリスマスイブには、二人と一匹でささやかなクリスマスパーティをやることになった。
「その日、オンラインライブがあるんだけれど、早く来ることがあれば、手伝ってくれよ」
「うん」
息子は、笑顔で、帰っていった。
帰りは自転車で、45分、かけて帰るとのことだった。
ひゃあ、若い!!!
※ オーブンにぶちこんで、表面がカリカリに焼けたら、もう完成だよーん。
※ これが、うまいんだ。フランスの家庭の味だ!!!
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
マジで、だんだん、昔の父ちゃんに似て、超かっこよくなってきた息子君なのです。親ばかですいません。三四郎もミニチュアダックスフント界では一番かわいいし、あはは。いろいろと世界情勢が最悪なので、息子の未来が心配ですが、できる範囲で、父ちゃんも頑張っていきたいと思います。