JINSEI STORIES
退屈日記「父ちゃんは今日、新生児用のおむつを買った。その子の父親ではないけれど」 Posted on 2023/12/16 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、おなかをすかせた息子が明日、やってくるというので、おいしいごはんを作ってあげようと思い、スーパーに買い物に行ったら、入り口で、ピンク色のベストを着た人たちが笑顔で、ご協力お願いします、とチラシを配っていた。
フランスでは、よくある、よく出会う、よく見かける、光景なのである。
いくつかの団体がやっているが、今日のは、コメディアンのコルッシュさんがはじめた「コレクト・ナショナール」という団体の方々であった。
コルッシュさんはこういう歌を作った。(ぼくの翻訳なので、意訳であーる。あしからず)
「今日、寒いとか、おなかがすいた、とその子たちに言わせちゃいけないんだ」
つまり、日本の「子供食堂」に似ているけれど、もうちょっと直截なシステムである。
ボランティアでこの運動に賛同した人たちが、ピンクのベストを着て、スーパーに買い物に来た人たちに、チラシを配る。
そこには今、必要な生活用品や食べ物が書かれている。それを、自分たちで探し、レジでお金を払い、ピンクの人たちに渡すか、それ専用のカートに直接入れるのである。
ぼくは、ちょっと時間があったから、チラシを見て、ああ、新生児のおむつが必要なんだな、と思って、まずはそのコーナーへと向かった。
生まれたばかりのころの息子にとって、おむつは必要不可欠なものだった。
今は20歳になろうかという青年にも、おむつの時代があった。
そういうことを思い出しながら、ぼくは、20枚入りのおむつパックを一つ手に取った。
photo Mr eric patin
つまり、募金をしなきゃ、とはみんな思うが、なかなか実行できない場合がある。
でも、スーパーで声をかけられ、リストを渡され、自主的に必要な商品を買うことなら、それほど難しくない。
この方法は、実にわかりやすい。
買った商品を、レジの外にあるカートに入れるのは、誰にだってできる。
新生児用のおむつならば1000円前後で買うことができる。ミルクとか、離乳食とか、そのチラシのリストに並んでいる。(おむつって結構高いのだ、と思い返すこともできた。そりゃあ、必要なものであろう)
さらにレジで順番を待っていると、ピンク色のベストを着た男の人が、必要なものがびっしりと詰まったカートを押してきて、
「すいません。こういうものを買ってもらえませんか? コレクト・ナショナルです」
と依頼しに来るのだ。
ぼくはすでにおむつを持っていたので、それを指さすと、ムッシュは親指を立てて、グッド、サンキュー、と言ったのだ、笑顔で。いいシステムだと思う。
コルッシュさんの団体だけではなく、いくつかの団体が、クリスマスの時期とかになると、スーパーと組んでやっている。
スーパーの人たちもとっても協力的なのである。
毎回、買うことになるのだけれど、でも、そのおむつやミルクは、お金ではなく、直接必要とされる人のもとへと届くのだから、安心できる。
知らない団体への募金だと、どこへ行き、どう使われるのか、わからないし、あとで、それで私腹を肥やしている人がいる、というニュースなんかを読んだりすると、がっかりすることもあるので、コルッシュさんらの取り組みに、心が温かくなった、12月なのでありました。
さて、息子のために、明日は料理をしよう!
※ このカート、おむつばっかりでした。笑。カートの前の写真の人が、コルッシュさんのようです。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
さて、ちょっと日々がつらい皆さん、父ちゃんが歌いますから、元気になってくださいませ。一時間に及ぶ貴重なライブ映像がこちらです!!!!
下のURLをクリックしてね。
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https://youtu.be/YIi9N-6kt5g?si=l3SPg4Wt-jpOqToS