JINSEI STORIES
滞仏日記「ところで父ちゃん、毎日、なに食べてるの? と三四郎は思っている」 Posted on 2023/12/12 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、キッチンで料理をしはじめると、どこからともなく三四郎がやって来て、ガスコンロとぼくとのあいだに陣取る。ここはぼくの場所だよ、という顔をしている。
「パパしゃん、今日は何を食べるの?」
三四郎はきっと、そう思っている。
今、扶桑社さんのESSEという雑誌で、「父ちゃん、毎日、何食べてるの?」という連載をやっている。
なんか、毎回、アンケート集計で上位にランクインするほど、三四郎人気がここでも爆発しているのだとか、あはは、嬉しいじゃないの~。
なので、人気キャラクターの三四郎だから、大事にしているのだけれど、コンロとパパしゃんのあいだに忍び込んでくるのは実に危険だ。やめなさい。
揚げ物などやっている時に、間違えて、踏んづけて、キャンキャンキャン、と大騒ぎになって、そのせいでバランス崩し、油をばらまいたりしたら、三四郎を大やけどさせかねないからであーる。
なので、料理をはじめると、同時に、ぼくは足元に三四郎がいる、ことをイメージするようになった。近ごろは、気配で、わかる!
匂いに誘われて、どこからともやってくるのであーる。ふんふんふん。
※こちらは、蛸とドライトマトのパスタ! 酸味がうまい!!!
事務所のキッチンに小さな丸いテーブルがあるので、ぼくはそこでだいたい食事をする。
事務所には大きなテーブルが二つもあるけれど、来客の時以外はあまりそこで食事をすることはない。広すぎて、寂しい。
今年の夏に、会計士さんから許可がおりたので、隣の建物に仕事部屋(20平米くらい)を借りることになった。遠くにエッフェル塔が見える。
ここでは小説やエッセイなどを書いている。通称「エッフェル部屋」
その部屋の上の階に、絵を描く部屋(20平米くらい)もある。ここからはモンマルトルの丘が見えるので、通称「モンマルトル部屋」。
絵は主に、ここと、事務所の仕事場とノルマンディのアトリエで描いている。
今は、個展が続くので、絵ばかり描いている。小説はまったく、動いていない。なぜか、絵の依頼ばかりで、小説の依頼が少ないのだ。もう、作家はオワコンなのだ。
そういう時は、やめとけばいい。いつか、閃き、突如、名作が生まれるはず。あはは。
いっぱい、部屋を持っている感じだけれど、ほぼ、寝るところ以外は、創作の場所。そして、一部が事務所となっている。
スタッフさんが事務所を使う場合(週一で会議がある)、ぼくは「エッフェル部屋」か「モンマルトル部屋」に逃げる。三四郎は、誰かがいれば寂しくないので、ぼくじゃなくてもいいので、助かる。
スタッフの高校生になるお嬢さんがいて、最近、アルバイトで三四郎の散歩などを手伝ってくれるようになった。マリーちゃん、という名前なのだ。かわいいね。
日本人のお母さん、フランス人のお父さんだから、日仏ハーフの可愛い娘さんだ。
ちょっとだけ日本語を話すので、助かる。
三四郎も、ジュリアに負けないくらい懐いている。あ、ここの家庭で三四郎を預かってもらったこともあったっけ。
フランス人のお父さんが、三四郎をものすごく気に入り、三四郎がやって来るという日になると、マリーちゃん以上に、そわそわして、それはそれは大変なのだとか・・・。笑。「サンシーは何を食べるかな、どうやって散歩に連れて行けばいいんだろう」と大騒ぎらしい・・・。わかるわかる。
三四郎なら、いつでも、預かるよ、と言ってくれている。本当に、三四郎は人気者なので、助かっている。ESSEも読んでみてね。三四郎が書いています。☜てへへ。
中島君こと、エリックが毎週、土曜日にこの事務所空間すべての部屋の掃除をやってくれる。エリックがいなければ、ぼくが大変になる・・・。
その中でも、唯一、くつろげるのが「キッチン」なのだ。
ここで、ぼくは自分のごはんを作って食べている。
時々、スタッフさんにまかないごはんを作って出す。それが食べたくて、当事務所に入った人もいる、らしい、あはは。
さて、いろいろなものをここで作っているのだけれど、今日は、ここ最近、作ったものを(一度、載せたものもありますが)一挙、掲載したいと思いまする。麺類が多いのは、ワンパンで作れるから、楽ちんだから。
ほい、御覧くださいませ。
※ ボ・ブン、ベトナムの料理です。ええと、お米の麺ともやしとひき肉のミョクナム炒めと、それから揚げ春巻きが入った、パリ定食の定番ですね。
※ビーフシチューのようなハヤシライス。
※辻家風蛸ライス。厚揚げを載せました!!!
※水餃子、もち、手作りです。3杯くらい食べちゃいます。
※バター・レモン味のサーモングリルー!!!
※辻家の定食~。鳥ごぼうごはん。あとは、野菜各種。下はお馴染みの辻家の焼き鳥。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ギターの練習をして、絵を描いて、エッセイをやっつけて、ごはんを作って、父ちゃんはもう若くないのに、大忙しなのです。来年も、スケジュールが秋までびっしり埋まっているので、身体を壊さないように頑張らないと、いつも、こんなロートル父ちゃんを応援してくれて、ありがとうございます。敵も多いんですが、味方も少なくないなァ、と最近思ってきました。もうちょっと人を信じるようにしたいです。
※パリの空の下で、好き勝手に生きているおやじ。明日は大丈夫か、なんとかなるだろう。人間ずっと転がる石ころなのである。ごろごろ~・・・。