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滞仏日記「朝8時に、血液検査ラボに行き、列に並んで、採血~、熱血~、父ちゃんの運命やいかに」 Posted on 2023/12/10 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、熱血~、ではない。採血~なのであーる!!!
おでこに暗いかげがある、と3人ほどの人に言われたので、主治医の先生に診て貰ったところ、血液検査だけはしておきましょう、となり、・・・今日は土曜日だったが、早起きをして、大雨の中、朝の8時に血液検査場まで行ったのであった。
腎臓とか、肝臓とか、甲状腺のがんとか、いろいろとわかるみたいなので、メニエール病の疑いもあるし、貧血で倒れたりするし、ぜったい何か悪いことには自信のある、父ちゃん、えへへ、正直、超不安であった。
8時ちょうどに到着したが、なんと5番目であった。
でも、久しぶりの血液検査になるので、前の人の受けごたえを聞いて、予行練習ができるので、5番目は正解であった。
どういうシステムか思い出せず、ラボの待合室でしばらく立って待っていたが、目の前に番号札を出す機械があった。
近くに座るおじさまに、これをするのですか、と指さしたら、ういー、と教えてくれた。4っつくらいクリックするところがあって、悩んでいたら、おじさんが、一番上だよ、とわざわざ立って、指さし点検をしてくれた。優しい人で良かった。
番号札は、5番、であった。ラッキーナンバーである。(勝手にそう決める人)
前の人たちの会話を、耳をすませて、聞き、参考にした。
「昨夜は何時に食事をしましたか?」
「保険は、プライベートの保険にも入ってますか?」
だいたい、大事なことはその2点のようであった。
ぼくの番になり、同じことをやはり聞かれたので、
「昨夜は8時に食事をし、今朝は食べていません。保険は国のにしか入ってないです」
住所と電話番号とメールアドレスを聞かれ、22ユーロを支払った。
フランスでは、まず、ジェネラルの医師に症状などを相談し、先生が必要とするデータを、とりに、そのあと各ラボに行かないとならない。レントゲンとか、採血とか。その結果を主治医に戻すシステムなのである。
ぼくは10項目くらいの検査を受けることになった。
「ムッシュ、ひとなーりー」
待つこと15分、ついに、呼ばれてしまった。どきどき。

滞仏日記「朝8時に、血液検査ラボに行き、列に並んで、採血~、熱血~、父ちゃんの運命やいかに」

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ぼくを呼んだ若い看護師(?)さんは、何かおどおどしており、受付の人が、
「それじゃないわ、そっちの用紙よ」
といちいち指図をしていた。えええ、まさか、学生さん?
個室に案内され、椅子に座らせられた。
若い看護師さん、まだ、うちの息子くらいの年齢なのである、は、一度、出ていき、それから、もう一度出て行って、そそくさと戻ってきた。
なんか、忘れ物があったようだ。大丈夫かなァ、この子。
「あの、ぼく、久しぶりなので、記念に、撮影してもいいですか?」
「あ、ええ、いいわ。あなたが私のはじめての人だから、お互い記念になりますね」
と言った。
最初、言った意味がわからず、笑ってごかました父ちゃん。
看護師さんの注射針を扱う手がなんとなくぎこちないので、彼女の言ったフランス語を頭の中で、復唱してみた。
ぎょええええ、今日がはじめてって、つまり、社会に出てプロとしてはじめての採血? みたいなことかな?
「今日がはじめてなの?」
なんとなく、確認をしてみた。
「そう、ここに就職して、あなたが最初の人。でも、ちゃんと(学校で)やってきたから、大丈夫」
ぼくはカメラを自分の腕に向けていたが、怖くて見ることができなくなった。
今時の採血って、経験あります? 
なんか注射針のついた円筒形のものを最初に、腕に刺し、注射器の血液が入る少し小型の円筒容器をそこに入れると、血が自動的にその中に入る仕組みなのであーる。
それを4本も採血したのだった。4本!!!!
でも、彼女、優秀、というか、注射って、時々、失敗する看護師さんがいるけれど、見事に真ん中に刺さったし、痛くなかった。
なのに、刺す瞬間、
「ごめんなさい、痛いですよね」
と優しい声で言うのだった。いい子だ。
「全然、痛くないし、あなたのはじめての患者でよかった」
と返した、父ちゃんであった。

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心細かったけれど、なんとなく、この子が応援してくれているような気がした。
それから、近くのカフェに行き、普段は食べないけれど、採血をしたので、おなかに栄養のあるものを入れたくて、モーニングセットを注文したのだった。
「ムッシュ、どうしたの? こんなに朝早く。しかも、三四郎がいない」
と顔なじみの女性の給仕さんに言われたのだった。
「なんか、病の疑いがもたれて、そこで採血したのさ。さんちゃんはお留守番ってか、まだ寝てると思います」
「ええ、それは、なんか憂鬱ですね、結果出るまで」
「うん、いっぱい血を抜いたから、オレンジジュースのみたくて」
「山盛りで、もってきますね」
ということで、朝ごはんを久しぶりに食べ、それから昼には、肉だと思い、ビーフストロガノフとビーフシチューの中間みたいなものを作って、食べた、父ちゃんであった。

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※普通はバゲットかクロワッサンのどっちかなのに、二つくれた! どうでもいいか・・。あはは。

滞仏日記「朝8時に、血液検査ラボに行き、列に並んで、採血~、熱血~、父ちゃんの運命やいかに」



採血した分の血のエネルギーを取り戻さないとならない、と思ったんだもの~。
で、夕方、絵を描いていると、ネットに検査結果が届いたのである。ひゃああ。
すぐに近藤先生に、診てもらったのであった。
こまかいことは言えないけれど、結果は良好とのことだった。肩の力が抜けた~。
腎機能、肝機能共に正常なのだそうだ。糖尿病もなく、赤血球、白血球、血小板も、問題なし。 身体に炎症反応も無いし、甲状腺、前立腺も、大丈夫。強いて言えば、総コレステロールと悪玉コレステロールLDLが、やや高めなのだとか・・・、つまり、動物性脂肪を摂りすぎないように というアドバイスをいただいたのであーる。肉を控えよう。
「心配はありません」 Dr 近藤 ~!!!!
太鼓判いただきました~!
じゃあ、みんなが騒いだ、あの額の青いかげはなんだったのであろう・・・。ま、いいか。
あはは。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
でも、こういう機会がないかぎり、血液検査などできないし、結果的には、よかったかもしれないですね。人間ドックはさすがに日本で受ける方が、言葉の問題もあり、安全なんですね。海外在住者が日本に戻るのは、人間ドッグを受ける理由がだんとつに多いのです。何せ、至れり尽くせりの検査ですから、日本が一番。でも、血液検査で、だいたいのことがわかり、超安心をした父ちゃんなのでありました。腎臓、肝臓の数値を見て、お酒がおいしくなりそうで、怖い、今、この瞬間なのでーす。今日は、飲むぞ~。
めるしー。

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