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パリ最新情報「2023年世界最優秀パティシエ、フランス人女性が選ばれる。女性初の快挙!」 Posted on 2023/11/07 Design Stories
10月25日、国際パン職人・パティシエ連合(International Union of Bakers and Pastry Chefs)から、 フランス人女性のニナ・メタイエさんに「世界最優秀パティシエ」の称号が授与された。
女性パティシエ(以下、パティシエール)がこの賞を獲得するのは、1931年に創設された同連合において初めてのことだったという。
そのためフランスでは、「パティスリー界およびガストロノミー界全般における女性シェフの認知に向けた大きな一歩となった」として、今回のニュースが大きく報道された。
※ニナ・メタイエさん
2023年世界最優秀パティシエに輝いたニナ・メタイエさんは、30代のパティシエールで二児の母でもある。
パリではすでに注目を集めており、2016年から2018年にかけては『ル・シェフ』誌、『ゴー&ミヨ』誌、『GQ』誌のパティシエ・オブ・ザ・イヤーに選ばれていた。
受賞後、仏通信社のインタビューにて、ニナ・メタイエさんは「キャリアを通して、女性だったら家庭も持てないし、パティシエールにもなれないと何度も言われてきました」と語った。
理由はこうだった。
毎朝4時から始まる仕事、母の日やクリスマスなど本来なら家族で一緒に過ごす時間も常に仕事、一部で残る保守的な考え、経営者の理解不足・・・etc。
しかしメタイエさんはそれを「反骨精神」ではなく「感謝」のエネルギーに変え、発想の転換を図ったのだという。
パンデミック中の2020年には自らのパティスリーを出店するが、その内容はサイト注文のみのオンライン・ブティックだった。
店舗なし・受注販売だけというスタイルは、食品廃棄ゼロを目標としている。
果物の皮や種はシロップなどに再利用し、包装はもちろんプラスチックフリーだ。
※現在はデパートのプランタンにティーサロンを開設。
彼女のパティスリー「Délicatisserie(デリカティスリー)」では、タルト・オ・ショコラ(写真右奥)や、白バラをモチーフにしたバニラケーキが人気なのだそうだ。
また近年では、芸術的で繊細なクリスマスケーキ、ガレットデロワ(毎年1月に食べるフランスの伝統菓子)を作るパティシエールとしても知られている。
さらにスイーツのデザインには3Dデータを活用するなど、メタイエさんはパティスリーの新たな在り方を提示する。
なおオンライン・ブティックでは、商品はパリ近郊にあるアトリエでの引き取りのほか、配達やパリ市内のいくつかのレストランやホテルでのピックアップも可能だという。
このようにバーチャル・ブティック、世界一の女性パティシエールと、フランスのパティスリー界では今、新しい風が吹き始めている。(内)