某月某日、いろいろとあって、ノルマンディに三四郎と一緒にまたしても旅立ったのだが、なんと、そのタイミングで、小台風（なんと名前がキアラン）がフランス各地で吹き荒れた。
しかも、キアランの上陸地点が、ノルマンディなのであった。
運転していると、どんどん、風速が増して来るし、雨が叩きつけてくるので、おかしいな、と思って、ラジオを付けると、キャスターが興奮して、
「大変な台風がフランス北西部に上陸しました、皆さん、気を付けて」
と叫んでいるではないか！！！
「電車はとまっています。キアランが大暴れして、各地が停電です！」
そんな日に、何も、ノルマンディに行かなくてもいいじゃないか、と読者の皆さん、思うかもしれないが、一つの前の日記で、行動を起こす、と約束したじゃああーりませんか。
というか、まさか、台風が来ているとは、その時点で気が付かなかったのであーる。今、凄いニュースになっている・・・。ううう。
最大風速２００キロ、なのだそうだ。聞き間違いだったら、ごめんなさい。最大風速２００キロって、どんな？
しかし、トラックが飛ばされ、樹木に激突したというし、ブルターニュでは木が倒れて、下敷きになり、死者も出ている。
そんな恐ろしい嵐の中、自慢の英国車でノルマンディを目指した父ちゃんなのだったぁ。
ところが、ここで大変なことが起きたのだ。
車は順調に前進をしていたのだが、急に、お腹が痛くなったのである。え？
父ちゃん、実は、昔から、おなかが弱いのであーる。
それで、トイレ休憩をすることになり、サービスエリアに車を乗りつけた。
「さんちゃん、ちょっと待ってて、パパしゃん、すぐ戻るから」
暴風雨の中、サービスエリアの建物の中に飛び込み、男性用トイレに駆け込み、空いていた個室に入って、やった、セーフ、と思って、扉を閉めて、振り返ったら！
「ベンザエース！」

おお、そうだった。
フランスのトイレは、便座がないのだ。
ベンザエースじゃなく、ベンザネーッスじゃんか！
これは、汚い話ではなく、素朴にいつも不思議に思っていたのだが、フランスは男性用女性用ともに公衆のトイレには、便座が、基本ない。
息子が通っていた小学校で、最初にそれを目撃し、大ショックを受けたことがあった。
小学生の子供とか、どうやって、トイレをしているのか、ある時、そのことを先生に訊いたら、座ってると思うな、という意見だった。ええええ！　
そんなこと、うちの息子はどうしているのか、訊いたことがあった。
「パパ、ぼくは日本人だから、学校のトイレではできない」
という返事で、安心をしたことを思い出したが、している子もいる・・・。
でも、そういう文化の違いをとやかく言うのは失礼だし、出来る限り、この２０年、見ないようにしてきた父ちゃんであった。（もちろん、普通の家のトイレには便座があるし、企業とかカフェとかのトイレには、便座が付いている。たぶん）
でも、高速のサービスエリアのトイレにはない。
で、どうやって、やるのか、渡仏間もない頃に、フランス人に訊いたことがあった。
腰を浮かして、逆Ｌ字型になってする、のだといわれ、想像できず、無理だ、と思った。
ぼくには出来ない。
なぜなら、父ちゃんは、なにごともじっくり構えて、ゆっくりと行動する性質（タチ）なのであーる。
ま、それはどうでもいいのだが、お腹が痛かったが、我慢することにして、さんちゃんの待つ愛車へと戻ったのだった。
「さんちゃん、パパしゃん、お腹痛いよー」

しかし、泣き言は言えないので、再びハンドルを握りしめた。
途中、何台もの車が路肩に乗り上げていたが、そういう事故車を横目に、なんとか、辻車は無事ノルマンディに到着したのだった。ふー。
自分の家に着いたら、安心したからか、お腹が痛いのも治っていた。あはは。
そういうものですね。
前回の台風で、うちの屋根が飛んで、壁に大きな罅が入ったのだが、その罅がまだ直る前に、ノルマンディにまたしても、台風がやってきた。
幸いなことに、うちのアパルトマン、軽度の水漏れはあったが、窓ガラスも割れず、たいした被害はなかったのだった。よかった、よかった。
さんちゃんは、今、ぼくの足元で、じっと風の音に耳を傾けている。ひゅーひゅーと激しい音がそんなぼくらを包み込んでいるのであったぁ。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
いやぁ、いろいろと焦りますね、ドジな父ちゃんなので、ひたむきにがんばりますから、応援してください。
さて、「パリごはん」再放送のお知らせです！
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「ボンジュール！辻仁成のパリごはん2023SP」
【BSP/4K】11月11日（土）後10:30~11:59
※初回放送 2023年9月16日
※BSP・4K同時
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