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パリ最新情報「フランス語にも男女平等の動きが広がる。しかし、マクロン大統領がNO! 」 Posted on 2023/11/02 Design Stories  

ヨーロッパ言語の特徴として、名詞のほとんどが男性名詞か女性名詞(および中性)に分かれる、というものがある。
フランス語も、そのうちの一つだ。
名詞が男性、女性、と分かれているので、それにまた男性形と女性形の冠詞をつけなければならないなど、文を構成するルールは日本語と大きく異なる。

パリ最新情報「フランス語にも男女平等の動きが広がる。しかし、マクロン大統領がNO! 」



フランス人はこうした男性形/女性形を、文章であれ口語表現であれ日常的に使用しているわけだが、近年では「時代の流れに合わせてジェンダーレスな仏語を」という風潮が生まれ、フランス国内で議論の対象となっている。

新しい風潮は、「インクルーシブ・ライティング(l’écriture inclusive、包括書法)」と呼ばれる。
これはジェンダーフリーや多様性に配慮したもので、仏語における男女不平等を減らすために考案されたライティング・ルールのことである。
使用の義務はないが、より中性的な言葉を用いることにより、言語における男性性の優位をなくそうとする目的がある。



※フランス語では、「中性」を示すときでも男性形が使用されることが多い。
例えば、「有権者」は「l’électeur(男性形)」。
しかし有権者に男女が混ざっていて複数形となる場合は、「les électeur.rice.s」とし、単語のあいだを点で区切らなければならない、というのがインクルーシブ・ライティングだ。
これらは口語表現も含め「インクルーシブ・ランゲージ(langage inclusif、包括言語)」とも呼ばれる。

パリ最新情報「フランス語にも男女平等の動きが広がる。しかし、マクロン大統領がNO! 」



フランスのマクロン大統領は10月30日、こうしたインクルーシブ・ライティングに反対する意向を示した。
大統領は「時代の空気に流されない」と述べた上で、「フランス語では、男性名詞は中性名詞である。読みやすくするために、単語の真ん中に点を入れたり、ハイフンを入れたりする必要はない」と強調し、伝統的なフランス語の維持を「支持する」とした。

フランスでは同日、インクルーシブ・ライティングを禁止する法案が右派議員によって提出され、上院議会により可決された。
もしこれが法律となり実際に施行されるとなれば、禁止対象となる文書は使用説明書、雇用契約書、社内規定など多岐にわたるという。



インクルーシブ・ライティングについては一般のフランス人のあいだでも賛否両論、どちらの意見もある。
しかしながらその使用によって最も影響を受けるのは、障がい、非識字、失読症を持つ人々であるという。
反対派の中には、そうした事情を問題視する人もいれば、「フランス語の美しさが失われる」と嫌がる人がいるなど、さまざまだ。

このように近年のフランスでは、「フランス語の存続の危機」についての論争が、徐々に大きくなっている。
仏語に誇りを持つフランスならではの議論とも言えるが、ジェンダーニュートラルの波は今のフランスにおいて、あらゆる方面から押し寄せている。
しかしインクルーシブ・ライティングについては今回、マクロン大統領によって一掃されることとなった。(大)

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