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パリ最新情報「フランス、レストランに“自家製でない”料理の表示を義務付ける」 Posted on 2023/10/26 Design Stories
フランスでは、2025年までに、すべてのレストランが「自家製でない料理」をメニューに表示しなければならなくなった。
この措置は10月22日、オリビア・グレゴワール中小企業大臣によって発表された。
理由としては、「優れたレストラン経営者の地位を高め、消費者を保護し、フランスの美食を守るため」だと同大臣は述べている。
つまりフランスでは、冷凍食材や真空パック、缶詰などを使って調理された料理がメニューにはっきりと表示されるようになるのだが、これに似た措置は2014年から始まっていた。
フランスで2014年に作られた「fait maison(自家製)」システムは、鍋と屋根をデザインしたロゴマークをレストランの窓に掲示するというもの。
これにより、すべての料理が手作りであるかどうかが分かるというシステムだった。
しかしロゴマークの導入は、「自家製」の正確な定義をめぐって、業界内で長い議論の対象となっていた。
(調理済みの食材でもパン、パスタ、チーズ、ワインなどは「自家製」の料理に使用して構わないなど複雑だった)
またレストラン側の任意ということもあって、一般の認知度も低いままだった。
今回、さらに踏み込むことになった背景には、ユネスコ無形文化遺産であるフランス料理の質を向上させることと、フランスの農業の活性化、そして24年のパリ五輪が関係している。
フランスでは、国内に17万5000軒あるレストランのうち、すべて厨房で作られた料理を提供しているところはわずか7000軒しかない。
※そのうちの3000軒は、新鮮な生の食材を使った料理を保証する「マスター・レストランター」の称号を得ている。
これについてグレゴワール大臣は、「レストランの料理が自家製ではないことをお客様に知っていただくことは重要です。だからといって食べないということではありません。より明確になります。特にオリンピックのある来年や、観光客に人気のある都市ではそうでしょう。観光客や一般客にとって、自分が何を食べようとしているのか、そしてそれが自家製なのかを知ることは重要なことです。一方レストラン経営者は、マスター・レストランターの称号を得るために努力するようになるでしょう」と述べた。
具体的なメニューの表示方法についてはこれから審議されるとのことだが、この「自家製」ルールはレストラン経営者を二分するだろう、とも言われている。
手作りであれば調理にも調達にも時間がかかるため、値段は高くなる。
たとえばパリのレストランで出される「鴨のコンフィ」は、アラカルトメニューで19ユーロのところもあれば、12ユーロや13ユーロで提供されているところもある。
今回の決定を巡っては、元より自家製を続けていたレストランオーナーたちから「メニューに缶詰や冷凍食品であることを明記することで、その店の低価格制度を正当化できる」と賛成の声が上がっているようだ。
ただ、オーナーらは低価格に惹かれる客がいることも十分に理解しているという。
なおグレゴワール大臣は今回、たとえファストフード店であっても、すべての飲食店に適用されるべきだと思う、と発言している。(大)