JINSEI STORIES
滞仏日記「暇だったので、初個展のなんちゃってポスター一号、作ってみた」 Posted on 2023/10/18 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、世界はますます混とんとしてきた。
イスラエルから退避する韓国軍の軍用機に空席があるので日本人51人がソウルまでタダでのせて頂いた、といういい話のあとで、日本政府は民間人をドバイまで3万円で送った、というのがLineで流れていて、そんなバカなことがあるか、適当なフェイクニュースだしやがって、と怒りながら、調べたら、ほんとうだった。
思わず、膝をついて、肩を落として、気力を失ってしまった、日本の父ちゃんなのであーる。
日本政府が国民を助けるのは当たり前で、韓国政府が無料でソウルまで救出してくれたのに、ドバイまで3万円というのは、さすがに、・・・ショックだった。
国民として涙が出そうになった。
これに対して、海外に行くやつが悪い、という意見も見受けられたが、よく考えてほしい。この時期にテルアビブなどにいるのは結婚をされた人か、企業戦士であろう。
日本が先進国として世界で重要な位置を得て活躍出来ているのは企業の方々、外交官の方々、様々な方々(ぼくを除く)が世界と日本のあいだを繋ぐ重要なパイプ役になってこそだ。
トヨタも日産も三菱もキリンもあらゆる企業が国内だけで完結しているようじゃ、日本は終わりだ。世界に出て外貨を稼いでくれる企業はありがたい、そうじゃなくても、旅行でも、結婚でも、海外に日本人が出るのは当たり前のこと。
国民を救出するのは政府の仕事であり(昔、小学校でそう教えられて育った)、もちろん、お金を払わないとならない理由があるのだろうけれど、韓国軍が51人もの日本人を人道的にソウルまで送ってくれたことと、3万円の輸送代、つい、比較してしまい、ううう、情けない、と思ったのは、父ちゃんだけだろうか。
申し訳ないが、そういう日本であってほしくない。
ぼくは海外が長いので、海外で生きていると大使館のありがたみを誰よりもひしひしと感じているので、文句は絶対言いたくないし、マジで、助けられて来たので、不満はない。
でも、今回のような、非常に危険な状態にある自国民を助けに行って、3万円、という、この3万、という数字ですけど、なんで、5万じゃないのだ! なんで1万円じゃなくて、3万なのか、ドバイまでの燃料費なのかなぁ・・・。わからん。
政府は諸外国に大金をばらまいていて、これも理由があるのだろうけれど、ばらまけば世界が靡いていた時代はもうとっくに終わったし、円はそこまでもう力がないのだし、岸田首相が今日、スーパーで、物価が高いのがやっとわかった、と今更の発言をされていたけれど、海外で生きているぼくからすると、円が半端なく、落ち込んでいるのが辛いのであーる。そりゃあ、物価があがりますよ。
しかも、もっと、今後、円が下がると言われていて、日本人が、もう世界に出たくても出られない時代が来るかもしれない。
今、パリを歩いているのは中国の方か、韓国の方ばっかりで、日本の観光客は、前に比べ、ほぼほぼ見かけなくなった。
オペラ地区が日本人街と言われていたのは20年前、今ではアジア街になっている。
ああ、何が言いたのか、わからなくなった・・・。
とにかく、父ちゃんは日本を応援しているのだ。
ということで、三四郎を散歩に連れて行くと、柴犬がいた。
「さんちゃん、あの子は日本の出なんだぞ」
と教えてあげた。涙が出そうになった。
そのあと、生まれて5か月目になったばかりのミニチュアダックスフントのウイニーくんがやってきて、三四郎と遊んだ。
すっかり、お兄ちゃん面しているさんちゃんであった。
家に戻り、ちょっとワイン関係のZOOM会議があって、そのあと、元気を出すために、来年2月28日からはじまる初個展のイメージポスターを作ることにした。
自分の中のもやもやを鎮めるために。
もちろん、公式のポスターではない。伊勢丹アートギャラリーから言われて作ったわけじゃなく、勝手に作っちゃったのだ。あはは。
今、描いている「時の砂漠」という作品、大きな絵(130センチ×97センチ)なのだけれど、その一部を切り取り、文字を入れてみたら、おお、個展感、出てる~。
ぼくのあぶら絵は、全部、物語があって、千夜一夜物語のような、全体で一つの長大な物語を構成しているのである。(詳しくは個展会場で)
とまれ、この仮ポスターから個展がイメージできるであろうか?
一仕事したら、お腹が空いたので、ポスターを伊勢丹さんなど、関係者に送付した後、キッチンで、昼飯を作った。
今日は、冷蔵庫の野菜室の中で順番を待っている野菜たちを救出することにした。春菊、ネギ、玉ねぎ、キャベツ、ポワロー、ニラ、などを全部つかって、おっと、豚の三枚肉も残っていたので、お好み焼き風のオイル野菜焼きそば、にした。
サラダ油と醤油とマヨネーズを使うので、お好み焼き風の味になる。
美味かった。
個展の成功を夢見ながら、三四郎とソファで小一時間昼寝をした父ちゃんであった。
さんちゃんが夢の中で、ウイニーくんと追いかけっこをしているようだった。
さんちゃんの前脚が宙を蹴っていた。かわいい。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
さて、ロンドン公演が来週、月曜日に迫ってきました。ユーロスターでロンドンを目指します。えいえいおー。
10月23日のロンドンライブですが、ソールドアウトしました。皆さん、ありがとう!!!
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