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パリ最新情報「フランスの学校で制服が復活? 巻き起こる議論とメリット・デメリット」 Posted on 2023/10/03 Design Stories
新学期が始まった9月、フランスのマクロン大統領はユーチューブ番組で行われたインタビューの中で、学校における「制服復活」を示唆した。
フランスのガブリエル・アタル教育大臣もまた、学校での制服着用に「実験的な試みが必要だ」と発言。
同大臣は秋以降の制服の実験的導入を、一部の学校で実施する計画を表明している。
フランスでは現在、特定の職業訓練校、陸軍士官学校、レジオン・ドヌール勲章を授与された教育機関、および海外県では制服の着用が義務付けられているが、フランス本土の私立・公立学校ではその義務がない。
こうした制服の着用問題については、2017年から議論が始まっていた。
これは当時の教育大臣、ジャン=ミシェル・ブランケール氏が「希望する地域での制服の導入を」と言及したことがきっかけだった。
しかし制服導入については、当時も今も「全国的に義務」とするものではない。
制服着用はあくまでも希望する地域・学校にのみ適用されるといい、その決定は学校関係者や保護者に委ねられるということだ。
実際、フランスでは制服はほとんど着用されず、1802年から1914年まで、そして戦中から1960年代後半まで、一部の私立校生だけが着用していたという歴史がある。
しかしながら制服の着用義務は、コストの問題、そして1968年の学生運動で「自由を奪う」と掲げられたことを理由に廃止となっていた。
ところがここ数年では、制服が「いじめを和らげる」「格差社会をなくす」効果があるとして、復活を望む声が高まってきている。
つまり近年のフランスでは、子どもの服装の違いから生まれる反感などを和らげる方策として、制服の導入を求める声が多くなっているのだ。
事実、賛成派のフランス人は多い。
議論が始まった2017年の調査(IFOP-2017世論調査)では、63%が「制服の復活」に賛成だと答えている。
それも、私服では明らかになってしまう子どもたち(および親)の格差問題が、制服によって軽減されるという理由によるものだ。
一方で、制服を復活させなくても、Tシャツとジーンズで統一すればよいのでは? といった声もある。
マクロン大統領もインタビュー内でその可能性を匂わせていたが、パリ18区にある私立高校(Charles-de-Foucauld)では9月、実際にスカートやワンピースの着用を禁止し、ズボンとTシャツという “全員一律の服装 “を求め、ニュースになった。
同校の校長によれば、「生徒の私服にまつわる議論が多すぎたので、全員服装を統一することにしました。私たちは皆にとって一番簡単だと思われる、ズボンとTシャツを選びました」とのこと。
しかし、中には「学校では男子よりも束縛されているように感じました」と話す女子生徒もおり、多様性が奪われると新たな議論を巻き起こしたようだ。(一方男子は、サッカーのユニフォームを着ることだけ許されなかった)
服装統一に賛成だったのは、むしろ保護者たちだったという。一部では「厳しい規則を課すのであれば、とことんやったほうがいい」「性ハラスメントの防止にもなる」などと声が上がっていた。
フランス全土の学校で制服が義務化されることは、今の段階では現実的ではない。
今後しばらくは教育大臣の言う「実験的な試み」が行われるはずだが、多様性、個人主義、格差社会・・・と、制服問題にはフランスならではの社会問題が重なる。(内)