THE INTERVIEWS
ザ・インタビュー「祝!ブルターニュ、全国ガレットコンクールで日本人が準優勝」 Posted on 2023/09/30 Design Stories
9月24日(日)、ブルターニュ地方、ピプリアックで第28回全国ガレットコンクールが開催された。
ガレットとは、ブルターニュ地方発祥のそば粉生地で作られるクレープで、こちらがもととなり、のちに小麦粉生地で作る「クレープ」ができたそうだ。
そば粉、水、塩などを混ぜて寝かせた生地を薄い円形状に伸ばし、丸い形に焼き上げ、ハムやチーズなどの具をのせていただく。同じくブルターニュ名物のシードルと合わせるのが定番だ。
今年2月末から3月に行われた国際農業見本市では、フランス人が一番好きな郷土料理というアンケートで「ガレット・コンプレ」が1位に輝いた。ガレット・コンプレは、ハムとチーズ、卵が入ったガレットで、ガレットの定番中の定番メニューで、大人も子供も大好きなのだ。
— Le Télégramme (@LeTelegramme) March 7, 2023
その「ガレット」を競うコンクールは、参加者がその場で6つのプレーンガレットを作るのだそうだ。与えられた時間は15分。審査員は、見た目(第一印象)、均一性、厚さ、焼き加減、香り、味を審査する。
実は、このコンクールへの参加資格には「フランスでお店を出している人」という項目があったそうなのだが、今回、日本から、兵庫県丹波篠山市にSAKURAIというお店をもつ、櫻井 龍弥さんが、この大会に参加することが許された!
DS 外国人が参加するケースははじめてなのでしょうか?
櫻井龍弥さん(以下、敬称略) 5年前に、同じく日本人が1人出場しております。同じ兵庫県の方です。僕はフランス在住の友人が協会と交渉してくれ、今回の参加が認められました。
DS なぜ、日本でガレットのお店を始められたのですか?
櫻井 初めてガレットを食べた時の美味しさが忘れられませんでした。シンプルな料理だけど、実はかなり奥が深い事を知り、その魅力に取り憑かれたのがきっかけです。日本では、関東には沢山のガレット店があるのですが、関西方面にはまだまだ数も少なく、もっとたくさんの方にガレットの美味しさを知って頂きたいという気持ちからはじめました。関西圏の主要な各都市から車で約1時間の場所に出店したのも、その為の立地選びでもありました。農産物も豊富な土地で、腕利きの猟師のお陰で質の高いジビエなども手に入りやすく、また、器の産地でもあるため食に携る私には最高の場所でもあります。
DS このガレット大会の存在はいつから知っていたのですか?
櫻井 丹波篠山市にお店を出して3年目ですが、約3年ほど前から知っておりました。
DS ガレット大会にでられると決まって、どんな気持ちでしたか?
櫻井 2年前、友人との忘年会で宣言してから、初年度は箸にも棒にもかからずでしたので・・・、大変嬉しかったです。ただ、やはり、やるからには「必ず優勝したい!」という気持ちが強かったです。何か結果を残さなければ、日本人にガレットを知ってもらう一助にはなれない、との思いもあり、勝ちに行く為の試行錯誤をかなりしました。もちろん、水も気温も湿度も空気も日本と全く違うので、発酵させる工程もいつものままで挑めるとは思っておりませんでした。
DS それはすごい。かなりの決心ですね。
櫻井 友人の大阪、東三国(ひがしみくに)にある「蕎麦屋 甚九郎」さんに無理を言って、蕎麦の引き目や品種の選定などに協力して頂きながら、ギリギリまで悩みに悩んでいたのですが、出国の2週間前に私が肺炎で呼吸困難をおこし、救急車で運ばれてしまいました。そこでもう『もがくのはやめよう』『全ては流れの中で最善を尽くすのみ』とやっと思えました。きっと、あのアクシデントがなければ準優勝はなかったかも、と思っております。
DS 大会に備えてのエピソードはありますか?
櫻井 大会前日に試し焼をさせて頂くのですが、鉄板は1枚1枚、指紋のようにクセも違う。先ずはそこの把握、そして生地の良し悪しをみるために、持ち込んだ3種類の生地からベストのブレンドに仕上げる為にひたすら焼きました。だけど、これがことごとく上手く行かず・・・正直、とても焦りました。
DS それはドキドキしますね。
櫻井 宿に戻ってから『流れの中で最善を尽くすのみ』を実践する為に日本で考えていた事を一度全てフラットにし、これまでの経験上から感じる今のベストの配合を作り出し、備えました。正直、どちらに振れるか不安はありましたが・・・。
DS 大会当日の様子を聞かせて下さい。
櫻井 日本から同行の友人達がリラックスムードを作ってくれたことを大変感謝しております。会場の人の多さは想像以上だったのでびっくりしました。
DS そしていよいよ、本番ですね。
櫻井 15分の時間内で焼き続けてベストの6枚を選ぶという、とてもシンプルながらシビアな内容でしたが、前日の配合がドンピシャハマったかなと焼き終えた時に感じました。最善は尽くせたと思えた瞬間でした。
DS 素晴らしい!そして、結果はなんと、準優勝!準優勝と知った時のお気持ちは?
櫻井 そうですね、結果発表の前に今回の大会はかなりの僅差の接戦でした。とアナウンスされた時、ダメかもな・・という思いが少し頭をよぎりました(笑)『2位!Ryuya Sakurai. JAPON』と言われた時、驚きと今までの事が走馬灯の様にめぐるというのを、初めて経験しました。会場も、まさか!!という、どよめきと歓声があったのですが、自分自身は、数秒間、なんだか遠くで聞こえる不思議な不思議な世界に引き込まれていました。
DS 受賞のステージに上がられた時は?
櫻井 ステージ上にいる時には、「あっ!!!!もう少しで優勝出来たのにーっ」という悔しさも生まれていました。欲深いですね(笑)
※これが、ガレットの審査!! おどろきの香りチェック中・・・。
DS これからの意気込みを教えて下さい。
櫻井 ガレット協会の会長にも『次は優勝狙いに来たら?』と言われたので、又どこかで行こうかな?と思ったりもしています。しかし、1番は日本でもっともっとガレットの素晴らしさを知ってもらいたいですね。今回の僕の受賞で、1人でもガレットを食べてみたいと思ってくれる方が増えてくれる事が望みです。そして、いつか、フランスで小さなガレット屋さんを営んでみたいかな・・・。
DS フランス人向けのコンクールで、フランス人を押しのけての準優勝!!本当におめでとうございました!!まずは、フランス人が太鼓判を押した、櫻井さんのガレットをより多くの日本人に食べてもらいたいですね。そして、いつか優勝、取りに来て下さい!応援しています。
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