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退屈日記「いよいよ明日、“パリごはん”SP放映!父ちゃんが語る見所&撮影秘話」 Posted on 2023/09/15 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ついに、明日、16日、「ボンジュール、辻仁成のパリごはんSP」(90分)が放送されるのだ。この作品でなんと七回目になる。そして、最終回なのだ。
三回目のロックダウンの時から撮影を開始し、一回のつもりで放映をしたところ、なんだか、反響があって、七回まで続いてしまったという奇妙な現象・・・。
第一回目はコロナの時期で、日本からスタッフさんが誰も来ることが出来ないというので苦肉の策で、「ほぼほぼ自撮り番組」となった。
しかし、どうもこの自撮りが受けたのか、その後もほぼほぼ自撮りが続けられ、第七回を迎えることとなった。(もっとも、今回は、オランピア劇場でのライブシーン場面でカメラが10台も入っている!)
第一回目は、コロナが収束しつつあると言われながらも、まだロックダウン中だったため、撮影は最初から難航した。機材も買わないとならなかったし、ぼくはコロナを怖がっていたし、何もかも、手探りの連続であった。
まだ息子は高校生で、コロナ蔓延するパリなので、活動制限がいろいろとあった。ストレスもマックスだった。
しかし、子育てをしながら、未来のことも考えながら、カメラは回った。
第一回目が放送されると大きな反響があったようで、二回目撮影打診がすぐに来た。
撮影が難しく、いろいろとかみ合わないこともあって、続けるべきか悩んだが、とりあえずもう一本撮ろうということになり、第二回目の撮影へ。
とくにシリーズでもなんでもないのに、その後、最終回まで七回も続いてしまうことに。
息子とぼくの生活に密着した番組であった。いったい、そんなもの誰が観るのだろうと懐疑しながら、撮影と放映が繰り返されていくことになる。

退屈日記「いよいよ明日、“パリごはん”SP放映!父ちゃんが語る見所&撮影秘話」

退屈日記「いよいよ明日、“パリごはん”SP放映!父ちゃんが語る見所&撮影秘話」

番組は、シングルファザーであるぼくが反抗期&思春期の息子のためにご飯を作り、コロナ禍の中、異国で頑張るという現実の物語をドキュメントしていくというものだった。
製作会社のプロデューサーLさんとは喧々諤々になる場面もあった。(Lさんは純粋に料理の番組にしたかったのだ。)しかし、音楽に理解ある義和ディレクターが途中から存在感を強め、ある種の撮影編集軌道が出来あがり、ここまでロングランしたのじゃないか、と分析している。
子育てに翻弄させられながら、ぼくは小さな会場で歌い続けた。
コロナ禍でライブが出来なくなり、世界中のアーティストが途方に暮れている時期、ぼくはセーヌ川のバトームッシュを借り切って、配信ライブを実現させることになる。
当初は、その部分の使用を製作会社側が考えておらず、音楽が重要なのだと説得するのに、実に、苦労をした。
しかし、船上で歌った「バラ色の人生」がLさんの心を動かしたようで、完成間際に、船の上の映像が使われることになった。
いろいろと説得しないとならないのは、ぼくに編集権が一切ないので、撮影はやったが、完成したものは、放映されるまで見せてもらえなかった。

退屈日記「いよいよ明日、“パリごはん”SP放映!父ちゃんが語る見所&撮影秘話」



3回目、4回目、5回目、と必ず、音楽のシーンをおりこむように、ぼくの説得が続いた。番組の最後に、何か歌うことが挟まれていくようになった。
義和ディレクターがECHOESのファンだったことで、内部からの応援者の出現が大きな助けになった。
彼がいなければ、ぜんぜん違った番組になっていただろうし、そもそもここまで続かなかっただろう。彼の功績は大きい。
そして、この番組が続く中で、念願のオランピア劇場公演の審査を通過したのだった。
歴史的大劇場なので、フランス人でさえも出演は難しい。
しかし、ぼくは夢を諦めたくなかった。
ということで、フランスでもっとも権威と歴史ある音楽ホール「オランピア劇場」ライブの実現へと向かっていくことになった。
今回の見所の一つであろう。
しかし、総合的な見所は、美味しいものを食べながらの丁寧な日常、そして、夢は諦めなくてもいいのだ、ということに尽きる。

退屈日記「いよいよ明日、“パリごはん”SP放映!父ちゃんが語る見所&撮影秘話」



退屈日記「いよいよ明日、“パリごはん”SP放映!父ちゃんが語る見所&撮影秘話」

かくして、ほぼほぼ自撮り番組だったこの「ボンジュール、辻仁成のパリごはん」にはじめて大勢のカメラマンたちが加わることになり、90分のSP版の撮影がスタートしたのであった。
番組の後半、それまでは一曲、ぼくが歌ってきたのだけれど、今回は30分も、オランピアのライブ映像が流れることになった。
記した通り、計画して、こうなったものではない。
試行錯誤、様々なぶつかり合いや、話し合い、意見交換が繰り返されて、実現した、まさに、ドキュメンタリーの醍醐味であった。
フランスでは無名な父ちゃんが、オランピア劇場を成功させるための、信じがたいもう一つのドラマをカメラが捉えていくことになった。
かくして、オランピア劇場ライブは成功し、気が付けば、息子は志望校に合格、大学生になっていた。
その間を、ほぼほぼ自撮りで撮りきった父ちゃん、しかし、背後で見守ってくれたNHKのSプロデューサー、義和の嫁さんの恵子プロデューサー、ぼくとは喧々諤々だったが、今となれば、この芯の強いLプロデューサーがいなければ完成しなかった番組なのであった。
「終わりよければすべて由し」ということわざ通りになった。
Lさんが毎回、ぼくに送ってくれた日本の食材が、辻父子の生活の場に「美味しい光」を届けてくれたことも記さないとならない。
かくして、「ボンジュール、辻仁成のパリごはんSP」最終回が、明日、放送されるのである。皆さんが、あたたかい気持ちに包まれることを願うばかりだ。
ありがとうございました!
熱血~。

退屈日記「いよいよ明日、“パリごはん”SP放映!父ちゃんが語る見所&撮影秘話」

※ オランピア劇場ライブ、大成功でした!!!



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
その番組のHPがこちらになります。チェックして、ぜひ、ご覧くださいね。録画も忘れないでね。えへへ。
NHK/BS「ボンジュール、辻仁成のパリごはん」
いま、毎日、放送中だよ!!!!!!
新作は16日!!!
今後の全ての放送スケジュールがアップになりました。
https://www.nhk.jp/p/ts/6XW8NZ748V/schedule/

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