JINSEI STORIES
滞仏日記「カルバドスの蒸留所で、深夜までバーベキュー大会。明日から禁酒します」 Posted on 2023/09/14 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、シェフ友のチャールズがどでかいヴァンでぼくと三四郎を迎えに来た。カルバドスの蒸留所の見学に行くのだ。
カルバドスとはノルマンディ地方で造られる蒸留酒のこと。
リンゴを絞った果汁を発酵させてまずシードルを作り、これを蒸留してから樽詰めにし、さらにじっくりと熟成させたものをカルバドスという。
度数、40度の強い、ま、一種のブランデーなのであーる。
ノルマンディで随一の造り手、カミュ兄弟の蒸留所に連れて行かれた。
そこには、生まれたばかりのテリア、ティーグルちゃん(6か月)がいて、この子がかなりやんちゃで、ずっと三四郎を追いかけまわすのだった。
三四郎はめんどうくさがって相手にしないのだけど、ティーグルが執拗に吠えて、三四郎にアタックしてくるので、仕方なく逃げ回っていた。
三四郎にとっては、手ごわい相手となった。
45ヘクタールのリンゴ畑の中を二匹は深夜まで走り回ったのだから・・・。あはは。
さて、今日はチャールズがバーベキューをやるというので、カルバドスもさることながらチャールズが料理するノルマンディ風バーベキューも楽しみでしょうがなかった。
美味しいカルバドス、そして、最高のバーベキュー。うひゃ、たまらんね。
禁酒解禁してよかった。
しかし、これを最後に、明後日から、ロンドン公演にむけて、本格的な禁酒に入ることをここに宣言したい。☜・・・。
リンゴで造られた様々なお酒を味わうことになった。
17度のポモー、3度のシードル、そして、40度のカルバドス。
カルバドスも、6年もの、12年もの、18年ものと様々な年代のがあって、どれも美味しかった。
カルバドスの蒸留所を一通り見学させて貰ってから、バーベキューとあいなった。
バーベキュー台が二つ用意され(一つが野菜用、もう一つがお肉用)、チャールズがお店から持ってきた野菜とお肉をカットしはじめた。
おっと、その前に、チャールズ自慢のセレクト・ソーセージがずらりと並んだ。
これがたまらなかった。
牛の肉で出来たスペインのソーセージ、それから牛肉で出来たイタリアのパストラミ、それから、コルシカの生ハムなどなど。
いやぁ、経験豊かな父ちゃんでも滅多に口にできないものばかりであった。
※ 手前の腸詰めが、牛肉のソーセージ!
※ とにかく、でかい!!!なのに、品がある兄弟でした。
※ これが一時代前の手動のリンゴ圧搾機。最新のは全自動なのだとか・・・。
アペロタイムが終わると、バーベキューとなった。
黄色いズッキーニは二つにカットされ、ナイフで格子状に細かい線が入った。
トマトはざっくりとカットされた。
マリネした和牛が3キロ! ひゃあ、じゅる~。
凄かったのは、蒸留所の窯の中で真っ赤に熱せられた炭をカミュ兄弟がでっかいシャベルでバーベキュー台に運ぶのだが、その光景があまりに豪快で、圧倒されてしまった。
チャールズも大きいが、カミュ兄弟は2メートル近くある巨人なのである。
このカルバドス蒸留所はもともと貴族のお屋敷だった。
革命の時に貴族が逃げ出し、その近くで農家をやっていたカミュ一族がそこを占拠。
その後、カルバドスの蒸留所にしたのだとか・・・。
ともかく、長いフランスの歴史を体感させられる蒸留所の建物なのである。
※ ひゃあ、でた。和牛のハラミ肉!!!
※ やばかった。美味すぎて!
※ 理屈抜き。
陽が沈み、暗くなるとバーベキューの炎が闇の中で赤々と燃え上がった。革命の炎のごとき、赤さである。
ともかく、ダイナミックな料理会となった。
肉はレアよりももっと生々しかった。(これをブルーという)
マリネされているので、そのままでも美味しいがフラードセルをかけて、ぼくはかぶりついた。おお、まいうー!
バーベキューとカルバドス、とにかく、ノルマンディでしか味わうことが出来ない絶品な組み合わせでもあった。
父ちゃんは何もできないから、ギターを持ち出し、この夜い相応しい、荒城の月、を歌った。
大騒ぎしていた一同だが、荒城の月をぼくが歌い始めると、みんなしーんとなり、聞き入ってくれた。
やはり、滝廉太郎のメロディは世界に通じる何かがある。
歌い終わると、拍手! ブラボーと喝采を浴びた日本の父ちゃん!!!
ロンドン公演でもこの曲が注目されそうだね。
えへへ。
宿泊施設で仮眠をし、朝、チャールズに自宅に送り届けてもらった。三四郎は、深夜までティーグルちゃんに追いかけられて、へとへと。
バタンキュー。
ま、こんな日があってもいいね。
※ 三四郎はくたくたになり、ぼくじゃなく、チャールズの横で、ねんね・・・。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ぼくは6年ものと18年もののカルバドスを買いました。ロンドン公演が成功したら、自分へのご褒美として、飲みますね。熱血の証として・・・。あはは。
さて、ついに、ロンドン公演の曲順、セトリが出来ました。あとは、これをもとに練習をしていくだけです。いろいろと大変な2023年でしたが、最高のライブにして、締めくくりたいと思います。
さーて、父ちゃんからの、お知らせだよー!!!
NHK/BS「ボンジュール、辻仁成のパリごはん」
いま、毎日、放送中だよ!!!!!!
新作は16日!!!
今後の全ての放送スケジュールがアップになりました。
https://www.nhk.jp/p/ts/6XW8NZ748V/schedule/