JINSEI STORIES

滞日日記「何でお前ここにおんねん!?パリの吞もちゃんこと野本氏が東京に出現、爆笑」 Posted on 2023/08/27   

某月某日、「なに、東京に、おるとか?」
「あ、あ、うん、ええと、ほら、あの、高知の炭、買いに。まいど」
「へー、じゃあ、飯でも食うか?」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ええね」
相変わらず、本題より、会話の助走が長い、吞もちゃんなのであった。
知り合いの御巣シェフの店を予約し、吞もちゃんはシャンパン飲み放題コース、ぼくは普通のコース、えへへ、・・・シャンパンの飲み放題って、すごいよね。
野本はシャンパン、普通で2,3本、飲む大酒飲みなのでお店、大赤字かも。すまん。
でも、コースだからね、しょうがない。
「あ、あ、あー、ひとなり、ずっと会ってなかったね~」
恋人のようなこと言い出すの、やめてくれますか、・・・。
「日本各地、ツアー中だから。で、パリの店、どう?」
「あ、ほら、あの、ひとなり、日記によく俺のこと書いてくれるから、いっぱい来る。あっちこっちから、野本さんですかって、いや、なんか、ほら、照れる」
「よかったったい」
「でも、ま、ま、まぁ、うぬぼれたらいかんからな、地道にやってる。で、美味しい炭火焼き出したいから、日本の炭を買いに。まいど」
「えらいな」
「ま、ま、おれ、仕事好きやから」
ということで、ほぼほぼ内容のない会話を、3時間もやった、父ちゃんと吞もちゃんであった~。

滞日日記「何でお前ここにおんねん!?パリの吞もちゃんこと野本氏が東京に出現、爆笑」

※ 若い店員のお姉さんに、いきなり、名刺を差しだし、その子もびっくりしていた・・・。その後、俺に、ひとなりにも渡しとこうかな、と、20枚くらい、いらんわ!!!! こんなパリの店のカード、20枚、どうすっとか。



でも、不思議なことに意味がないのに、会話って、終わらないのだ。
ためになるわけでも、勉強になるわけでもない無味乾燥な会話だったが、普段、話し相手がほとんどいない父ちゃんなので、中身がなくても、数少ない友だちとパリじゃなく、東京でこうやって会って話が出来るということが、そもそも、嬉しい。
それが友だちなのだ。
離婚時に、袋小路に追い詰められ、息子をシングルとして育てないとならなくなった時、それまで友だちと思っていた皆さまが、「辻は悪いやつだ」みたいに言い出した。
ま、ちょっと、ショックだったかな。
で、慣れない子育てを必死に頑張っていた時、実は、それまでそんなにべったり仲良くしていたわけでもなかった野本が、大丈夫か、と言ってきた。
で、お茶とかしはじめた。
誰も話し相手がいなかったので、シングルだし、話の中身はなかったが、救われた。
悪口とか誹謗中傷とか、ま、知りもしないで、よー言うな、という人間ばっかりだった。それをまた伝書鳩のように、なになにさんが、こんなこと言ってますぜ、と言いつけに来る人までいて、パリ日本村、めんどくせー、と思って、人と付き合わなくなった。
十年経ち、パリの日本人社会もいれかわった。
その間、野本とは、時々会って、お茶をしていた。
「ひとなり、飲もうか」
こう言ってくれるの、嬉しいよね。
そして、オランピア劇場ライブが決まった時、スポンサーが必要だった。彼に相談をしたら、やる、と言ってくれた。野本が大口出資してくれているのである。
「応援したい」
野本が音頭をとって、一風堂欧州さんとかギャラリーKさんとか、巻き込んでくれた・・・。
で、ふたを開けたら、ご存じのように、大成功。

滞日日記「何でお前ここにおんねん!?パリの吞もちゃんこと野本氏が東京に出現、爆笑」

滞日日記「何でお前ここにおんねん!?パリの吞もちゃんこと野本氏が東京に出現、爆笑」



「あのさ、こういう機会だから、ちょっと訊いてもええか?」
「あ、あー、お、ええよ」
「離婚の後な、なんで、君は、ぼくとお茶してくれたん?」
「え、あ、ええと、ああああ、なんでって、そうやね、やっぱ、ひとなり、頑張ってるし、おれは、見てた」
「・・・・」
「あと、俺な、人のうわさとか気にしないねん。関係ないやん。俺とその人の関係やろ? だから、誰かが何か言っても、俺がこいつええな、と思ったら、それだけやんか」
「・・・・」
「だから、俺な、敵おらんねん」
「お前さ」
「おー」
「なんで、こういう話の時だけ、つっかからないで、ハキハキ言えると?」
「え、あー、ええと、あの、ほら、ええと、なんでって、それ、トラクター」
「キャラクターやろ?」
「あはは、まいど」

滞日日記「何でお前ここにおんねん!?パリの吞もちゃんこと野本氏が東京に出現、爆笑」



昔を振り返りたくない父ちゃんだし、父ちゃんも誰かの悪口はいいたくないが、辛い時に手を差し伸べてくれる人への感謝だけは絶対に、絶対に、忘れたらいけん。
人間は成功し、金や権力があるな、と思う人のところに集まるが、その人が傾いている時には、面白いことに近づいて来ない。
でも、今思えば、背中を向ける人たちの中で、2,3人はちゃんと見てくれている人がいた。PTAの通訳をやってくれた人、病気になった時、買い物に行ってくれた人、引っ越しの手伝いをしてくれた人、いい人、いたいた・・・。
父ちゃんもだから、周りを、ちゃんと見ている。
「ひとなり、調子のいい時に、調子のいいこと言ってくる人間は信用ならん」
「・・・・」
「調子の悪そうな時に、支え合う時に、真の友達になる」
「あのさ、お前さ、かっこいいこと言いすぎやで」
「あはは、まいど」
でも、それは真実なのであった。10年前の話を振り返りながら、ぼくは心で泣きながら、笑っていた。友だちはええな~。
今、自分はやっとマイペースを取り戻し、関係ない、ゆとりのある世界で、頑張っている。
10年、頑張ったから、今の自分がある、というこったい。
熱血。

滞日日記「何でお前ここにおんねん!?パリの吞もちゃんこと野本氏が東京に出現、爆笑」

※ 父ちゃんは、いつまでも、パリの田舎者の友だちが大都会でちゃんとタクシーを拾えるか、遠くから見ていたのだった。あはは。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
東京だからこそ、こういう話が出来たんだろうなぁ、と思います。そうですよ、パリは生活地だから、生々し過ぎて。でも、オランピア劇場にたくさんの日本の方も足を運んでくれました。どうやら、父ちゃんへの誤解は少し、減ったのかもしれませんね。☜どんな誤解???笑。ま、野本に感謝です。野本を見ならい、友だちが苦しそうな時に、支えられる人間でいたい、と思いました。えへへ。

父ちゃんが朗読する自著、「ミラクル」
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8月29日、名古屋ダイヤモンドホールでのライブ(完売)
8月30日、東京EXシアターでのライブ(完売)
9月3日、京都劇場でライブ(完売)
9月1日、辻村(tsujiville)開村
9月16日、NHKBS、新作「パリごはんSP」その一週間前から連日過去作一挙再放送。
2024年2月末、伊勢丹アートギャラリーにて絵画初個展「les invisible」開催。

●「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん」
【BSP】9月11日(月)午前6:15~7:14
※初回放送 2021年6月18日

●「ボンジュール!辻仁成の秋のパリごはん」
【BSP】9月12日(火)午前6:15~7:14
※初回放送 2021年10月30日

●「ボンジュール!辻仁成の冬のパリごはん」
【BSP】9月13日(水)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年2月23日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022春」
【BSP】9月14日(木)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年6月17日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022夏」
【BSP】9月15日(金)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年9月23日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022秋冬」
【BSP】9月16日(土)午後1:00~1:59
※初回放送 2023年2月17日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023春」
【BSP/BS4K】 「パリごはん2023SP」(9/16土曜20:00~21:29)
今回が、初回放送になる、新作です!!!!!

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