JINSEI STORIES
滞日日記「お盆だからだ、ご先祖様ありがとう。映画“中洲のこども”が8週目に突入決定!」 Posted on 2023/08/16 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、今日は日本公演に向けてリハーサルがあったのだが、猛暑だからかくたくたになって、宿に戻ると、福岡の映画プロデューサー相川さんから、映画「中洲のこども」がたった今、8週目ロングラン延長が決定~、という知らせが届いたのであった。
え、え、え・・・
いや、これは、マジで、すごくないか?
8週目ということは、公開初日から、毎日、二か月間も休まず公開され続けているということで、福岡だけの地元密着型の興行とはいえ、さすがに驚いた。
実は、今週から一日一度の公開になっていたので、さすがに8週は無理だろうなぁ、と思っていたのだが・・・。
皆さんから、全国公開を、という声が相川さんのところにも届いている、ということで、あと少し、ロングランが続けば、あるいは、東京とか、大阪とか、名古屋などの劇場支配人が、腰をあげてくださるかもしれない、と思う父ちゃんなのであーる。
山笠が終わったので一緒に終わると思いきや、逆に、福岡の皆さんは、この機会に劇場で観なきゃ、と思ってくださっているのかもしれない。
口コミの力なんだろうなぁ、だって、宣伝予算なんかゼロだし・・・。
あはは。
やっぱり、映画の神様はいるんですね。
ということで、バンドの練習は素晴らしいメンバーとスタッフに囲まれて、大変ではあったけれど、たくさんやさしさを貰った父ちゃんなのだった。
人のやさしさが心に染みる年齢なんだよねー。
一番の敵は、この暑い日本の夏と冷房なのである。体力が奪われる・・・。
リハーサルの休憩時間に、父ちゃんは、スタジオの前の八百屋さんに行った。東京って、路地にいろいろな文化があるんだよねー。素敵。
でも、なんで生姜???
体力をつけるために、生姜をすって、食べないとやばい、と思ったからであーる。
「暑いね」
この辺では名物の八百屋さん、自宅の駐車場に八百屋を開店しているのだ。
「今は、お盆で市場が休みだけど、これとか、美味しいよ」
いろいろとすすめ上手な、ぜったいこの街では人気者にまちがいないおじさんなのだ。
なんとなく、ぼくの父に、似ていた。
「生姜あります?」
「あるよ。ほれ、110円」
安い! ください。
この暑い夏を乗り切って、みんなを幸せにしたいのだ、と心の中で思った父ちゃんだった。よーし、やったるぞ!
ぼくは、人生、いつもいつもいいことばかりではない、ということを知っている。
ほんとうに大変な時にこそ、黙々とやることが大事なんだと、思っている。
そして、一つ一つ成果を出していくしかないのだ、と言い聞かせている。
今、ぼくは東京にいて、ここでの仕事をやりきるために、全力でがんばっている。
カッコつけているから皆さん、気づかないとは思うが、実は、ギリギリなのだ。
いろんなところにがたが出ていて・・・。あはは。
パリでは三四郎が、ジュリアの家から次のマント・ふみこさんの家へと新たな旅に突入。
マントさんはご年配の方なので、三四郎はここでは静かに暮らすことになる。
息子もパリに戻ったが、なぜか、Wi-Fiのケーブルを返し忘れて、Wi-Fiの会社から怒られた。
こういうこと一つ一つちゃんとやらないとダメだぞ、とメールで叱っといた。
すぐに返却するね、と返事が、やれやれ。
あいつ、どんな夏だったのだろう???
結局、東京では一度も会わなかった。
父ちゃんも、三四郎も、十斗も、それぞれの夏を力走している。
お盆なのだ、日本は、父さんに似た八百屋の人に会ったので、手を合わせておいた。
ご先祖さま、みんな元気です。
ベストを尽くします。
それでも人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
書けないこともいろいろとあるんですが、いいことばかりじゃありません。でも、何かあるのが人生です。今日はお盆でしたから、ご先祖の皆さまへ、手を合わせましょう。おじいちゃん、おばあちゃん、とうさん、ひとなり、がんばっていますよ。
あ、お盆だから、福岡で8週目が決まったんか!!!! おお、鳥肌!!!
皆さん、ありがとう。