PANORAMA STORIES
q.b.レシピのないレシピ帳~カンパチのパスタ~ Posted on 2023/08/10 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア
砂浜にカラフルなビーチパラソルが溢れる頃、レストランに仕入れされる魚介類も種類が一段と豊富になります。
日本でもおなじみの鯛類やスズキ,ホウボウやカサゴにクエ、イカやエビにフライ用の小魚たち、そしてムール貝、アサリ、ウニを始めとする貝類。
大型の魚について言えば、数種類の鮪、かんぱち、メカジキなどが水揚げされます。
そのうち、レストランでは以前、グリル用のメカジキ位しか扱っていませんでした。
それが、魚の生食人気が高まるにつれて、10数年程前からは鮪を、そしてここ数年はカンパチを仕入れることが増えました。
イタリアにも魚介類を生で食べる文化はありましたが、今ほどメジャーではなかったように思います。
僕が働き始めた頃は、エビや数種類の貝類を生で出すほどでしたが、お客さんのニーズに合わせてメニューも徐々に増えていきました。
そして最近人気なのが、この大型のカンパチです。
レストランの朝というのは仕込みやら雑用でただでさえ忙しいのですが、そこに大型の魚がドーンと来ると更にてんてこ舞いに。
事前に分かっている時はまだ良いものの、不意打ちで漁師さんが数匹持ち込んできたり、一番忙しい土曜の夜に大型冷蔵庫を開けると、床に袋に包まれた鮪が横たわっていて「マンマ・ミーア!!(なんてこった!!)」ということも。
ともあれ、豊かな海の恵みに感謝しつつ、大急ぎで捌くわけです。
捌いた後は、一番良い部分はタルタルやカルパッチョ用に、身の厚い所はタタキ風ステーキ用にと、切り分けていきます。
カンパチも20㎏近い大きさになってくると、血合いの多い部分やスジっぽい所がかなり出てくるのですが、そこは角切りにしてパスタのソースにすると美味しくいただくことができます。
子持ちのカンパチの時もあるので、その時は卵を少々加えると、更にとろみのあるソースになります。
そしてカマやお頭はオーブンで塩焼きにして醬油を垂らすとご馳走に。マグロも同じような使い方をしています。
さて、今回はその中からパスタの作り方をご紹介いたしましょう。
カンパチやブリ、まぐろの切り落としなどが売られていたら、ぜひ手に取って挑戦してみて下さいね。
また、お刺身が少し余ってしまった、なんていう時にも良いかもしれません。
では早速、作り方を見ていきましょう。
※カンパチのパスタ
材料(一人分)
○カンパチ(またはブリ、マグロなどの切り落としや余った部分)80g程
○ミニトマト 6~7個 ○黒オリーブ 5~6個 ○ケイパーの塩漬け 一つまみ
○しし唐 5~6個 ○玉ねぎ ごく少量 ○パスタ 90g
○オリーブオイル q.b.(適量) ○オレガノ、パセリ、バジルなどお好みで q.b.
※パッケリというパスタがおすすめですが、日本では手に入りにくいかもしれません。リングイネやスパゲッティなどのお好みのパスタで大丈夫です
作り方
①フライパンにオイルを回し入れて熱し、玉ねぎのみじん切りを加えます。
②玉ねぎが色づいてきたら、角切りにした魚の身を加え、中火で表面が色づくまでさっと炒めます。
パスタを茹で始めます。
③トマト、種を取ったオリーブ、ケイパーを加えて煮ます。
④トマトが煮崩れてきたら、しし唐を入れ、パスタのゆで汁を加えてとろみをつけます。
魚の身を軽くつぶしながら、塩味を調整して煮込みます。
盛り付け用にソースの一部を取り分けておきます。
ゆで汁もコップ一杯ほど取っておきます。
アルデンテに茹で上げたパスタを入れ、お好みでオレガノ、バジル、パセリのいずれかを加えてよく混ぜます。
とろみや水分が足りなかったら、取っておいたゆで汁を加えて調整します。
⑤お皿に盛り付け、取り分けておいたソースをフライパンに戻し、予熱でさっと温めて上にかけたら出来上がりです!
体力を消耗する暑い日が続きますが、栄養のあるものを食べて乗り越えましょうね。
それではまた次回、普段着の食卓でお会いしましょう。
※タイトルの.q.b.とは適量を意味するイタリア語quanto basta(クアント バスタ)の略です。
細かいことは気にせず臨機応変に、あなた次第のレシピにして頂けたら、という思いを込めて。
Posted by 八重樫 圭輔
八重樫 圭輔
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シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。