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”mooi”のある暮らし Posted on 2017/02/17 まきの ななこ ライフスタイルキュレーター アムステルダム

”mooi”のある暮らし

様々な国で生活をすると、その分だけ色々な言語に出会います。すべての言葉を流暢に話せるようにはならないけれど、出来る限り現地の言葉で繋がりたい。ひと時の訪問者ではなく、現地の人として暮らしたいから。
新天地に舞い降りるたびに、私はそう思います。

言葉には当然その国の歴史や文化といったお国柄が現れます。そして必ずどの国の言葉にも何故だか心に響く、心地よいリズムを奏でる単語やフレーズというものがあるものです。

予期もせずオランダに住むことになり、はじめて耳にしたオランダ語。その第一印象は正直、”いかつい”、”噛みつきそうな”、といったあまり良いものではありませんでしたが、その中でひとつ”mooi”(モーイ)という言葉は、耳にする度になんだかとてもハッピーになる単語でした。

”mooi”のある暮らし

”mooi”のある暮らし

オランダ人が事あるごとに口にするこの”mooi”という言葉、その意味はずばり”美しい”ということ。日本語でいう”かわいい”に近いという人もあるけれど、私はもう少し大人びた成熟したイメージに使われるような気がします。そしてそこには、日本人とオランダ人の”美”に対する考え方の違いもあるようです。

日本人にくらべるとオランダ人はあまり洋服にはお金をかけません。流行もあまり気にしません。一枚買ったら一枚手放す。気候や自転車に乗る生活によることもあるかもしれないれど、どちらかといえば実用性重視。

でもそれはお洒落に無頓着ということとは違うのです。オランダ人、特にミドルエイジ以降の人たちはとっても個性的であり、確固たる自分のスタイルを築き上げています。



”mooi”のある暮らし

”mooi”のある暮らし

また洋服にかけるお金は少ないけれど、インテリアにかけるお金はなんとあのリフォーム大好きなイギリス人の2倍(!)とも言われています。

そういわれてみれば、アムステルダムの住宅はそんなに広いわけではないけれど、どの家も窓際やテーブルには季節折々の花が飾られ、リビングやベッドルームには大切な写真とともに大小問わず、各家庭の好みがわかるような絵画が所狭しと並んでいることが多いような気がします。

そんな自分なりの”美”を毎日の生活に取り入れること。それこそがオランダ人の意味する”mooi”なのではないでしょうか。

”mooi”のある暮らし

そういえば日本でも人気があり、オランダを代表するデザイナーのひとりであるマルセル・ワンダーズのショールーム名も”moooi”。何かのインタビューでなぜ”o”がひとつ多いのかと聞かれた彼は、毎日を彩る美しい”mooi”は多ければ多いほど楽しいでしょ。みたいなことを答えていた記憶があります。”mooooooi”(モーーーーーーイ)。たしかに楽しそうですね。

色々な国で、様々な文化やバックグラウンドを持った人々と交流し、この歳になって徐々に”美しさ”とは、心の中に、そしてどんなものにも宿るものだなぁと実感するようになりました。これからまだまだどんな国でどのように生きるか未知数ですが、いつでも心の中の”mooi”を忘れずに、一日一日を大切にハッピーに生きて行きたいな、と思います。そして日本が、益々たくさんの”mooi”であふれますように。

”mooi”のある暮らし

© Nicole Marnati



Posted by まきの ななこ

まきの ななこ

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Nanako Makino
ライフスタイルキュレーター。シカゴ、東京、モスクワ、ロンドン、、、一期一会に生かされて。新しいホテルやブランドなどの立ち上げに携わりながら様々な都市を巡り、2014年よりアムステルダム在住。オランダ語見習い中。放浪癖あり。