JINSEI STORIES
滞日日記「日本が戦争被爆国になってから、78年という歳月が流れたが、世界は今」 Posted on 2023/08/07 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、日本に原爆が投下されてから、78年もの歳月が流れた。
しかし、今日、世界はいつ核戦争が起きてもおかしくない状態へと加速しつつある。
78年という歳月が意味するものを、この星で生きている以上、人類は真剣に考える必要がある。
世界最大の核兵器保有国であるロシアと核兵器を返還したウクライナが血みどろの戦争を行っているが、予期せず、ロシアは当初の予想を裏切り、苦戦を強いられている。
プリゴジンの乱もあったが、現在のプーチン大統領の精神状態が心配だ。ロシアから届く各方面のニュースからその不安定感がうかがえる。
ウクライナには奪われた国土を取り戻してほしい、と父ちゃんは願っているが、プーチン氏を追いこんだら、核兵器のボタンを押しかねないという懸念も消え去ることはない。
そんなことはないでしょう、と世界中の人たちが思っている。
しかし、ロシアがウクライナに攻め入ることはないでしょう、とみんなが言っていたのに、ロシアはウクライナ侵攻をやった。
プーチン大統領が核兵器のボタンを押さないという保証はないし、ロシアが苦戦しているこの状況下で、押しかねないもっとも危険な状態になりつつあるのは事実だ。
たぶん、それを一番恐れているのは、マクロン大統領であろう。
彼は何度もプーチン氏と対話を続けてきたが、人が違ったようだ、と言い出した。
もし、ロシア国内がいっそう不安定化(現在、徴兵事務所の連続放火が続いている)し、プーチン氏が平常心を失った場合、その危険性はさらに強まることになるだろう、とぼくは悪い方へ想像が働いてしょうがない。
もしも、核ミサイルがロシアから欧州へ向かって飛んだ場合、迎撃できず、大都市が消滅したとすると、その直後に、(迎撃出来たとしても)NATO軍からロシアにミサイルが打ち込まれるだろう。
これは24時間から48時間以内に、数発の核ミサイルがロシアと欧州、もしくはアメリカへと行き来し、アメリカが何を判断するかだけれど、バイデン大統領はやられる前にロシアを壊滅化させる軍事行動に出る可能性が高く、そうなると、北朝鮮や中国に大きな動揺が走り、北朝鮮から韓国や日本にミサイルが飛ぶ可能性もあり、その時点で、世界の何割かが消滅、残っても、核の灰が降り積もって人類は終わり、ということになる。
つまり、核のボタンを一度でも押すことは、人類の終わりを意味している、という結論にたどり着くのである。
それは、まともな思考回路を持っている国のトップは理解している。
誰も核兵器のボタンは押さない、とみんな考えているわけだが、このところのプーチン大統領の精神状態には、これまでにない、不安定なものが見え隠れして、いっそう不気味になっている。
ロシアとウクライナの戦争を見ている限り、何が起こるのか、予断を許さない状況になっているのは間違いない。
核投下から78年目の8月なのだった。
けれども、世界は見えているものにばかり振り回され、見えてない世界を見ようとしておらず、見ていても、判断する人間たちの基準が非常にあいまいで、ぼくは不安でしょうがない。
もちろん、現実から逃避することも出来るのだけれど、それしかない、と言われれば反論はできないが、78年目の今を忘れて浮かれているようでは、残念なことだけれど、この世界に明るい未来は待ち構えていないだろう。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
日本に来て、温暖化どころか灼熱化していましたが、これは日本だけの問題ではなく、世界各地でおこっている現象なのです。先月、行ったシチリアは50度近いというし、(パリは晩秋のような寒さだと連絡がありましたが)中東やパキスタンなどは、もはや、人間が生きられる限度を超えて酷暑のようです。不安をあおりたくはないですが、こういう問題もみんなで考えていく必要がありますね。
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