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滞日日記「ついに、東京拠点計画キッチン&ミュージアムの工事現場に参上父ちゃん!」 Posted on 2023/08/03 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日は東京拠点計画の工事現場視察に出かけてきたのであーる。
おー、いよいよか、凄いね。実現にむかっておる。
設計技師の須藤さん、上司の佐藤さん、ほか、工事担当者さんなど数名が立ち会って、父ちゃんカラーのキッチン&ミュージアムの本格工事が始まる前の、確認&説明会、が行われたのであーる。いやぁ、楽しかった。
50平米ほどの部屋はすでに工事がはじまっており、壁や天井や床がむき出しになっていた。部屋の中央に配置されるコの字型のカウンターキッチンのだいたいのサイズ感がわかるよう、テープでマーキングされていたのである。かなりの手作業、う、で、でかい!!!
設計士須藤さんの説明を受けた。壁のタイルの色、天井から吊るされる照明、冷蔵庫の位置、お客さんが座る椅子の高さ、などなど。
イイ感じであった。

滞日日記「ついに、東京拠点計画キッチン&ミュージアムの工事現場に参上父ちゃん!」



滞日日記「ついに、東京拠点計画キッチン&ミュージアムの工事現場に参上父ちゃん!」

しかし、50平米なので、キッチンだけで、すでにいっぱいな感じは否めない。
なので、ソファとか、テーブルは必要ないかな、と思った父ちゃん。
ぼくとしては、キッチン&ミュージアムなので、ミュージアムの部分が大事なんだけれど、と意見を・・・。
「ゲストには、料理を食べる前に、ぼくの作った絵画とか写真とか音楽とか映画に触れてもらいたいんです。ぼくは料理人じゃないし、人生苦労人なので、むしろその空間で生きていることが思わず楽しくなるようなわくわくする遊びの空間にしたいんです。で、いろんな意味でお腹いっぱいになって幸せをお持ち帰りしてもらいたいんですよ。ドアを入ったところから作品の展示が始まって、壁いっぱいの写真とか詩などを眺めてもらい、ぼくが歩んできた創作世界へと、ほら、いざないたいわけです」
先日、小淵沢の倉庫から持ち帰った昔の資料の中から、ECHOES時代のギターや、小説の生原稿、特装本(海峡の光を芸術家の望月画伯が布張りにしたもの)古い写真、はじめての監督作品、映画「千年旅人」の絵コンテ画集などなど、段ボール3,4箱ほどの、個人的なお宝を彼らに見せたのだった。(季節ごとに展示物をかえていくという趣向・・・)
「ほー」
皆さん、笑顔になっていた。

滞日日記「ついに、東京拠点計画キッチン&ミュージアムの工事現場に参上父ちゃん!」



とくにECHOES時代初期にぼくが使っていたエピフォンのギターを見せると、古いキャデラックを見るような溜め息が一同から漏れたのだったったー。
「これ、めっちゃ凄いギターですね」
「えへへ」
父ちゃん、こういうの30本くらい持っていたんだ、と自慢したった。笑。
「いや、これ、見てください」
スケッチブックには、映画の絵コンテがびっしり描かれているのだった。
「わ、これは凄いですね」
「何冊もあるんです。全部の映画の全部のシーンを絵にしています」
「ほえー」
それから、小説の生原稿を見せたったのだったった~。
「こ、これ、手書きの生原稿ですか?」
「はい、初期は手書きでしたから」
「ほえーほえー」
建築家のおっさんたちが、興奮してくれたので、気をよくした父ちゃんであった。歩いてきたんだよね、ここまで、よく生きたねー・・・。
その足跡を、ショーケースに入れて、ご飯を食べる前に、みんなに鑑賞してもらいたいのであーる。ほえー。
シマちゃんに伊勢丹アートギャラリーでやる個展の中から一枚を購入してもらい、笑、・・・
「その絵を、ここの壁に展示したらいいと思うんです」
「ほえーほえーほえー」
ほーえー牧場の決闘のようになってしまった。

滞日日記「ついに、東京拠点計画キッチン&ミュージアムの工事現場に参上父ちゃん!」

※ 1985年あたりに、大活躍した、父ちゃんの宝物。

滞日日記「ついに、東京拠点計画キッチン&ミュージアムの工事現場に参上父ちゃん!」



ともかく、おっさんが興奮するキッチン&ミュージアムが出来そうな勢いが、皆さん、伝わったでしょーかどうべんとう・・・。☜ノってるねー。 
設計士の須藤さん(一級建築士なのだ)が頭を一回転させて、
「たしかに、じゃあ、ソファはやめて、ここに展示スペースを作りましょう。あの壁にギターを飾り、こっちの壁は画廊のような調光で、絵をいきいきと見せるようにします」
と言ってくれたのだった。
「ほえーほえーほえーほえー」
ということで、まさに、キッチン&ミュージアムのだいたいのカタチをぼくらは共有することができたのであーるぬーぼー。☜このダジャレ、前もやったね。
「これが、実現したら、かなりユニークですね」
「ほえーほえーほえーほえーほえー・・・・」
ふー、疲れた。
ということで、東京拠点計画、父ちゃんのキッチン&ミュージアムはなかなか素晴らしい感じに出来つつあるのだった。
ぼくがシェフをやらない時は、ぼくの友人のシェフたちが料理をすればいいし、ソムリエさんと父ちゃんのワイン試飲会&チーズの会とか、で、父ちゃんが作った作品が、その、おつまみになるのであった。
アートとフードの饗宴だぁ!
やっぱ、人生は一度しかないので、とことん楽しまないと損なのであーる。
さ、皆さん、ご一緒に、
「熱血~」

滞日日記「ついに、東京拠点計画キッチン&ミュージアムの工事現場に参上父ちゃん!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
すごい展開になってきました。初個展で発表する三十数作品のうち、シマちゃん、2点は買ってくださいね。あれとあれでいいので。笑。シマちゃんはすでに、それがほしい、と思っている一点があって、でも、それは二枚でワンセットだから、と説明をした父ちゃん。押し売り父ちゃんでした。ほえー。ま、人生の多くの時間をかけて、描き続けたきた数々の作品は、いわば、ぼくの分身なので、シマちゃん、ここはひとつ、清水の舞台から飛び降りる感覚で、キッチン&ミュージアムのために、え? あはは。冗談ですよ。
はい、そんな強欲な父ちゃんですが、13日に、今年最後のオンライン・小説教室を開催いたします。辻仁成らしい小説方法を伝授させてください。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックですね。はーい。
8月24日は、福岡国際会議場メインホールでライブが、そして、8月10日まで6週目に突入する監督作品「中洲のこども」も絶賛ロングラン中です。



自分流×帝京大学